邂逅
さくらこの脳内に逆流するかのように人々の思念が流れ込んでくる。
「ぐぎぎぎ、」
さくらこはその中から、市長の記憶を探る。絶対にあるはずだ。アイツの記憶が。
グイッと腕を引っ張られる。
「え?」
さっちゃん、こっち。
「バルスよ。巨人族の長として恥の極みだ。貴様のような子を成してしまったのは。魔力持ちの巨人など」
「はははちいせーなぁ、赤ん坊より小さいんじゃねーの。こんなのが兄さんだなんて胸糞悪いぜ」
「魔女に立ち向かう戦士団に入るだぁ。寝言は寝ていいな。あんたは、家で雑用だよ。里長の子じゃなかったら、あんたなんて。全く弟君は、勇者の剣を継いだってのに」
「この前の戦士たちも死んだな」
「里長この行いに意味はあるのですか?優秀な戦士たちがみんな死んでいく。木人たちを超えることすらできない。奴らは魔法を使える。奴らの体には、魔力が宿る。」
「なんだ。やつらは、天使?魔女め。この世界を滅ぼすきか。」
「貴様、何をして。最強が僕だ。だと。木人の枝をへし折り、力を奪っただけ。貴様の力では断じてない。認めるものか。貴様は我が誇り高き一族ではない。断じてない」
「兄さん。悪いが死んでくれ。」
「そっか。なら、全て。滅ぼそう。全て、全てだ!巨人も、魔女も、木人も、全て!僕が生きうる限り全て、滅ぼそう。目に付いたもの全て。この世界を作った魔女も、これからの新人類もすべて。は、ははは!HAHAHA!!!!」
「魚人。魚の分際で、人類を名乗るか。天使の記憶を改ざんして、生き延びたというのに。魚ごときに。あいつが、勇者?タコの分際で勇者の剣に選ばれただと。ならば、奴の肉体のサンプルをつかって、やつの身体を奪えば。」
「サンプル体が、脱走?勇者の剣を盗み出しただと。何が起こっている。魂は入ってないはずなのに。まさかタコニチュア本人の魂なのか。まぁいい。所詮はレプリカ、元の力には及ばない」
「次は獣人か。HAHAHAまるで動物園だな。それぞれの族長どもに密偵を送れ、仲違いをしたら崩壊するだろう。それよりも勇者の剣だ。あのタコはまだ見つからないのか。」
「魔女の手帳?こんなもので復活するつもりなのか?使用人たちにここに書かれてる魔法を習得させろ。所詮身寄りのないもの。死んでも構わん。習得させたら、世界各地に封印しろ。僕には見えないが、ほかにも魔法を仕込んでいるみたいだ」
「獣人どもの生き残り?ばかな。世界線をこえた?あのくまの獣人。空間魔法の使い手だったのか。まずいな。いや、チャンスか。やつらを利用して人類の上にたつ。」
「盾の魔法かHAHAHA!大当たりだ。こいつを次の器にする。他の子たちは適当に魔法学校にほおり込んでおけ。ん?」
「おい?」
「誰だお前は」
記憶の中の市長がこちらに手を伸ばす。所詮記憶の中。触れられるわけ。
さっちゃん!!!
グイッと引っ張られる。微かに彼の手がさくらこの髪に触れた。一気に背筋が凍る。
ふりかえるといつかの少女がそこにいた。