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異世界紀行・ダンジョントリッパー  作者: アルゴラインズ/牧野円(リュウケン)と森さとる
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第11話:ライオースの危機(後編)

第11話:ライオースの危機(後編)


そのころ、レイワーナ地方では、

ユカたちが旧時代の朽ち果てた遺跡のダンジョンの階段を下っていた。

「この先に影のエネルギーを操っている魔物がいるんだね」

ヤストはキョロキョロあたりをうかがっている。

「歴史書には魔人クオンダーク、そう書いてあった」

シュウが険しい顔で語る。

「私たちがヤツを倒さないと、影に操られた怪物の暴走は止まらないわ」

ユカは手袋をしっかりとしめ直す。

「…こんなときにコーヘイがいてくれたらなぁ」

ヤストが思わずつぶやく。

「今はいないんだ。僕たちだけでやらなきゃいけない…モンスターが来たぞ!」


目の前に立はだかるシルエット。

「あれはバグベアーだ」

とシュウ。

「いつもの陣形でいくぞ!」

そう言うとアックスを振り上げる。ヤストが前に出て剣と盾を構え、ユカは後ろにさがって魔法を使える状態を作りだす。

三人は戦闘態勢に入った。


コーヘイが元の世界に戻ってから、ライオースの世界では、半年という年月が過ぎていた。影のエネルギーはますます広がり、影響下にあるモンスターや犯罪者の事件の数も増加した。


ファロスギルドはユカたちに、原因をさぐるように依頼、アメジストの魔導書の古代文字を読み解くと、影のエネルギーを操る存在がいることがわかった。それが魔人クオンダークだ。


その間、ヤストはきちんと師匠について、コモナーからレンジャーに転職した。盾を装備して前列で活躍することも多くなった。


「悪いけど、バグベアーはボクたちの敵じゃない!」

ヤストはそう叫ぶとバグベアーの振るう棍棒を盾ではじいた。

「倒れなさいっ!」

そこに、ユカの攻撃魔法が炸裂する!

体力が尽きて倒れるバグベアー。

「こっちは僕がやる!!!」

もう一体のバグベアーはシュウのアックスが粉砕した。三人はこの階の階段を発見して、さらなる地下へと潜っていく。


階段の下のフロアに降りたとたん、光る鉱石でできた明かりが一斉に灯った。先は真っ直ぐな広くて長い地下通路が続いている。

「罠に注意だな」

長い一本道の通路だ。罠は仕掛けやすいだろう。天井や床、横の壁などを調べながら先に進む。

「やっと向こうの出口が見えてきたな」

「罠らしい箇所は記憶したわ」


その時だった。

地下通路じゅうに、低くて暗い底知れない恐ろしさを含んだ声が響いた。


「ようこそ、勇敢な冒険者諸君」

「我が名はクオンダーク」

「…人は魔人という」

ユカが魔法を放つ体勢をとる。

「ど、どこにいる!?」

闇の声は続ける。

「愚かな…私はもっと深くにいる」

「さて冒険者諸君。この遺跡を見つけた努力はほめてやろう…だが、ここで終わりだ」


ゴ、ゴ、ゴゴゴゴゴ…


地響きが聞こえてくる。

「まさか!下かぁ?」

「ヤバイぞ!みんな、奇襲に備えろ!」

「キァァァァッー!!!」

メリ!メリメリメリメリッ!!

地を割って巨大な地底ワームが出現した。太いロープを束ねたような筋肉質の体から、三つに割れる無数の牙を生やしたアゴが開かれる!!

「うわーーっ!!!」

同時に、柱のような太い尾に、ヤストの体が跳ね飛ばされた。


「エルダージャイアントワームだ!!」

「どう戦えばいいの?」

「くっ、こいつはデカイ!部屋の入口まで引くぞっ!!」

シュウは壁に吹き飛ばされたヤストの手をとりユカを連れて、もと来た通路をダッシュした。


巨大なワームは、なかなか方向転換ができない。(そうだ…その隙に階段を戻って、作戦の立て直しだ)


「まって!階段の前に誰かいる!!」

ケモノと人が融合したようなシルエットが目に映る。

「ちくしょう!ハサミ討ちか!?」


(…いや違う?あれはケモノと人だ)

その人物が、ゆっくり近づいてくる。

一歩、また一歩。

「そんな…まさか!!」

ヤストの顔がぱあっと明るくなった。

「来てくれたのか!!」

とシュウ。

「待ってたよ!コーヘイ!!」


そこに立っていたのは

現実世界から帰還したコーヘイと、ギルドの移動用精霊クリスタルハウンドだった!


