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闇の王子、影の王子  作者: チェル
一章──奔走、影の王子編
10/79

「また一難」







──────────────





「がは…っ。」



俺は今、意識の朦朧とする中、床で転げ回っていた。



苦しい…。

まさか、料理に毒が…!?


最悪なことには、料理はすでに完食した後なのである。


全部食べちゃったよ、俺!!

半端なく毒を取り入れてしまったらしい。視界がぼやける。



くそっ、もはや

ここまでか…──────!


と、普通なら思うところなのだが、俺は違う。


だって俺、化物だから。


俺の中の毒は、時間はかかるけど消すことが出来る。

いや、正確には吸収すると言った方がいいのかもしれない。


王子の体を借りたときのように、体に取り込んでいる毒をコピーすればいいのだ。

その後、その毒に対して耐性がついているうえに、俺の力として使うことも可能になる。


しばらくすれば何ともない状態で起き上がれるのだが、タイミングが悪かった。


コンコン。


あぁー、やばいな。

ノックすると言うことは…。


「王子、失礼します。」


出たー!


タイミング悪いランソワおばさんだー!


床に倒れてる俺に気づき、急いで駆け寄ってくる。


「王子!?どうなさったのですか!しっかりしてください!」


俺を抱き上げて、ゆっさゆっさと揺らす。


心配する気持ちはありがたいけど、毒が回ってるひとを揺らすのはよろしくないよ、おばさん。

やば、気持ち悪くなってきた…。


「う…ぅっ…。」


かろうじて、声を出した俺。

同時に口の中からごぽり、と、

血を吐いた。


まぁいくら化物でも、このくらいはダメージを食らうのである。


「!まさか、毒に()られたのですか!?」


おいおい。

“殺られた ” って、まだ死んでないですけど。


「今すぐ医者を呼んできます。待っててください!」


そのまま、俺を床に放置して廊下を走っていくおばさん。


せめて、ベッドまで運んでほしかったよ。




──────────────




私は護衛団団長、グィルバー・デモンド。34歳。皆からは老け顔だと言われ、ここ五年くらい落ち込みぎみである。



何者かが王子の毒殺を謀ったと言う話が、城中に広まっていた。


王子は、犯人が分からないと言う。


早速、我ら護衛団が捜索に当たろうとしたのだが、王子直々にストップがかかった。


話を聞くと、

「別に死んだわけでもないし、もういいです。」

と言う。


なぜだろう。

記憶喪失になるまではあんなに酷い性格だったのに、人はここまで変わるものだろうか?


以前までだったら即首を跳ねるところだったが、今回は刑どころか捜索までもしなかった。


時代は流れていくものだな…。

しみじみと思う。


最近は考えることまで爺臭い、と我ながら思う今日この頃であった。





──────────────




今朝、息子の毒殺未遂の事件を聞いた。


「やるなら、今、か…。」


私は誰にも聞かれることのない呟きを、ポツリとこぼした。



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