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エピローグ

「空をこじ開ける? あの門を開くのは、そう容易なことじゃない。」


「門を開くには【鍵】が必要だ。タコニチュアが長らく剣を隠していたせいで、二つの世界線が滅んだ。巨人も、獣人たちも、門には辿り着いたが——【鍵】がなかった。だが今は違う。勇者もいる。剣もある。奪い取ればいい。あいつは大したことないって、助手くんも言ってたしな」


そう嘯くと、彼女は笑った。


「春風さくらこが、登録されている。奪っても意味はない。魔女は勇者が倒す。それが決まりだ」


「人を動かす手段は、言葉だけじゃないさ。お前も、身をもって知っているだろ?」


「貴様……!」


「ハッハッハ!! いいねぇ! あの不遜なお前が、そんな顔をするなんて。今日はいい日だ!」


「……正当な手順を踏まなければ、魔女の怒りを買うことになる。最悪、世界樹が破壊されてしまうぞ」


「世界樹がどうなろうと、知ったことか。ハッハッハ! 人類の希望の象徴? 笑わせるな」


「お前は知らないからだ。世界樹は——……神聖な木なんだ。バチが当たるぞ」


彼女は、途中で口をつぐむ。


「ハハハハハ!! 神聖? バカらしい。魔力を吸うだけの、でかい木だ。科学者の私が気にすると思うか? 旧世界線の情報を取り込んでいなければ、とっくに切り倒してるよ」


ふん、と教授は鼻で笑った。


あの不思議な巨大樹——魔力を吸って肥大している。それは分かっている。だが、なぜあの一種だけが異様に成長したのか。子孫もなく、ただ大きく。人類の希望と呼ばれながら、かつて多くの文明を呑み込んだ。いわく付きの神木だ。神など、信じない。


「ともかくだ。海の研究室が潰れた。つまり、今は新たな怪人が作れない。私にとっても——今がラストチャンスってわけだ」


足を踏み鳴らすと、床が沈みスイッチが押された。次々と火器で武装したドローンが出現する。


「……我々と敵対するつもりか?」


「“我々”? 今や組織は一枚岩じゃない。スポンサーは離れ、仮面のやつらが暗躍してる。だから今がチャンスなんだよ。お前という目の上のタンコブが、弱体化してる今がな。怪人と魔法少女は、争う運命なんだよ」


——交渉、決裂だな。


ガリレオはため息をついた。


教授がすぐに反応し、銃を放つ。テーブル上の杖は、粘着質の液に絡め取られる。だが焦らず、もう一本の杖を袖から抜き出すと、教授に向けて振るう。魔力が光のように収束し、教授の手足を縛りつけた。バランスを崩し、倒れる教授。


「……一度、受精卵まで戻してやるよ。果実魔法フルーツ時空タル——」


「助手くん! 25の67!」


「あいよ!」


突如、校長の足元のタイルが砕ける。中には、小さく振動する黒い石がぎっしりと詰まっていた。その効力が発動し、魔法陣が霧散する。


銃口が、額に押しつけられる。


「……滅魔石か」


校長が苦々しく呟く。


「初歩の初歩だぜ。驚いたよ、花魔法フラワーより上があるなんて」


「私が開発者だぞ。種魔法は木の表面、葉は枝、花は幹——魔力を借りる箇所が違う。私だって驚いたよ。こんなにも滅魔石を所有して、しかもオンオフ制御可能とはな」


「研究と努力の賜物さ。今までの世界線じゃ、滅魔石なんて大した扱いじゃなかった。でも魔法社会じゃ——致命的だろ? あんたの魔法、どこから借りてるんだ?」


「そんなこと知ってどうする」


「さぁな。でも——今さら知ったところで、意味もないか」


「助手くん。私の右ポケットからスイッチを取り出してくれ」


白衣の内ポケットからスイッチを取り出す助手くん。


「奴を解放して、そのまま天まで——おい、助手くん。私の拘束も解け。私のタイルは25の11だ」


「ソウルアーツ・闇衣ダークメイル」「裏百花繚乱流・竹風愚死たけぐし

「ぬ?」


教授は自らの胸からしたたる血に、驚いた。黒い煙が助手くんの手から伸び、胸を貫いていた。


「じょ、しゅ、くん……?」


「ハハハハ!!」


「ごふっ……!」


同時に校長の口からも血が溢れる。


「校長先生、無理は禁物ですよ」


——傍らに、音もなく教頭が立っていた。刀を手にし、校長の胸を突き刺している。普段のオドオドした様子は、微塵もない。


「ったく、教頭先生よ。手が早いっての」


「あなたこそ、人のこと言えないでしょう。“黒煙”さん」


「ふん。世界のツートップが、滅魔石で魔法を封じられ、手足を縛られてるなんて。こんなチャンス、滅多にない。これは——いただいてくぜ」


「貴様ら……!」


二人は仮面を取り出し、顔に装着する。


「やっぱりな。あんたが持ってたか……そのスイッチ。いくら探しても、ラボにはなかったはずだ」


「それが何だというのですか。黒煙さん」


「“あいつ”の封印を解除するための——構築魔術式さ」


彼は工具を取り出し、細工を始める。


「……助手くん。何をする、つもりだ」


「心配なさらず。教授。封印はちゃんと解きます。ただし——転送先を変えたいだけです」


教頭は襟を正し、助手はタバコに火をつける。


「「非常に長くお世話になりました。こっから先の世界は我々がいただきます」」

そう言い残し2人は脱出し、ラボは爆破される。


「さて、帰ろうか、団長がお待ちだ。」

「計画は順調ですね。次の一手は?」

「第1魔法学校にいる。春風さくらこ。やつとやつの剣を奪う。」


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