最悪の怪人2イカロス
第1魔法学校は、世界樹に場所を移す前から存在している。ワロス市長が、魔法学校を三つに分けるまでは、ガリレオ・A・チェリーブロッサムが校長を務めていた。小屋や校舎、青空の下いついかなる時でも、教鞭をとり続けた。そんな彼女は何時でも、何か大切なものをしまう部屋を用意していた。この世界線では、本堂と呼ばれている講堂にそれを安置していた。
かつては教会として使われていたその建物は、今は教室の一つとして使われている。
「かつては祈りを捧げる場所だったみたいだよ。何を祈っていたんだろうね」
少年は後ろを振り向く。
「勇者の君はボク、イカロスに何に祈りを捧げるのかな。」
「わたしのことはどうなってもいい。みんなを、解放して」
「うーん。無理だよ。これだけ質のいい魔心臓が集まってるんだから。魔王石もあるかもしれないから、じっくり楽しまないと。」
金髪に蒼い瞳の少年はうねる軟体生物の腕を背中から生やして、それぞれの足に、魔法使いたちを捕まえていた。
桜子だけが捕まっておらず、剣を手にしていたが、相手が捕まえないでいてくれただけであった。怪人が楽しむ為に。
「あんたたち怪人はなんでこんな酷いことができるの!魔法を奪うなんて!!みんなが、努力して磨いてきた力なんだよ!」
「ふーん。君ねぇ、仮にも魔法少女やってんだよね。」
「み、見習いだけど、」
「だから、か」
意味ありげな視線で、第1の魔法少女の方を見る。そのまま、触手を突き立てる。
「う、ぐ、く、ぐ。ぐは」
ミキミキと音を立てて、彼女の体内から魔心臓を取り出す。苦しんでいた彼女の腕がだらりとさがる。
「勇者ちゃん。魔心臓を見たことはあったかい?とても綺麗だろ?だけどね」
彼の声のトーンがさがる。
「君たちの使っている魔石にとっっても、似てないかい?」
「え?」
「おい、やめ、ろ」
年長の魔法少女が制しするも、その口を覆われてしまう。
「この地に埋まる魔法石は全て、いままでの世界線の魔法使いたちの成れの果てさ。そして、僕たち怪人は魔法石を使ってつくられた次の人類のプロトタイプなのさ。」
「プロト、タイプ?」
「そうさ。世界樹に魔法使いが集まってくる。死んだものたちの魔心臓は魔法石としてここで回収されていく。魔法石は地中に埋められ、この地の魔力をさらに高める。魔心臓の魔力は生命の危機に際して、輝きを増す。怪人たちが人を襲う理由も分かっただろう」
全ては魔石を集め、魔力を高めるため。
「ここ、世界樹は人類の希望じゃない。魔女による飛んで火に入る夏の虫ってやつさ。でだよ!勇者ちゃん」
さくらこは、呼びかけられる。
「君が現れた。マザーたちに研究室のメンバーは計画を変えざるを得なかった。元々、魔法少女たちの魔心臓を魔王石になるまで育て、次の人類となる怪人を生み出すつもりだったのさ。僕みたいなね!お姉ちゃんの細胞は手に入れた。強い魔心臓も。あとは世界樹との同化だけ」
「世界樹の同化?」
「この世界樹は魔女を天から呼び降ろすための依代なんだよ。僕はそれを乗っ取り、魔女を引きずりおろし、新たな世界の神となる!」