はるかぜさくらこ
マツリに迫る魔法少女たちはあやつられている。無下に攻撃するわけにはいかない。
「さくらこ逃げろ」
「魔法少女は、人を傷つけるためにいるんじゃない」
静かにさくらこがいう。
「甘いですわね。ただの兵器ですわ。」
「魔法は誰かを笑顔にするためにあるんだ……。歯ぁ食いしばれ。フィール3、……怒羅棍」
さくらこは怒りの感情を鞘に込める。鞘を媒介にして、赤い魔力の棍棒をつくりだす。
マツリに迫っていた魔法少女たちのあたまをかすめるようギリギリを振り抜く。激しい風圧。だが、何も起こらない。
「空振り?はっ、口では。どうとでも。やはり甘い!」
杖を振るう。違和感が確信に変わる。
「あんたの糸は、殴り消した。」
さくらこは鞘をブンブンと振り回す。
「マツリちゃん、悪いけど、あなたのお母さん攻撃するね。あと、先輩たちをお願い!」
「あ、あぁ。アルファ!ベータ!いくぞ」
横目でさくらこをみる。怒りが伝わってくる。あんなに怒ってるさくらこは見たことない。
「糸が切れたなら、結び直せばいいだけ」
すぐに魔力の糸を伸ばすものの、その場に残る勇者の魔力にあてられて、すぐたち消える。
「マジックブースト」
勇者の魔力が怒りのままに、その場にぶちまける。
「弱体化してるって話じゃ」
次々に糸を伸ばすが、意味がない。
「眠ってろ、フィール0」
一気に力を解放する。鞘のブーストとさくらこ自身の怒りの本流が全ての魔力を消しさる。
「さ、さくらこ」
マツリにはさくらこが、別の何かに変わりそうな危うさを感じていた。
「は、は、はは、ガッハッハッ!!!!ま、まい、だーり、、ん」
「ん?」
「どうしたんですか。父上」
「懐かしい気配を感じてね。まぁ、見てごらんよ。すごいだろ?」
元教頭、元助手、息子を引き連れて、彼らは巨大な魔法石の前に立っていた。
「すげぇな。世界樹の中心にこんなにでかい魔王石があるなんて」
「…ジョシュアさん…気をつけて」
教頭は刀に手をかけていた。
「お、ぉお!?」
1歩進んだジョシュアは一気に魔力を吸い取られる。
「滅魔石??」
「HAHAHA!驚いたかい。こいつはマジブロッサム中の魔力を吸い上げてるのさ!わたしも初めて見たさ」
「いったい、なんのために」
「魔女復活のためさ。魔力を吸い上げ、残りカスのような雑多な魔力を供給し、あたかも、その地が魔力に富んでいるように、見せている。あの女お得意のマジックさ」
「魔女の復活とは?父上。」
「はじまりの魔女 春風桜は、長時間の生命維持を行うため、身体と魔石と、精神を分裂させて、それぞれを保管しているのさ。HAHAHA。数千年かかったが、ようやくありかを突き止めた。」
彼が杖で魔法石をつつくと。魔法石に亀裂が入った。
「いくつかサンプルをとる」
「帰りなさい」
白い存在がいた。
「……早かったな、天使、セクシーだねぇHAHAHA。ぼくはぴくりともこないが」
バルスが乾いた笑いで歓迎する。
「……おい、こいつのつらぁ」
「はるかぜ……さくら、こ、さん?」
教頭と助手は、その一糸まとわぬ、輝くその存在の顔を見て、驚愕する。表情に感情はなく、どこでもない一点をみている。驚く2人は、一瞬の間もなく機械によって飲み込まれる。
「なんだ、このガラクタは」
「単純な物量で、我々は仕留められませんよ」
「父上!」
「あわてなくていい、バロス。勇者の剣をぬきなさい。」
すると、
「……勇者の剣を確認。鑑定します。」
「な、なにが」
「本物。つぎに適合者かを、かんてい、」
言葉が乱れる。
「『滅機石』旧時代のジャミング発生装置。バロス。自分が勇者だと名乗りなさい。」
「お、おれが、勇者だ」
「え、エラー、エラー、所有者は、ハルカゼサクラコ。ハルカゼ、サク、サ、サクラコ」
ジャミングの出力を上げていく。
「対魔最強の天使も、同じ時代の技術なら効くだろうさ!HAHAHA!!」
「俺が、勇者だ!」
「ゆ、ゆ、勇者、と認定、し、し、します」