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第二話 運命の歯車が廻り始める刻

僕は言いかけた言葉を飲み込んだ。

「厨二病…?」

その言葉が喉元まで出かかっていた。でも、なぜか口に出せなかった。

彼女のノートに記された呪文、あの記号、そして「黒騎士団召喚魔術」という文字列——それは、僕が中学時代にこっそり妄想していた世界と、あまりにも似すぎていた。

まさか…彼女も? いや、そんなわけない。ただの偶然だ。僕はもう、使命を放棄したのだ。


何事もなかったかのようにノートを渡すと、天野は急いで立ち上がり、教室を走り去った。夕方の陽が窓から差し込み、彼女の背中を黄金色に照らしていた。その姿は、どこか儚げで、そして——

懐かしい。


教室に残された僕は、ロッカーに寄りかかり、深いため息をついた。

平凡な青春を送るんだ。そう決めたのに…なぜだろう、このざわめきは。まるで、封印したはずの何かが、再び目覚めようとしているみたいだ。


胸の奥で何かが疼く。それは、忘れかけていた使命感なのか、それともただの好奇心なのか。

いけない。触れてはいけないものに、触れてしまった気がする。


平凡な日常は、思いがけない形で終わりを告げようとしていた。

夕日の光が教室を染め、影を長く伸ばす。その影が、どこか黒騎士のマントのように見えたのは、きっと気のせいだった。

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