教授と学長
ガリレオはトレードマークの古い山高帽子をテーブルの上に置き、杖は手元に置く。教授はフラスコの中をガラス棒でくるくると回す。
「茶でも飲むか?コーヒーがいいか?」
「コーヒーをもらおうか。今の世界線じゃ貴重品だからな」
フラスコを羽根のついた機械が運んでくる。
「いいのか?ガリレオ。研究室の私と密会してて」
「構わねーよ。お前もスパイを通じてだいたいのことは知ってんだろ?」
「なるほど、検討は着いているわけだ」
「ああ。ベアーズが教えてくれた。」
「あの熊さんはいつも邪魔をしてくれて。……?今も野放しなのはなんでだ?」
「ここに乗り込めた」
「あぁ、なるほど。念波をたどったか」
彼女はモニターを切り替える。研究員や怪人が軒並み倒れている。
「魔力の反応も一瞬。警報も鳴らさずここに至るその術は見事だね。この様子だと保有していたランカーも全滅か」
「殺してはいない。あと10分もすれば起きるだろうさ」
コーヒーを口にふくむ。
「にげぇ」
「くくく。おこちゃま舌なのは相変わらずだな。何しに来た。」
「共同戦線といかねーか?」
「なに?」
「マザーが作った怪人。うちの盾魔法と魔法少女取り込んじまって手が付けられねぇ」
「預かり知らぬところだな。次の世界線はイカの世界線にでもするか」
「次があると思うか?」
「なに?」
「現在の世界線は90パーセント越え、こんな奇跡は久しぶりだ。だが、あたしの身体は次の世界線への移行には耐えられない」
「……身体のストックは十分あるだろ」
「魂の限界さ。クローンであるお前も、体の異変に気づいているはずだ。マザーや助手たちが制御できてないんだろ。あの怪人はわたしたちに任された領分を超えている」
「『科学と魔法で下支えしてくれ。あの世界線を取り戻すために』か」
「姐さんの望んだ世界線まであと一歩なんだ。ちからを貸してくれ。姉妹よ」
「………………断る」
「…………なぜ」
「あたしはよぉ、あんたや、はじまりの魔女 春風 桜のいた世界に興味がある。いまよりはるかに進んだ科学技術。不老や惑星間飛行を可能とした技術に。なぁ、ガリレオ・A・チェリーブロッサム。いや、春風杏子」
「……お前、どこで、それを」
彼女の手には姉妹と思われる2人の学生の姿の画像データがあった。
「数千年時間があったんだ。調べもするさ。天才気取りの凡人さん。あたしが盲目的なペットとでも思ったか」
「くっ」
「私にあるのは科学だけだ。科学、科学、科学!なー。杏子ちゃんよ。お前を殺せば、だーいすきなお姉様は、あたしを妹にしてくれるのか?」
教授は手を挙げた。銃が壁から生えてきて、ガリレオを狙う。彼女もすぐに魔法陣を展開する。
「ほらな。信用されてねー。」
「お前はあたしのクローンだ。だが、何を考えてるかは分からない」
「良かったぜ。じゃあ最後に教えておいてやる。あの怪人を使って。魔女のいる宇宙をこじ開ける」