第4話:レイワーナ地方の謎
第4話:レイワーナ地方の謎
3日目、今日もギルドに足をはこぶ。
「コーヘイさん、本日はレイワーナ地方の冒険をご希望とのことですが、移動手段はお決まりですか?」
受付嬢のルマがコーヘイに尋ねた。
「それがまだなんだ。レイワーナに船は出てないみたいだし…」
コーヘイは困ったように答える。レイワーナ地方へは陸路だ。船は出ていない。
「そうですよね。レイワーナに行くには馬車か徒歩になります」
ルマが地図を広げながら説明する。
「馬車は高いし、徒歩だと時間がかかりすぎるなぁ…」
コーヘイは他の場所に行こうかと考えた。
その時、背後から声が。
「あのー、コーヘイさんて方、もしかしてレイワーナ地方に行きたいのですか?」
振り向くと、背中にアックスを背負った、しなやかな筋肉をした戦士風の男が立っている。背はコーヘイより少し高い。
「ええ、まあ」
コーヘイが曖昧に答えると、男はにこやかに笑った。
「それなら、僕たちのパーティーと一緒に来ませんか? 馬車をチャーターしたんです」
見た感じ悪い人間では無さそうだ。
コーヘイはルマのほうを向いた。
ルマがにこやかにうなずく。
これは大丈夫な人のようだ。
決めた。
「はい! ぜひお願いします!」
御者と馬車のチャーターは、安くは無いはずだが、装備からして金回りも悪くないパーティーに違いない。
「僕はシュウ。戦士です」
さっきの戦士が言った。
「私はユカ。魔法を少々」
「オレはヤストです。よろしく、コーヘイさん!!」
「…ひょっとして、その名前は日本人?」
「はい!僕とヤストは埼玉県民で」
とシュウ。
「私は千葉!」
ユカが続く。
「やっぱり!僕は東京なんですよ」
馬車の中で、四人の冒険者たちは自己紹介を交わした。三人ともしばらく現実に戻る気は無いらしい。
「ところでレイワーナ地方には、何か面白い場所ってあるんですか?」
コーヘイが尋ねると、魔法を使えるというユカがニヤッとして答えた。
「遺跡が有名。古代文明の痕跡が残っているらしいです」
「古代遺跡か! ぜひ行ってみたいですね!」
コーヘイの目が輝いた。
「遺跡には罠や仕掛けもあるみたいだけどね」
ヤストが付け加えた。
「罠や仕掛け!まさに冒険って感じがする」
コーヘイは、昔遊んだゲームを思い出した。よく罠に引っかかったっけ…
やがて、白っぽい石で造られた古い建造物が見えてくる。あれが古代遺跡のようだ。
「日が暮れるまでには、お戻りくださいね」
そう言って御者が馬車をその建造物の脇につける。近づくと思ったより大きい。
「すごいな!本当に古代の遺跡だ」
コーヘイは遺跡の壮大さに圧倒された。
「おおー!」
シュウたちも感嘆の声を上げる。
「ここがレイワーナ地方の古代遺跡。気をつけていこう」
シュウが先頭に立ち、遺跡の中へと入っていく。
「よし、入るぞ!」
コーヘイも後に続いた。
遺跡の中は当然、石の壁だらけだ。
迷わないように慎重に進んでいく。
「うーん、この壁の模様は何を意味してるんだろう?」
コーヘイが壁に刻まれた模様を見つめていた。
「何か仕掛けがあるみたいだな」
シュウが壁を触りながら言った。
「この石のオブジェが怪しいよね」
ユカがそれにうなずいた。
「…触ってみてもいいかな?」
コーヘイが石のオブジェにゆっくり手を近づける。
「うん、よろしく」
シュウたちは罠に備える。
コーヘイがオブジェにそっと触れた瞬間、壁が動き、隠し通路が現れた。
「おおー!」
ヤストが声を上げる。
「すごい! これが古代文明の技術!」
隠し通路には先があった。
ヤストが冒険セットに標準装備されている光る棒を振り、前を照らす。
通路を進んでいくと、やがて広い空間に出た。かなり天井が高い。
「うわっ!」
コーヘイが叫んだ。足場が崩れ、穴に落ちてしまったのだ。
「コーヘイさん!」
ユカが心配そうに覗き込んだ。
(あーびっくりした!でも、そんなに深くは無いかな)
「大丈夫! なんとか着地できた」
穴は人の背丈ほど、ダメージは無い。コーヘイがあたりを見回すと、崩れた砂のなかに光るものを見つけた。
「これは…!」
コーヘイがよく見ると、それは一粒の宝石だった。
「こんな貴重なものが、ここにはあるんだ!」
コーヘイの胸が高鳴った。
穴に冒険セットのロープをたらし、端を大きな柱に結びつける。いつでも登れるようにしてから、四人はさらに奥へと進む。すると、また広い部屋についた。
「ここで行き止まりかな?」
コーヘイが言った。
「いや!何かいるよ!」
ヤストが警戒した。
ぐらっ…
部屋の奥でじっとしていた物が動いた。こういうの、見たことあるぞ!巨大な石像!遺跡の守護者ゴーレムだ。
「こりゃ強そうだ…!」
コーヘイは身構えた。
激しい戦闘が始まった。コーヘイたちは力を合わせてゴーレムに挑んだ。シュウが戦斧をふるい、ユカは後方から攻撃魔法を撃ち込む。ヤストは不器用ながら大きな剣を振るった。パーティー戦だ!
数分間、戦いは続いた。
「あたれーーっ!」
ヤストのラッキーヒットがゴーレム最後の体力を奪う。
大きな音とともに崩れるゴーレム!
「よし! あたった!」
ヤストが叫んだ。
「僕たちの勝利だ!」
コーヘイ、シュウも微笑む。
「…えっと、何か持って無いかなぁっと」
あたりをあさりはじめたユカはゴーレムの残骸からこぼれ落ちた宝石を数個拾い集めた。
「よしゃ!これで今回も黒字っと」
納得のいく成果を得た
コーヘイたちは遺跡から脱出、
そのまま馬車に乗り込む。
「レイワーナ地方の古代遺跡、いやぁ本当にすごかったなあ」
しばらく一同の興奮は続いた。
ギルドに到着すると宝物を換金したユカがそれぞれに報酬を分配する。
「これ、金貨じゃないか」
思わぬ報酬に喜びを隠せないコーヘイ。
「それだけの冒険だもの、当然よ」
ユカはフフフッと笑って勝利のジュースで乾杯のポーズをした。
「それ、いいな!オレンジ系?」
ユカがうなずく。
「ぼく、おなかすいた」
とヤスト。
「よし!あとで皆で食堂に集合だー」
コーヘイもギルドに報告。
「お疲れ様でした。貴重な経験になりましたね」
ルマが笑顔でねぎらう。
「はい!」
コーヘイは満足した表情で頷き、仲間のいる食堂に向かった。
食事が済むと、すぐに宿に戻り
ベッドの上でしばらくぼーっとする。
「レイワーナ地方では冒険者仲間ができた」
「シュウ、ユカ、ヤストかぁ、仲間との冒険も良いものだなぁ」
今日一日の出来事を思い返した。
「お疲れ様でした、コーヘイ様、ハーブティーをいれました、きっとよく眠れますよ」
精霊マーが現れてお茶をいれてくれる。
「ありがとう」
コーヘイはマーに礼を言い、温かいお茶を口に運ぶ。
「明日は何があるのかな」
そう考えながら、ゆっくりベッドに横になった。
第4話(終)