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異世界紀行・ダンジョントリッパー  作者: アルゴラインズ/牧野円(リュウケン)と森さとる
3/12

第3話:グランダキア島の冒険

香ばしいパンの匂いに目が覚める。


「おはようございます、コーヘイ様」

部屋の精霊マーが朝食を作っていた。目玉焼きとパン、それに紅茶みたいなお茶だ。なんて便利な部屋の精霊!


(そういえば昨晩は食べずに寝ちゃったんだな)

思い出しながら朝食をすっかりたいらげる。

「…あーでも、会社、大丈夫かなぁ」

ぽつりとつぶやくコーヘイ。

精霊マーがこれに応える。

「うん。問題ありませんよー。お帰りの際はこちらの世界に来られた【場所と時間】に戻れますので」

「…へえ!そうなんだ。それは安心して冒険できるな」

まだまだこの世界を冒険してみたい。

「マー、ごちそうさま」

そう言うとコーヘイは宿のとなりのファロスギルドへと向かうのだった。


ギルドの正面玄関を入ると、カウンターでは受付嬢のルマが明るい笑顔で迎えてくれる。

「コーヘイさん、おはようございます! 今日はどちらへ?」

(うーん、こういう掛け合い、冒険者っぽくていいな!)


壁をみると周辺の地図が貼ってある。

地図の端には、湖とそこに浮かぶ島が見えた。

「このグランダキア島って遠いのかな?」

受付嬢は、にこやかに答えた。

「グランダキア島ですね!わりと近いですよ。特産品はハーブと鉱石。小さなダンジョンもありますが、ここも初心者向けのクエストが多いですね」

「ただ、船に乗らないと行けません。往復で銀貨1枚必要です」

「あっ銀貨なら、昨日の報酬がまだあります。そうか、 ハーブとか鉱石、そしてダンジョン。面白そうだな!」


コーヘイはワクワクしつつ、宿から1時間ほど歩いてグランダキア湖のほとりの船着場へ向かった。湖に浮かぶ小さな船にはすでに2、3人の冒険者が乗っている。皆無口で景色を眺めているようだ。


コーヘイが乗ると、ほどなくしてコビトの船長が挨拶をする。

「私はこの船の船長プトラムです。背が低いのはハーフフットだからですよ、ホッホッホ!これから皆さまをグランダキア島にお連れします」

「当船は船自体に魔法がかかっていて魔力で動きます。では出航ー!!」

かけ声とともに小さな船は出航した。グランダキア島は巨大なグランダキア湖の中にある。この湖は比較的安全だと受付嬢のルマさんが言っていたな。

…そんな事を考えていると、船はあっという間にグランダキア島に到着した。



島に上陸する。

小鳥のさえずりが聞こえはじめ、

緑の葉の匂いが濃くなる。

「うわー、空気が全然違う! 自然がいっぱいで気持ちいいなぁ」

すうっと深呼吸。体の奥から力が湧いてくるようだ。


「島のダンジョンは前の道を右にまっすぐですよ!ホッホッホ!」

コビトの船長プトラムに教えてもらってコーヘイはこの島のダンジョンへと足を運んでみる。


ほどなくして洞窟の入口が見えた。

「ここが島の初心者ダンジョンか。ちょっとドキドキするな」

ダンジョンに入ると、すぐにモンスターが現れた。穴から這い出てきた大きなヘビの姿にコーヘイは、さっと剣を構える。ヘビはいきなり飛びかかってきた!が、コーヘイの動きのほうか速かった。剣を素早く縦に振り、へびの頭を斬り落とした。

「倒した! 初めてのダンジョンモンスター遭遇だ」

それから、さらに奥へと進む。


(ん?)…チョロチョロと水の流れる音が聞こえた。その音の方に進んでいくと、岩から水が湧いている。コーヘイは水の下に手をかざした。

「つめたっっ」

とっさに手をひっこめる。

すると、足元にできている池の中に小さな宝箱があるのが見えた。誰が置いたのだろう?

「これは宝箱…罠はないかな?」

おそるおそる宝箱を持ち、地面にそっと置くと、ガシャッとフタが開き、中から小さなコイン数枚と薬草が出てきた。

「び、びっくりした…箱が壊れてるみたいだ」

「何にしても、コインと薬草をゲットかな」

さて、今日はそろそろ帰ろうか。

船は夕刻までこちらにいると言っていたが、遅くなるとこの島で野宿…それはイヤだ。


ダンジョンを後にしたコーヘイは帰り道を歩いた。薬草とコインを袋に詰めて、グランダキア島の自然を満喫し、帰りの船に乗る。湖の風が心地よい。


ギルドへの報告を済ませ、冒険者の宿に戻ると、精霊のマーが優しく出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ。冒険はいかがでしたか?」

「うん、すごく楽しかった! 薬草とかコインはギルドで換金できたよ」

「それはよかったですね。ゆっくり休んで、明日に備えてくださいね」

「ありがとう! また明日から冒険に出るぞ!」


そういえば不自然に置いてあった宝箱。

あれは誰が置いたものか、とギルドで質問したところ、初心者用のダンジョンには【ベテランの冒険者が後輩のために不要なアイテムを置くこと】になっているらしい。ギルドの教育方針として必要な事のようだ。


(なるほどね。沸いてくるわけではないんだなあ)


そんな事を考えながら眠りにつく。つまり未到達の場所にはそれだけすごい宝物が眠っていることもあるわけだ。


2日目の冒険も無事に終わった。やっぱり冒険って楽しいな。


第3話(終)

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