表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の王子、影の王子  作者: チェル
一章──奔走、影の王子編
13/79

「コビトはかえる」






じりじりと、俺との距離をつめてくる暗殺者。

さっきから、結構ドタバタしてるのに誰も起きてこないのは…王子(こいつ)が嫌われていて、この建物にあまり人が居ないからだろうな。


逆に今は、それがありがたい。


どれだけ暴れようが、この建物が吹っ飛びでもしない限り誰も来ないと言うことだからだ。

思う存分やらせてもらおうじゃないか。


俺は、場に合わない陽気な口調で話しかける。


「こんばんは。今日は月が綺麗だね。」


「…。」


もちろんの事、暗殺者は無言である。


「君は暗殺者よね?王子(ぼく)を殺しに来たんだ?」


「…。」


相変わらず、無言のまま少しずつ俺に近づいてくる。


「あれ、よく平気でいられるね?僕のこと、殺したはずなのに生きてて驚かないんだ?」


「!」


わずかに、隙ができた。


その隙を俺は見逃さない。


暗殺者に向かい右手を鎖へと変え、そのまま身動きが出来ぬように縛りつける。


「な、なんだこれは…!?」


暗殺者から、驚きの声があがった。顔を隠していたが、唯一見えていた目は見開かれていた。


「お前…何者だ!?」


「何者も何も、()は人間じゃないってことくらい分かるだろ?」

そう言いながら、ズリズリと暗殺者を引きずっていく。



ベランダに向かって。



「何をする気だ!は、はなせ!」


必死にもがいている暗殺者を無視し、扉を開ける。


俺は何事もないような陽気な声で、暗殺者に話しかけた。


「いやぁ、今日はホントに月が綺麗だ。」


暗殺者はこれから自分の身に起きようとしている事を察して、カタカタと震えていた。


「よく、こんな高いところまで登ってこれたね。登るのが得意なら、降りるのも得意だよな?」


俺は口を三日月形につり上げて、ニヤリと笑った。



「土へお(かえ)り。(笑)」



鎖をブンッと振り上げて、空中で緩めた。


暗殺者は声にならない声を発して、そのまま下へと落ちていく。

その少し後に、遠く下の方から鈍い音が聞こえてきた。



雇人(こびと)は、土へ(かえ)った。



月の綺麗な、夜だった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