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そんな簡単に諦める瑠那ではなかった。


瑠那は翌日、こっそり部屋を抜け出した。監視の目を潜り抜けそろそろと目的の部屋を目指す。

…幸い、衛兵たちが気づくことはなかった。


「ふふ、ちょろいもんね」


この国の甘い警備体制には結構問題があるとは思うが、今回は正直助かった。


目的の部屋には簡単に辿り着けた。目の前には豪華な装飾が施された大きな扉がある。

物音を立てないように気をつけながら机の上を目指す。

もちろん目的は、瑠那と王子の結婚の書類。それが国王の部屋にあると知った瑠那は、盗み出して破り捨てることを誓った。


「見―つけたっ!」


――――――――そこには、婚姻届。

瑠那は思わず手に取り、その婚約届を見て喜んだ。


紙には、アルヴィアス・リーウェンと書かれてあった。

瑠那はこちらに召還された時、文字を読むのには困らなかった。だが、誰にも言っていない。正直皆のことを信用していないからだ。


…王子の名前、初めて知った。

そういえば、どちらとも名乗るタイミングを逃していた。まあ、どうでもいいけど。


「何が見つけた、だ?」


嫌な予感がして振り返って、見る。そこに立っていたのは、王太子だった。


「ずっと見てたでしょ?私のこと」

「ああ、監視の目を潜り抜け、国王の部屋に忍び込んだのは見事だったな。お前がいなくなったと侍女から報告があったんだ」

「てかこれ、破れないじゃない」

瑠那は紙を指差していった。

「魔法がかけてあるからな」

王子はふんっと鼻を鳴らす。


「正直、何が気に入らない?俺はお前に何でも与えてやれる。最上級の環境で暮らせるし、ドレスも宝石も何でも…な」

「お金があれば幸福になるなんて、金持ちの言うことね。民はお金がなくても必死に生きて、一生懸命だからこそ生活が充実していると感じる人もいるのよ。…民の気持ちが理解できないようじゃあ、未来の国王失格よ?」

瑠那はそう言いながら、王子の頬を人差し指でぷにっと押した。

王子は、不快そうに眉をひそめる。


「…で、本当のところ何が気に食わないんだ?」

「顔がいいところが嫌。お兄様のせいで、美しい人は苦手なの」

ふいっと顔を背けると、王子が呆れたように溜め息を吐く。

「だって、お兄様のあの目立つ顔のせいで何度酷い目にあったことか。妹という立場にいる私が気に入らなくて、毎日嫌がらせの嵐よ?…本当に、顔が良い人といるとろくなことがないわ」

「…他には?」

「そもそも、お兄様が私の結婚を勝手に決めたこと…かな?」


これが、瑠那の本当の気持ちなのだろう。

今までのは、一人何も知らされなかったことに納得できずにいた瑠那のささやかな抵抗だ。


「では、俺のことは嫌いではないのだな?」

「顔以外は。将来良い国王様になれるわよ、きっと」

にこにこと笑みを浮かべ、瑠那は答えた。



「…ところで、これって私の名前?」

瑠那は婚姻届の兄の代筆と思われるところを指差した。

「ああ、ルーナ・グラディアス…と書いてあるが?グラディアスはお前の兄がこちらで名乗っている姓だ」

「…私、お兄様と姓が違うのだけど?」

「…何?」

「だって、私お兄様とは異父兄弟にあたるもの。勇者の血とやらは一滴も流れてないわよ?」


王子はびっくりして無言になっている。


「おーい、大丈夫~?」

王子の前で手をひらひらと振ってみる。

「勇者の血筋ではないだと?昨日言っていたことは本当だったのか…」

「少なくとも、父親が違うことは確かね」

「だとしたら、なんでこんな大変な間違いをしているんだ、俺たちは」

ついには頭を抱えて、座り込んでしまった。


それはそうだろう。瑠那に勇者の血が流れていると誤解していたせいで、現在世界が混乱しているのだから。


「じゃあ、結婚は無効?」

瑠那はわくわくしながら聞いてみる。

「…残念だが、国民に発表したから取り消せないし、式の手配も進んでいる。今さら無理だな」

「そっか…」

残念そうに瑠那は言う。


「俺は、お前のことはそんなに嫌いではないぞ?顔は地味だし腹の立つ性格をしているがな」

「それ…褒め言葉になってない。なんか嬉しくない」


こうして、瑠那の結婚は呆気なく決まった。






評価してくれる人が少なくて寂しいです。

もう一つの「白銀の華」シリーズはたくさん評価していただいたのに。

まあ、こちらは文章ぐだぐだですからねー。


感想などお待ちしています。

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