ACT3
「十二時方向、新たに敵軍勢です!」
オペレータの声が響く。
「嫌だッ!!死にたくない!死にたくな......」と言い、仲間の通信が途切れる。恐らく死んだのだろう。
しかし誰が死んだか、なんて考える暇なんてない。
「クソッ!残弾が少ない!」
東京がまるで絵に描いた様な地獄絵図になっている。
あちこちで鮮血が撒き散らされ、大地が燃え盛るが如く紅く、紅く染まっている。
ディスペアとの戦闘が始まり、既に一~二時間。幾ら日頃から訓練しているからと言って所詮は訓練、実戦とは訳が違う。
だからと言って気を抜けば、速攻でディスペアに殺られる。
その恐怖心が限界を迎えつつある身体を動かす。
「教官!もう危険ですッ!撤退をさせて下さい!!」と言う生徒の要求を、
「もう少し粘れ!もうそろそろ応援が来る筈だッ!」と却下する。
俺たち生徒の乗るセイバーの残りはたったの五機。
教官は既に一機しか残っておらず、不利な状況なのは明らかだ。
「これでも食らいなさい!!」とカナタの乗る〈紅椿〉が背部に搭載されているミサイルがディスペアに向かって飛んで行き、命中した奴らが片っ端から倒れていく。
敵の軍勢も少なくなりつつあるのか、ディスペアの勢いが弱まり始めた。
そんな状況で油断したのか、生徒の一人がディスペアに押し倒された。
教官が助けに入ろうとするが、襲い掛かってきたディスペアに反応し切れず地面に叩きつけられてしまう。
そのまま二機がバキバキと潰され、砕かれていく.........
「ああ、そんな......」カナタが声を震わせる。
指示を飛ばす教官が居なくなった事により他の生徒も一人、また一人と逃げようとするが、〈ブラスト〉により撃ち落とされていく。
「ハヤト!どうするの!?このままじゃ死んじゃうよッ!」
どうしようもなかった。
このまま死んでしまうのか?俺とカナタの二機だけで残り約五十体のディスペアを相手にしなくてはならない状況の中で「ハヤト、死にたくないよ......」と呟くカナタに俺は何もできなかった。
焦土と化した東京の地に立ち尽くす〈黒鉄〉。
ディスペアは着実にこちらに向かって来ている。
しかし俺の身体は魂が抜かれたかの様に動かない。
だが、心の中で『アイツだけは守りたい』と強く願う。
ドクン、とアドレナリンが溢れ出し、俺の思考を赤く染めた。
「そんな......暁ハヤトのシンクロ率、100%に達しましたッ!」
オペレーターの言葉に、指令室から驚愕の声が響く。
「ハヤト!どうしたの?!ハヤト、ハヤト!!」
「早く逃げるんだッ!ここは俺に、任せろッ!」俺は自分を呼ぶカナタにそう叫び、ディスペアのいる方へと向く。
「そんな......ハヤトを置いて行けないよッ!」
「いいから行けッ!死にたいのかッ!」
そうカナタに叫びつつ、俺は〈黒鉄〉の背部から二振りの刀を抜き、目の前に迫るディスペアを一気に斬り倒す。
斬っては倒し、斬っては倒し、それを繰り返していく内にいつの間にか〈黒鉄〉は、その漆黒の装甲を返り血によって更に赤黒く染め上げられていた。