大きな魅了使いのいる小さな国の話
え、わたしは魅了使い?
「そうですわ!殿下を返しなさい!皆を元に戻しなさい」
「う~ん。魅了使いだけど・・・殿下は私の贔屓であって、別に取ろうと思ってはいないわ」
「そんな。馬鹿な!殿下ぁ!」
「そうだ。花束を渡しただけだ。さあ、一緒にサンディ様の贔屓になろう」
「・・・サンディ、王太子殿下と結婚しないのなら、一体、何が目的なの!」
サンディと呼ばれた10歳の少女は語り出した。
「まあ、いいわ。話すわ。私の目的を、皆に『真の幸福』を与えるの」
私って、可愛くないでしょう?
それに、貴族とは名ばかりの家の第六子でぇ~、しかも、スキル判定は『魅了』よ。
6歳で受けるスキル授与の儀で判明したの。すぐに目隠しをされてね。
そりゃ、親は悩んだわ。『殺してしまおう・・』
とね。
6歳の子に聞こえるように言うワケ。
「結局、私は屋根裏に隠されて、最低限の世話だけは受けたわ」
でもね。ある日、うっかり、食事を運ぶメイドと目があったの。
「・・まあ、何て、可愛い子、閉じ込めてはいけないわ!」
こっそり出してもらって。
お父様を見たの。次々に家族を見て、私の魅了にかかったわ。
『サンディ!』
『何て、可愛い!』
家族から優しくしてもらいたいって思いだけなよ。
願いが叶って溺愛されたのよ。
でもね。狭い領内の家門、すぐに、財政破綻を起したわ。
皆、私に王都のドレスや、アクセサリーを取り寄せるからね。
そしてね。愛されるのに飽きたのよ。
つまらないわ。何にもしないのに溺愛されるって。
家族は口々に言うわ。
『サンディ!もっと可愛がらせてくれ!』
『欲しいものはない?何でも買ってあげるわ!』
家族はボロボロの服を着て、やせこけても、私を愛することで幸せを感じていたのよ。
ええ、幸福そうだったわ。目が輝いていたわ。
なら、王国に君臨すれば皆を幸せに出来るのではないかって思ったの。
それが目的になったわ。
そしてね。
王都に行かせて下さいって頼み。家族で移住したわ。
そしてね。いろいろ試したの。
目で見える範囲の人しか効かないとかね。
だから、王宮に入って、陛下、王妃殿下、王子達に私を気に入るように見たの。
そしたら、皆、私を愛してくれるようになったわ。
でもね。
王太子の婚約者はダメだった。
そう、貴女よ。
珍しい現象だわ。
よほど、
・・・・・・・・・・
「王太子殿下の事を愛しているのね。まさか、私を殺そうとして立ち塞がるとはね」
「はあ、はあ、皆、正気に戻って、国号をルクセル王国から、サンディに変えるなんて!」
私はヴェラリー・ショトナー、ショトナー公爵家の娘・・・
殿下は目を輝かせて、サンディに毎日花束を渡す。
王宮の者は全てサンディの魅了にかかった。
ここで止めなければいけない。
10歳の子が王座に座り。皆は平伏する異常事態だ。
私はお守り刀をとり。彼女の前に立ち塞がった。
護衛騎士がサンディの前を守る。
「サンディ様、危のうございます。お下がり下さい」
「いいわ。公爵令嬢様ね。では手かざしをして、私の魅了にかかってもらいますわ。取り押さえて」
「「御意!」」
「ヒィ、陛下、王妃殿下、王太子殿下、正気に戻って!」
「可哀想に、今、現世の苦しみから救ってあげる感じ~。皆と魅了されれば幸せになれるわ」
10歳の子はそういって、私の額に手を当てる。
膨大な何かが入って来た・・・・
・・・あれ、私、ヴェラリーは何を迷っていたのかしら。
サンディ様、その赤髪とニキビだらけのお顔、何て可愛らしい。
陛下と殿下は口々に歓迎の言葉をかけてくれるわ。
「ようこそ、仲間に!」
「うむ。ヴェラリー嬢よ。ともに、サンディ様を愛でようぞ」
「はい、陛下、サンディ様の行幸を意見具申します」
「「「さすが、ヴェラリーよ!」」」
この日、群臣全員の賛成で国号がサンディ王国になった。
彼女は王位につかず。
ただ、遊んでいた。
時に、観光のように王国内を旅して、民を魅了し続けた。
その後、何度か大国から攻められたが。
「サンディ様は国と共にある!」
「祖国を守れ!」
そのたびに撃退し。人口50万の国であるが、狂信的な戦いで国を守った。
サンディは贅沢をしたが、王族並で満足をした。
それから、50年後、サンディは死去した。
更に時代が進んでも民のサンディへの敬慕は遺伝した。変わる事はなかったのだ。
但し。サンディの霊廟のある土地。
サンディの国号を愛し続けたのだ。
☆300年後
「サンディ王国!バンザイ!」
「ああ、素晴らしい国だぜ!」
小国淘汰の時代をくぐり抜け。
愛国心が強い国民との評価になり。
他国からは一目おかれた。
魔道科学の時代、カジノと観光で生計を立てている。
サンディが、国と同一視されるのを予測していたかは定かではない。
最後までお読み頂き有難うございました。