第2話:冒険世界ライオースへ
第2話:冒険世界ライオースへ
「改めてコーヘイ様、ようこそ冒険世界ライオースへ!」
部屋の精霊マーが言った。
コーヘイは目を丸くした。
相変わらず、へんちくりんな見た目だ。
「本当にここは異世界?きみは精霊なのか?」
「はい! 部屋の精霊は生活をサポートするお役目でこざいます。生活魔法で部屋をキレイにしたり、採取した素材を調理したり、なんなりと私めにお申しつけください!」
「あ、あ、ありがとう。しかし、ここは一体…」
(なんか、着ていた量販店の服までファンタジーぽくなっているし)
「コーヘイ様は冒険者パスポートをお使いになりましたよね?」
「ここは冒険世界ライオースにある冒険者の宿、異世界から来た冒険者のための休憩所です」
「なるほど…冒険の拠点って感じかな」
「はい、その通りです」
「うーん、僕はここで何をすればいいんだろう?」
「まずは宿の隣にある建物、ファロスギルドに行ってみましょうか。 冒険者登録やクエストの受注もできますし」
「ギルド!なんだか本当に冒険者っぽいなあ」
「コーヘイ様のご準備ができたら、お連れしますよ」
と言ってクローゼットからこの世界にあった装備を見つくろう精霊。
「うん、いろいろ頼むよ」
ファロスギルドは冒険者の宿に隣接していた。まさに中世ヨーロッパの建築といった感じの外観で、10回建ての大きな建造物だ。巨大なホールに食堂、様々な壁掛けと地図。無数の部屋と階段。
キョロキョロしながら精霊マーに連れられるコーヘイ。すると、酒場のカウンターみたいなブースから、明るい声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ! 冒険者登録ですか?」
コーヘイを呼び止めたのは二十歳前後のRPGに出てきそうな制服を来た栗毛の女性だった。
「えーと、そう…なのかな?」
「それなら冒険者パスポートを確認させていただきます」
…あのパスポートなら大事に胸のポケットにしまっている。
「はい、どうぞ」
「冒険者、カゼオカ・コーヘイ様ですね… はい、はい、登録完了しました! パスポートをお返しします」
「ありがとうございます」
「あ、私はファロスギルドの受付担当、ルマと申します。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします!えっと… 初心者なんですけど、冒険者って何をしたらよいものなのか…」
「うーん、まずは初心者用のクエストをオススメします」
ルマはクエストの書かれた羊皮紙をいくつか並べた。
クエスト:
・ 薬草採取(指定の薬草を5つ採取)
・モンスター討伐(指定のモンスターを3匹討伐)
「薬草採取ならできそうかな?」
「承知いたしました。 薬草の生えている場所は地図で確認できますよ」
「おお、ありがたいな」
コーヘイは薬草クエストの書かれた紙を受け取った。
「よし! 薬草採取やってみるか!」
そう決意した時、冒険者パスポートに【薬草クエスト進行中】という表示が出た。たぶん文字はこの世界の文字なのだが、コーヘイには不思議と日本語として認識できた。首をかしげながらパスポートを見つめていると、ルマが言った。
「自動的に言葉が変換されるよう、思考が調整されますので、ご安心を」
ファロスギルドの玄関から外に出ると
そこは、よく整えられた庭園になっている。
フワフワと部屋の精霊マーも一緒についてきた。
「あまり長時間は部屋の外に出れないのですが」
「初回だけ私もご同行しますね!近所だし、薬草の場所も知っておりますので」
「えっ助かるよ!」
ギルドの庭園を出て、数十分歩いたところに薬草地はあった。
「これが薬草かな?」
羊皮紙に描かれたものと似たような植物を見つけた。
「はい、そうです。採取してください」
「わかった」
コーヘイは薬草を丁寧に採取する。
ひとつ、ふたつ。薬草を5つ採取完了。
「よし、 薬草が集まった」
冒険者パスポートに【クエスト達成】の文字が浮かぶ。
「お疲れ様でした。ギルドに戻りましょう」
コーヘイは、わくわくしながら帰路についた。
「ルマさん、薬草を採取してきました」
「ありがとうございます! 確認しますね!…はい、クエスト達成です! 報酬をお渡しします」
ルマは報酬の入った袋を手渡した。
鈍く光る小さなコインが数枚入っている。
(おお!これ、異世界の通貨だ!)
「これは地元通貨と言って、民衆の中でよく使われるコインです」
袋から出して、まじまじと眺める。
「他の初心者クエストもご覧になりますか?」
「そうだな…、もう一つ挑戦してみようかな?」
「はい!できますよ」
「次はモンスター討伐に挑戦してみたいな。簡単なのあります?」
「承知いたしました」
再びクエストの書かれた紙を受け取る。
「えーと、ス、スライムか」
「モンスターの場所は私、精霊マーがお教えいたします。今回はお一人で戦ってみてください。大丈夫、相手は小さなスライムなので!」
「ありがとう!次はモンスター討伐だ」
ギルドの庭園のはじにスライムは出現するらしい。…よく見るとゼリー状のプルプルした不思議な生物がいる。
「ああ、あれか!」
コーヘイはそろそろと近づき、初期装備の剣でスライムを突き刺す。
…ぷぎゅっ!
変な音をたててスライムはあっさり動かなくなった。
クエストの紙によると、スライムって、どこにでも侵入して食料などを食べてしまうことがあるらしい。
現実で言ったら害虫を駆除する感じか。
「よし!あと2体!」
コーヘイは剣を構え、合計3体のスライムに次々とトドメを刺した。
冒険者パスポートに【クエスト達成】の文字が浮かぶ。
二つ目のクエストを果たしたコーヘイは意気揚々とギルドに戻った。
「モンスターを討伐してきました!」
「おめでとうございます! クエスト達成です。報酬をお渡ししますね」
「コーヘイ様、初めてにしては上出来です!」
「ありがとうございます!」
今度は銀色のコイン1枚が報酬だった。
「お金の価値はゆっくり勉強するか」
ファロスギルドを後にして冒険者の宿に戻るコーヘイ。
「冒険、楽しかった!まるでゲームみたいだ」
「お疲れ様でした」
部屋の精霊マーがコーヘイに洗浄の生活魔法をかけながら言う。
「だんだん難しいクエストにも挑戦できますよ」
「そうだな!」
「もっと強くなって、色々な場所へ行ってみたい!」
「では今日はゆっくり休んでくださいね」
「ありがとう!」
「異世界での冒険、楽しかったな。 明日はどんな冒険が待っているんだろう?」
ベッドに横になるとすぐに眠気が襲ってきた。
「おやすみ…」
コーヘイは目を閉じながら、今日あった出来事を思い返していた。
第2話(終)