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「殿下っ!ルーナ様が逃亡なさいました!」

「なに!?あの女…またか!」



そう、瑠那は全力で逃げていた――――――礼儀作法の教育を逃れるために。


もう、城内の通路という通路は調べ尽くしてある。ちゃっかり、隠し通路の情報も持っていたりして。


瑠那は兄がいつもこっそり鍛錬している城の片隅に辿り着いた。ここなら、人目にもつきにくいので見つかるまい。


「あれ?瑠那ちゃん?」


先ほどまで素振りをしていた兄が驚いた表情でこちらを見ている。


「兄様、かくまって!」


そう叫んで、兄の下に駆け込んだ。




兄はいったん鍛錬を止めて、草むらに座り込んだ瑠那の隣に腰を下ろした。


「ごめんね、俺のせいで大変な思いさせて…瑠那ちゃんの気持ちも確かめないで。確かに、結婚なんて大切なことを軽軽しく決めるべきではなかった」

「兄様」


瑠那が咎めるように言った。


「私は、兄様がそれが良いと思ったのなら、何も言わない。私の命と比べたら、結婚しか選べないでしょ、兄様は」

「瑠那…ありがとう」


兄は瑠那に抱きついてきた。普段なら押しのけるところだが、今日だけは許してあげた。


…おそらく、兄は兄なりに瑠那のことを心配していたんだと思うから。


「それに、別に結婚したって、今までの生活が変わるわけではないし」

「……へ?いやいや、変わるでしょ、180度」


まあ、白鳥家は名家なのでそれなりに裕福な生活を送っていたが、ここでの煌びやかな生活には敵わないだろう。

それに、王族の一員としてたくさんの仕事がある。今までのように自由な生活が送れるはずがない。


「私、結婚式が終わったら城にはいないつもりだから」

「……………」


…アルが聞いたら怒るんだろうなー、きっと。結構真面目な奴だし。

たぶん、妃としての責任を果たさなくてどうする!とかって言うんだろうなー。


「さすがに、王太子妃がいないのはまずいんじゃないか?」

「私に求められたのは他国に手出しされない身分をもつことだけで、実際はいてもいなくても問題ないでしょう?」

「いや、俺が瑠那ちゃんに会いたいし。せっかく会えたのに出て行くとか寂しいこと言うなよ」

「今まで別々だったんだから、今さら変わらないわよ」

「えー、俺は瑠那ちゃんなしでは生きていけないのに!」


そんなこんなで賑やかな会話が続く。


「そういえば、しーちゃんは元気?」


しーちゃんとは、瑠那の姉であり、兄にとって双子の妹にあたる。…ということは、勇者の血を引く妹とは、確実に姉のこととなる。


「あ、お姉様なら異世界に召還されて巫女やっているわよ?」

「……………は?今、何て?」

「だから、異世界で巫女やってるって…。なんか、おばあ様の血筋が異世界の巫女の血筋で、召還されたみたいよ」

「異世界って…こことは違うの?」

「ええ、別の世界。すごいわね、うちって3つの世界の血を引いているのね」

「…………」


あまりの衝撃的事実にしばし呆然とする勇者。


「あ!おいルーナ!お前また脱走しただろう?」


遠くのほうからアルの声が聞こえてきた。


「あ!アル、よくここが分かったわね」

「黙れ、逃走常習犯。王太子妃としての」

「はいはい、わかっていますよー。王太子殿下サマ」

「貴様っ。脱走のせいで勉強が遅れているのだぞ?」

「これでも優秀じゃない、言葉は習得してるし」


瑠那は腰に手を当てて威張っている。


「さっさと来い!今日は勉強時間を増やしてもらうぞ」

「え~」

「文句言うな。早く歩け」


瑠那はアルに連れられ、去って行ってしまった。


残された勇者はあまりのことに絶句して、固まっているままだ。


3つの世界の血を引いている…?しかも、しーちゃんが他の世界に行ってるって?もう、わけが分からない…。

ただ一つ言えるのは、彼女が自分以上に何かしらの情報を持っているということだ。


もしかしたら、母さんのことも…?


母は、異世界で行方不明になって消息が掴めないままだった。

生まれたばかりの赤ん坊だった瑠那が地球に送られてきた時は正直驚いた。てっきり母はもう死んだのかと思っていたから。


…てか、それ以前に瑠那ちゃんあんな性格だったか?


人の手を煩わせるようなこともなかったし、大人しくて聡い子だった。いつも優しくて、あんな風に人をからかうことなんてなかったのに…。

俺はてっきり、いい子にして王太子妃のための勉強に励んでいると思っていた。


ああ…混乱することだらけだ。俺はどうすればいいんだ?


勇者は頭を抱えてしまった。






家族関係が結構見えてきました。

さてさて、どうなるのでしょうね~?

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