「僕も一緒に戦うよ、みんな!!」


キシャァァァァアアアッ!!!

方向転換を終えた巨大ワームは大きなアゴを開いて威嚇する。


「大丈夫!こっちにはコーヘイがいる」

「よし、改めて戦闘開始だ!」

「魔法準備完了!」

「僕も準備完了だ」


四人は視線を合わせてうなずく。


「魔法の書、パワードウェポン!!」

魔法戦士であるコーヘイの目の前で光る魔法陣が展開!

「すげえ!ボクの剣が軽くなった」

「ふむ、アックスもだ」

「さすがね、コーヘイ!!」


コーヘイ、シュウ、ヤストが接近戦、後ろからユカが魔法支援だ。アイコンタクトでタイミングを計る。


巨大ワームの牙が迫る。

おおう!とヤストはワームの頭部を下からかち上げた。

そこにアックスを振りおろすシュウ、

魔法の剣を確実に当てるコーヘイ。


ダメージを大きくするパワードウェポンの呪文が次第に効果を発揮する。

激しい戦闘が続いたが、

ついに、とどめをさすシュウのバトルアックス!


奇怪な悲鳴をあげて倒れるジャイアントワーム。さすがの生命力でしばらくのたうち回っていたが…それも止まった。


「さあ行こう、もう一息だ」

とシュウ。

「影の魔力がどんどん流れていく、その先に魔人クオンダークはいるはず!」

ユカが言う。

「よし!影の災厄を終わらせるぞ!!」



そのころ、ソワル・ジダルの街に押し寄せるモンスターの数は次第に増えていた。


「このままじゃ、みんな持たんぞ!」

ウルフバルトの剣でゴブリンをなぎ倒しながらギルドマスターのボルガーが叫ぶ。

「きっと、ユカたちが何とかしてくれますっ!!」

ルマも負けじと二本の剣でキラーハウンドの首を斬り落とす。


ドゴオッ!!ガラガラガラ…

街の中心部で大きな建物が倒壊した。

「ジャイアント族まで来たか!」

数体の巨人が街を破壊し始めた。


「射てぇーーっ」

突然、高い女性の声がして、何本もの矢がジャイアントに射ちこまれる。

「突撃ィーーーッ!!」

次々と倒されていくジャイアント。

それを指揮しているエルフの少女。

「ファロスギルドよりリアネ!ただいま援軍とともに、参上したっ!!」


それを見たルマが声をあげる

「リアネ先生!!」

「そこにいたか!ルマ!ボルガー!」

ボルガーの持つ剣にチカラがこもる。

「助かるぜー!リアネ先生!!」

ニコッと笑ってエルフ特製の剣を抜くリアネ。

「ということは、コーヘイさんは…」

大きくうなずくリアネ。

「戻って来たんですね!コーヘイさん」

ルマが涙声になる。

ボルガーも元気を取り戻した。

「よし、街の勇者よ!各地から来た冒険者たちよ!モンスターを門まで押し戻すぞっ!!!!」



【旧き魔人の遺跡・最深部】

最下層の奥に、朽ちてはいるが、無数の禍々しい装飾が刻まれた大きな部屋があった。影のエネルギーがそこに向かってどんどん集まってくる。


「ヤバいね、ここから尋常じゃない魔力を感じる」

ユカがささやく。

「魔力の無い僕でもわかる」

シュウの体から汗が吹き出す。

「こ、ここまで来たんだ…ケリをつけてやる」

ヤストの声は震えている。

コーヘイはグランドマスターから託された魔法剣を正面に構えた。

「ああ、ライオースのために、僕たちの未来のために、必ず魔人を倒すぞ!」


ユカの持つ、アメジストの魔導書の宝石がわずかに光る。

ギ、ギイイイイイイイィィィィ…

正面の大きな石造りの扉が開いた。


そこには、魔人がいた。


真っ黒な霧に覆われた巨大な魔人が貪欲に影を取り込んでいた。


「とうとうここまで来たか、人間ども」

暗く冷たく深い闇を秘めた声だ。

「我はクオンダーク、魔人と呼ばれし者」

「さあ…絶望を思い知れっ!!」


魔人は立ち上がった!!

