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異世界紀行・ダンジョントリッパー  作者: アルゴラインズ/牧野円(リュウケン)と森さとる
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第7話:ソワル・ジダルの街(後編)

第7話:ソワル・ジダルの街(後編)


「よしっ、また動くか!」

シュウがベンチから勢いよく立ち上がった。コーヘイ、ユカ、ヤストもそれに続く。


せっかくこの街に来たんだ。ここでしか見られないものを、見て回りたい。

「それに、さっきユカが言っていた影のエネルギーも気になるな…」


その時、通りがザワついた。

向こうから誰がが走ってくる。少年だ!人相の悪い連中があとを追ってくる。


「待て!逃げるなこのガキ!」

コーヘイはシュウと顔を見合わせて、うん、とうなずくと、ゴロツキどもの前に立ちふさがった。

「何だぁ?てめえらは!!」

凄むゴロツキたち。


シュウは大きなアックスを構えて言う。

「へえ、僕たちと戦うつもりかい?」

コーヘイも剣のツカに手をかけた。

とたんに連中の顔が青ざめる。

「そ、そんなつもりは無かったんだ…」

じりじりと後ろに下がり初め、ダッシュで逃げるゴロツキ。

「くそ!次に会った時は、おぼえてろよォォ!」


少年が頭を下げる。

「ありがとう!助かりました」

「ボクはハラクって言います」

コーヘイたちもそれぞれ自己紹介をすると、少年の目が輝き始める。

「ひょっとして、冒険者さんですか?」

そうだ、とうなずくコーヘイ。

「それならギルドに案内させてください!ボクの父はこの街のギルドマスターなんですよ」


ハラク少年に案内され、コーヘイたちはソワル・ジダルの街のギルドに到着した。このギルドは、もともとあった商人ギルドにファロスギルドが協力して成り立っているという。



ギルドマスターであるボルガーはコーヘイたちにお礼を言った。

「息子のハラクが世話になった。ありがとう、心から感謝する」


用意されたお茶とお菓子をいただきながら、ギルドマスター・ボルガーと話をする。

「そうか、ソワル・ジダルは良くも悪くも深い街だからね。これからも滞在する度に新しい発見があるだろう」

シュウは神妙な顔つきで言った。

「実はご相談があるんです」

「なんだ?何か困ったことでもあるのか?」

「この街で最近、妙なこととか、ありませんか?」

ユカが口を開く。

「私たち、街で何度か怪しい人たちを見かけました。そして、その後ろに影のエネルギーを感じたのです」

ヤストは心配そうに言った。

「何か大変な事件が起こるんじゃないかと不安です」

ボルガーは腕を組む。

「確かに、暴力沙汰は異常に増えている。なるほど影のエネルギーか。私もギルドマスターとして、対策を考えなければいかん」


じっと聞いていたコーヘイは決意を込めて言った。

「ボルガーさん、僕たちにも何かできることがあれば協力します」

「ありがとう、皆さんの協力は大変心強い。その時はよろしく頼む」

ギルドマスターは微笑んだ。

「後ほど冒険者の宿まで我々の馬車で送ろう。どうか夕方まで、この街でゆっくりしていってくれ」



ギルドを出て、再び街を歩く。

そこでユカが思い出したように言った。

「そういえば、さっきのゴロツキたちからも、微かな影のエネルギーを感じたわ」

ユカは、目を閉じ、集中力を高める。彼女は微かな魔力の流れを辿り、その原因を探ろうとしていた。


突然、背後から優しい声が聞こえた。


「もし、君たちが何かを知りたいのなら、まず、この老人に質問してみてはどうかね?」


振り返ると、そこには、杖をついた白髪の老人が立っていた。

「あなたは…?」

シュウが問いかけると、

「私はただの旅の老人じゃな」

そう言って微笑んだ。


「…私たちが知りたいこと」

「怪しい影のエネルギーについて」

ユカが真顔で質問する。


老人はしばらく黙ってうつむいた。そして、ゆっくり顔をあげて、告げる。

「君たちの求めるものはフルマージャにあるだろう」


四人は顔を見合わせた。

(フルマージャ?何のことだろう)

「それでは…さらば」

老人が、静かに歩き始める。

「待ってください!フルマージャって何ですか?」

思わずコーヘイが尋ねる。

「…行けば、わかる」

老人の姿が次第に透明になり、やがて、消えていく。優しい笑顔と声だけが残像のように脳内にとどまった。


まぼろし?四人は同じ幻を見ていたのだろうか?

「一体、いまの老人は何だったんだろう…?」

「フルマージャ…」

ユカは、呟きながら、空を見上げた。

その空には、奇妙な模様の雲が広がっていた。


第7話(終)

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