食堂1
「今いるのがグランドから入った北校舎の地下1階だ。世界樹の幹の中だから、地下という表現は正しいかはわからんが。まぁ、食堂に向かいながら話をしよう」
先生のあとをついて3人は、保健室を出た。魔法の照明がついていて中は明るい。
「魔法の事故は命や今後の人生を左右するような事件も起こりやすい。今はいないが、ここのポーラー養護教諭は凄腕だ。大抵の魔法傷は治せる。春風さくらこ。お前の魔力欠乏症も彼女が治療した」
今度お礼をいわないとな。
「彼女はわたしよりも早くこの【鳥の巣】にきた。美しく、理知に富んでいる。肉が好きだ。少し荒々しいが、そこが、どうも。いや、ごほん。失礼した。」
彼はきまずそうに咳払いをした。
「校舎の作りは簡単だ。職員室や特別教室のある北校舎。1年生の西校舎、2年生の南校舎、3年生の東校舎だ。太陽光がそそぐ屋上は、それぞれ、食堂、魔法農園、魔法牧場、テラスになっている。養蜂場もあり、蜂蜜もうまい。今いる地下は保健室以外にも体育館やプールなどいくつか部屋がある。」
さくらこたちは、ベアーズ教諭の後ろをついて行く。木の内部を歩くなんて初体験でワクワクした。壁に手をあてると、ヤスリがかけられているのかゴツゴツした断面は滑らかな手触りだった。
「お前たちが保健室で寝ている間に、ある程度のオリエンテーションは終わってしまったからな。わたしが説明する。授業は基本科目と魔法科目があり、それぞれの科目で試験を受け、単位をとってもらう。単位が決まった量にならなければ留年だ。3年間で卒業を目指せ。魔法科目は留年は許されないから注意しろ。試験結果は全てデータベースと杖に記録され、今後の進路にも影響している。」
「ふーん、こいつがねぇ。あたしは、杖なんざいらないけどな。なー、アルファ、ベータ」
ロック先生は杖をぶんぶんと振り回すマツリに眉をひそめた。
「わたしたちの教室は西校舎。ですね。えっ、と、ロックせ、先生」
「アンリ=ガルダリオン。そのとおりだ。ロック先生と呼んでくれてありがとう。他の者は、そのように呼んでくれない。……マツリ・ライオリア。杖をしまっとけ。お前たちに貸与している杖が財布替わりだ。ポイント制でな。毎月小遣いとあと授業で良い成績をだすとボーナスが出る。親たちの仕送りもポイントに変換されて、付与される。無くしたり、壊したりしても、再発行はない。食堂の飯は各種アレルギーや宗教上や体質上食っちゃならないものあたりもある程度配慮可能でいたせり尽くせりだ」
幹の中を歩いていくと美しい木目の螺旋階段があらわれた。そこを登っていく。しだいに学生たちの声が大きくなっていく。
「あ、くま先生こんにちは」
「お、くまちゃん先生。やっほー」
「こないだの授業のレポート提出おくれます。すんませんくま先生」
彼らに手を振り挨拶を返すも、ボソッと呟く。
「……だれも、本名で呼んでくれんのだ」
「あははは……あ、愛されてますね」
「とりあえず腹が減ったろ。今日は午前で終わりだ。明日は8時半からHRだ。おれは、職員室に戻る」
「待ってよ、くまちゃ、、ロック先生。あたし金なんかねーぞ」
ギロリとした目つきにまつりは冷や汗をかく。
「わたしも」
「……わたしも」
3人のしょんぼりした顔にロック先生はため息をついた。
「………ふぅ。3人とも杖をだせ」
ロック先生は、まわりを見渡し、身をかがめて、小声でささやくように杖に向かって言った。
「新入生オリエンテーションで、春風さくらこ、アンリ=ガルダリオン、マツリ・ライオリア3名は熱心に話を聞いていた。よってベアーズ・ロックの個人ポイントからそれぞれに800ブロッサム譲渡する。」
そして、彼は杖を返して言った。
「……このことは内緒だからな。明日から頑張れよ。」
そういうとロック先生はノシノシと歩いていった。