「王と愉快ななかまたち」
どうも。
ここ最近、周りの人たちから地味な嫌がらせを受けているレグネス王子こと、『百変化』です。
ある時は夕食に毒を盛られたり…。
また、ある時は夕食に砂が入っていたり…。
さらには、今食べている夕食にはタバスコが大量に入っているという…。
辛い辛い辛いからい!
落ち着け、落ち着くんだ俺!
流石に味覚ばかりはコピー出来ないけど、耐えろ、耐えるんだ!
「ぐばっ、げぼぉぉっ!」
無理だった。
勢いあまって椅子から転げ落ち、俺は床に倒れ込む。
そして扉をノックする音。
またもや、タイミング悪きランソワおばさんが入ってくる。
「!王子、またですか!?しっかりしてください!」
あぁ、これ、何度目だっけ?
あまりの辛さに、俺はそのまま意識が吹っ飛んだ。
今度こそ、おばさんは俺をベッドまで運んでくれるだろうか、と思いながら。
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午後の日差しが窓からこぼれてくる中、私の部屋には来客が来ていた。いや、正確には来客ではなく、王子の暗殺を依頼した、暗殺者の親玉といった人物だ。
「ここに来てもらったのは他でもない。王子暗殺の件だ。」
あらかじめ、部屋の回りには誰も近づかぬようにと言ってある。
「その件ですが…。我々は確かに王子を殺し、身元が分からぬように顔を潰して、山の奥地に埋めました。」
部屋で私と向かい合って座っている、一見普通の貴族のような格好をしている男は言った。
「それなら、なぜレグネスは戻ってきたのだ!いくら噂で『悪魔の様だ』と言われようが、奴は人間の子だ。私の妻も魔法など怪しい事になど手を染めたことは無い。」
「…。本当に本物の王子なのかを確かめるために、昨日、我々は王子を埋めた山奥へと行き、掘り返してみたのですが。」
そこで、一度深呼吸をしてから、暗殺者は言葉を紡いだ。
「いくら掘り返しても死体が出てこないのです。戻ってきた王子は、間違いなく本物かと思われます。」
「本物だとしても、まだ救われたところはある。レグネスが記憶喪失だと言うことだ。あの様子だと、嘘をついている感じはないのだ。」
そうだ、何も覚えていないのなら、あの事を覚えていないかもしれない。
…いや、駄目だ。
「王子に再度、暗殺を依頼したい。必要な情報は私から提供しよう。」
「御意。」
彼は深々とお辞儀をし、計画を練るべく、私に様々な質問をしてきた。