再会
「面白いな」
少年は勇者の剣をその場で振り回す。型にハマった剣技だが、百花繚乱流とはまた違った流派だ。百花繚乱流の柔らかい剣技とは違う荒々しい剣技。ひとしきり回すと、仲間の白い仮面の仲間たちに見せる。
「ぼっちゃん。剣技も出来るのですね。お見事です」
刀を腰にさげた白仮面が言った。
「この時のために、父上に叩き込まれたからな」
「この金属、なんの鉱石だ。見たことないな。」
白衣を着た白仮面がルーペを使いながら観察する。
「ジョシュアさんでも知らない鉱石となると。わたくしもありませんわ。物凄く重いですわ。よく振り回せましたわね。変身後のわたくしですら、持ち上げるのが精一杯」
「それはさくらこのだ。返せ」
ほかの魔法少女たちと、同様に倒れていたマツリがアルファを飛ばす。
「今は俺のだ」
仮面の魔法少女が飛んできた召喚獣を踏みつけにする。
「何たる恥知らず命を救われておいて。やはり、あなたはライオリアに相応しくないわ」
「なんで、ウチのことがでてくんだよ、誰だあんた。ハナビやキンギョじゃねーよな」
「なぜ助けたんですの?無能な魔法使いまで」
明らかにマツリのほうを見ていう。
「俺たちは、今から勇者になるんだ。正義の味方にならねーとな。それにあの勇者の無能っぷりをみせつけてやるためさ。今からすることも含めて。これで世論は俺たちに傾く」
その時、白衣を着た白仮面が声をかける。
「おい、いくぞ」
手を伸ばした先には、1人の少女がいた。
「アンリ」
「……うん」
「え」
マツリは絶句した。呆然とした彼女に、アンリは一言だけ言った。
「ごめん。行く。さくらこちゃんによろしく」
「まてよ!おい!アンリ!!」
彼女は白い仮面を身につけ、先に進む。
講堂の台座の下には隠し通路があり、螺旋状の階段が下に向かって伸びていた。どうやら世界樹の幹の中心部に近づいている。
「誰だ、そいつ」
「アンリ・ガルダリオン。研究室の仕掛けた諜報員さ。もう、研究室からも出たしな。ちょうどいいし、回収しておく」
「驚きました。ガルダリオンさん。研究室側の人間だったのですか。君は春風さんのお友達では」
「……」
アンリは答えず、ジョシュアが代わりに話し出す。
「もう一人も回収済みだ。互いに誰がモグラか知らないようだが、よく働いてくれた。」
「もう、1人?」
「当然だろ?むしろ、お前のほうがセカンドプランだ。」
「待たせたね。生徒会長、マジカルワサビ」
「あぁ、待ちくだびれだよ。副団長」
第3魔法学校の生徒会長であるマジカルワサビが、地下階段の出口に立っていた。
「首尾は」
「上々。マジカルブラッド。マジカルブルー、マジカルリッチの魔法石は抽出済み。もちろん私のも。これで世界は目覚める。」
「生徒会長、あなたまで……あなたも家族を」
「やぁ、アンリ・ガルダリオン1年生。君の事情は知らないが、私は私の想いでここにいる。魔法少女の時代は終わり、人々は目覚める」
見たまえと彼女が振り返る。
「これが始まりの魔女への扉さ」