「大人にはプライドがあるらしい」
「おはようございます王子。昨夜は何もなかったですか?この付近を、怪しい者が彷徨いてたという情報があったのですよ。」
俺は長ーく伸びをしながら、
なんだ、もうその話が出ているのかと思っていた。
「んー、特に何もなかったよ?昨日の夕食にタバスコが大量に入ってた以外は、平和、平和。」
「そうですか、それはよかったわ。」
ホッと息をつくランソワおばさん。俺のことを心配してくれてるらしい。嬉しい限りだ。
でも、夕食の事については忘れてません?
「それでは、朝食でも食べながら、今日の日程といきましょうか!」
今日もやる気満々な感じですね。もう、化物の俺ですら疲れ果ててるっていうのにな。
テンションが下がりつつも、どうにか美味しい朝食で補い、今日1日のことを思うのだった。
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窓から昼間の明るい日差しが差し込む部屋の中。
私は再び、暗殺者の親玉である人物を呼び出していた。
「どういうことだ?確実に終わらせるのではなかったのか。」
彼は不安の混じったような、困った声で私に告げた。
「はい。我らはそのつもりで、この組織のなかでも手練れの者に行かせたのです。しかし…。」
「建物を登るのに失敗したのか、転落死。こんなことがあるものなのだろうか?」
「いえ、例がありません。これは私の予想ですが…彼は、王子に殺されたのではないかと思われます。」
「そんなばかな!!」
私は思わず声をあげてしまった。
「どう言っても失敗は失敗です。責任を持って、必ずや王子を暗殺してみせます。」
暗殺者には、暗殺者としてのプライドがあるのだろう。彼はやる気に満ちていた。
「引き続き、頼む。」
私にも、私としてのプライドがあるのだから。
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はぁー、疲れた。
俺はランソワおばさんの厳しい指導の終わったあと、やっとのことで自室にたどり着いた。
お腹が空いていたが、そのまま寝る服装へと着替えてベッドへと潜り込んだ。
また、いつものように刺激溢れ過ぎる夕食を食べると思うと、疲れが倍に増えるからだ。
寝てしまえば、誰も夕食など持ってこないだろう。
そして、俺はそのまま眠りについた。
暗殺者第2号が来るまでは。