賭け試合1
さくらこたちを会場に連れて行ったあと、個室でオーナーと取り巻きは話していた。
「良かったんですか?あいつら勝てるわけないでしょ。ライオリアの二本柱ですよ」
「かまやしないさ。俺たちは興行のほうで稼がせてもらう。話題性は十分だからな。あいつらが勝とうが負けようが、チケットが売れればこちらの損はない」
「さすがオーナー」
「ここは実力主義だ。弱肉強食の世界だからな。せいぜい稼がせてもらう」
「で、オーナーはアイツらにかけるんですか?」
「バカ言うな。オッズはまだ分からないが、ドブに金捨てる馬鹿なんざいねーだろ」
「あと、オーナー。ニャルゴの奴責任とって辞めるって給料はあいつらの借金にあててくれって。」
若い獣人がへらへら笑いながら話した。僅かな黒服たちはオーナーのまとう空気が変わったのを感じたが、彼は気づかない。
「お前、それで金を払わずのこのこ報告に来たのか?」
「え、あ、はい。ピンハネしちゃいましょーよ」
「馬鹿野郎!ちゃんと給料払いやがれ」
オーナーは部下に言い放つ。
「働いたやつには、相応の対価を。だ。にゃるごにも言っとけ。あいつらの無知でこうなってんだ。言葉も知らず、節度を知らず、金勘定も知らず。てめぇ都合で自爆しただけだ。それでも、そいつら助けたいなら、その金で奴らにベットしなってな」
オーナーは葉巻に火をつける。
「恩人である旦那に教わったことだ。対価は払う。働いてるもんには敬意を払えってな」
その言葉に古株のヒョウの獣人は頷く。
「なんでチャチャッと売らなかったんで?あの状況なら羽交い締めにして売ってしまえば、大金が」
若い獣人がそういうと、ヒョウの獣人は、そいつを組み伏せた。
「な、なに、を」
「あんたも売り飛ばそうか?どれだけつらく、惨めな想いをするか知らないから、そんなセリフをはけるんだ」
「す、すんません」
オーナーが手を上げると、ヒョウは彼を離した。
「獣魔戦争で負け、奴隷同然になった捕虜の俺たちに住処と生きるチャンスをくれた。特に俺たち肉食の獣人の扱いは酷かった。戦争を思い出すってな。旦那には、恩義がある。あの時勢で、獣人を庇うのは、大変だったはずだ。事実旦那は名家だった家を追い出されたらしい。ベアーズが提唱した獣人の人権の保障なんて、守ろうとする奴は少ししかいなかった。旦那は言った。『いいか。お前たち。店の中では、お前らと俺はパートナーだ。対等だ。気づいたことはなんでも言いな。一緒にいい店つくろうぜ!いい店作れば、必ず評価する奴が出てくる。そうすりゃ風向きも変わってくらあ!獣人だろうが関係ない。自分を安く見つもんなって。チャンスは誰にでも降りてくる。掴むか掴まないかはてめぇ次第さ』ってな。」
煙を吐き出し、闘技場に入った3人を見据える。
「俺はチャンスを与えた。仲間思いの奴は嫌いじゃねー。が、口先ならなんとでも言える。」
旦那はライオリアから追い出された。俺はあの女が嫌いだ。その娘たち。見極めさせてもらうぞ。オーナーは、注視する。
「ご来場の皆様。バトルコロシアムへようこそ!今日の試合は飛び入り企画当ホテルレストラン街のにゃんにゃんカフェテリア主催です。第二魔法学校のエース、ライオリア・ハナビと第三魔法学校の秘蔵っ子ライオリア・マツリというライオリア姉妹の戦い!!すでにチケット価格はうなぎのぼり!!」
「ハナビ氏側は、3対1の今回の戦いを快諾しました」
「試合形式は、ライフポイント形式。致命的なダメージを3回負ったと見なされた時点で敗北となります!!」
「ハナビ氏は3点、相手側は9点持ち点があります」
「これだけの不利な中、それでもオッズは、1.1対1380倍と凄いレートになりました。会場にきたほとんどの方がハナビ氏にベットしたようです。彼女は50人抜きもした事もある、コロシアムの猛者です!楽しみになってまいりました。試合開始は間もなくです!!」