賭け試合3
「まだ、ま、だああ!」
「……その歳での魔装は、驚いたよ。」
全身に残る火傷や、感電した痺れを振り切り立ち上がろうとするアンリをハナビは叩き伏せる。
「あとは、お前だけだな」
雷鳴とともに歩きだすハナビ。マツリは後ずさりする。アンリもさくらこもやられてしまった。あたしなんかが、適うわけない。
「大丈夫。怖がるな。昔より優しくしてやっから」
ハナビはマツリに微笑みかける。たしかに3年前みたいな乱暴さは見られない。
「大事に飼ってやる」
「う、」
寒気が止まらない。昔のトラウマが、心にしまったはずの闇が吹き出してくる。悪意は無い。純粋な気持ちで言ってるのが不気味だ。外の世界に触れて、家の異常さに気づいた。昔は耐えられた。それが普通だったと思い込んでいたからだ。
「く、来るな」
だが、今は。無理だ。もう無理だ。心が折れてる。
「姉ちゃん悲しいぞ。そんなに、子犬みたいに震えてからよー。ま。しゃあなしか」
バチをさくらこに向ける。雷鳴が鳴り、ハナビはニヤリと笑う。
「ま、まってくれ」
「あたしの信条には反するが。家に帰れ。じゃなきゃ。あいつ、撃ち抜く。5ーぉ・4ーん・3ーん」
さくらこは意識がない。あんな状態じゃ!まともにこの出力の電撃を浴びたら、死んでしまう。
「あ、あたしが家に帰れば、」
「2・1。ゼー……」
冗談ではない。本気だ。
「帰る!帰ります」
「おぅ!素直に言えばいいんだよ!ハッハッハ。はぁ……『雷神具』」
雷撃が放たれる。なん、で……。
「別に止めるなんて言ってねーぞ。家に帰ればどうせ、友人とは会えねーだろ。邪魔だろ?姉ちゃんが、片付けてやるよ。無駄な借金も死んだ後の保証金から、払えばいいだろ」
は?こいつ、何言ってんだ。容赦なく電撃が走る。
「ち、くしょ、う!!間に合ええ!アルファあああ!」
手を伸ばす。手を伸ばしたからといって。変わるわけじゃない。だけど。
「助けて!!」
発せられた先はハナビではない。
「おきて、起きてって!もしもーし、………えい!」
「ぎゃあああああ」
悲鳴があがる。さくらこはのたうちまわる。
「だだだだれ!わたしのおしりにカンチョーなんてするのは!乙女のケツになにしてくれとんじゃあ!
!」
さくらこは振り返ると。1人の女の子がたっていた。
「あはははは!あはははは!」
楽しそうに笑う女の子。
「ゆ、指を抜け」
「……」
「なんで黙って」
「えい!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
さらに押し込みやがった。
あれ、ここは、どこ?
「さーちゃん、こんにちは!」
「さ、さーちゃん?!」
「さくらこだからさーちゃんだよ。いいあだ名でしょ!あはは!」
「ど、どうも、あ、あなたは?」
「ひ、み、つ♡封印されし夢の中のよーせいさんって思ってて、そんなことよりさーちゃん助けてくれる?」
なんかかっこいい2つ名みたいなのがついてるんだけど。ここは夢なのか。
目の前にドサッとごちゃごちゃにまとめられた服を出された。
「うへぇ、よくこんなに洗濯物溜め込んだわね」
「大変だったんだよ。しんどかったんだろうよ。整理するのたすけてよさーちゃん」
何故か他人行儀だ、仕方ない手伝うか。一人暮らしと寮生活でこの手の家事はかなり得意だ。
「よっしゃ!片付いた!」
「おぉー!」
洗濯物は綺麗に分けられて、畳まれた。それらをよーせいさんは風呂敷に包む。
「あの子の本来の力だよ。渡しておいで。バラバラになった心をひとつにしてあげるんだ」
指を指す先には、マツリちゃんの姿が
「あなたはいったい。」
「頼まれちゃってね。おじさんに。さくらこちゃんが、その鞘桜吹雪を手に入れてくれたおかげかな。今までよりもさらに近づいてる。まだ、臨死体験するくらいに、命の危機が迫らないといけないけど。早くわたしを見つけてね。こんなに近くにいるんだから。魔法少女の勇者さん!君の魔法は人の心を導く力があるんだから」