黒い霧が部屋と四人を覆う。


「黒焦げになるがいい」


その霧の中に無数の稲妻が発生した。

バチバチバチバチバチィッ!!!

凄まじい音と閃光の嵐が四人を襲う。

「…雷の剣よ、今こそその力を示せ!」

コーヘイが、魔法剣を掲げる。

「ナンダト!!!」

驚く魔人。


コーヘイの剣が、その雷をすべて吸収したのだ。雷をまとい威力を増す魔法剣。

これが、決戦のためにグランドマスターから託された【雷の剣】だ!


ユカはすかさず攻撃魔法を放つ!

だが放った魔法は、クオンダークの圧倒的な魔力の前にもろくも弾き返された。

「その程度の攻撃、我には通用セヌ!」クオンダークの嘲笑が響く。


ヤストは震えながら盾を構えた。そこにクオンダークの闇の弾丸が炸裂する!

吹き飛ぶヤスト。

「うおーっっ!!」

アックスで突撃するシュウ。

だが魔人クオンダークは、その突撃を軽くかわした。

「ユカ!」

シュウの叫びにユカは再び、魔法の弾をを放つ。

魔人は高笑いとともに、黒い腕をひとふりすると、その魔法もまた、打ち消されてしまった。


コーヘイは何度も魔法剣をクオンダークに振るう。当たっているはずなのに手応えが無い!思わず体勢を崩した。

バキ!!バキバキッ!

魔人の鋭い爪がコーヘイを打ちのめす。

「ぐはっ」

その一撃は重く、地面に叩きつけられた。


ヤストは恐怖にひるみ、盾による防戦一方となる。

「つよい…強すぎる…」


魔人はコーヘイに最後の一撃を与えようとした。そこにシュウがアックスで割って入る。

「くうっ…助かった…」

頭を振り、コーヘイはかろうじて立ち上がった。もうボロボロだ。ダメージを与えられなければ、倒しようが無い。


「そう、絶望するがイイ」

「しょせん人間のチカラなど、その程度なのだ」


打つ手が無くなったユカが叫んだ。

「せっかく、ここまで来たのに!!」

目から自然と涙がこぼれる。

「どうすればいいのよぉ!!!」


突然、ユカの心に優しい声が響いた。


「もし、君たちが何かを知りたいのなら、まず、この老人に質問してみてはどうかね?」


その瞬間、ユカの持っているアメジストの魔導書が輝きを放ち、空中に浮かぶ。


開いたページがパラパラとめくられていく。そして、その中央に新たなページが現れた!

「これは…古の魔法!?」


魔人も異変に気づき、警戒する。


ユカの頭の中に、 魔術師の老人の声が響いた。(私の言葉をくりかえしなさい!…ゲアル・マロク・ユガ・ギラル)


「ゲアル・マロク・ユガ・ギラル!」


激しい魔術の嵐が、本を中心にほとばしった。と同時に魔人を覆っていた影が吹き飛ぶ!

「何ぃ!レギアスの呪文か! 」

クオンダークは苦悶の声を上げた。

「今だっ!」

コーヘイのかけ声とともに

シュウ、ヤストが一斉に攻撃を仕掛ける。

ふたりの斬撃が魔人にあたる!

「な、何だとぉおおおっ!!」

クオンダークはユカの呪文によって、半精霊状態から実体化してしまったのだ。


コーヘイは雷の剣にチカラを込めた。


その刀身が渦を巻く稲妻に包まれる!

魔人の顔は恐怖に歪んだ。


「マ…マテ!」

「オマエラは…ニンゲンなのに…なぜ我に立ち向かう?」


魔人クオンダークには理解ができなかったのだ。命をかけて自分より強い者に立ち向かう、その心が。


「…理由なんてわからない」


「だけど、この大事な世界を」


「僕たちは護るんだ!!!!」


雷の剣の刀身は

真っ直ぐに魔人の心臓を貫いた。


第11話(終)

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