第二魔法学校の魔法少女
校舎に入ると中の騒々しさはさらに高まり、客を呼ぶ声がひっきりなしに響く。
「うちは将来的には、外に出て商売をしようと考えているものも多い。いまのうちに金を貯めておきたいのさ。だから授業も24時間体制で組まれている!カリキュラムは自分で組むのさ!」
ハナビは騒々しいなかでも聞こえるように念話で皆に話をする。
「三校合同授業の目的は、学生の魔法力の底上げと、新しい魔法少女の選定だ!」
ザワザワと声がする。
「現在10名の魔法少女がこの魔法都市マジブロッサムを守り、魔女との戦いに備えている。先日第三魔法学校が襲われ、あのワルス家の船も沈められた。近々魔女が目覚めるのでは無いかともっぱらの噂だ。」
不安に苛まれ皆が固唾を飲んで見つめるなか、彼女は続ける。
「さらなる危機に立ち向かうため、新たに魔法少女をつのる。また男子諸君はあたらしく市長が新設される魔法騎士を目指してもらう。」
男子たちにもザワザワした空気が伝わる。
「3校の試練を超えて、枠に入れるのは、5人。奮闘を祈る」
「痛っ」
士気があがるなか、ふいに、1人が声をあげる。彼女は頭に当たった何かをひろいあげる。
「……お金?」
するとジャラジャラとお金が頭の上に落ちてきたのである。
「ほいほいほーい!ちゅうもーく!ハナビィ!ご苦労やったな!」
「姉さん?!」
急に現れた彼女にハナビ驚く。
「こっから引き継ぐさかい、お前は校長のとこへ行きな。みんなー、うちが第二魔法学校、現在唯一の魔法少女。キンギョ=ライオリア!や!!ごっつ覚えといてな」
ライオリア?あの人もマツリちゃんの姉妹なのかな。きらびやかな金色の衣装。動きやすい短パンスタイル。背は低く幼く見える。クセのある喋り方に少し戸惑う。
「今回先に合格基準を教えたる。授業をうけて1週間後までに、うちが教える魔法を上手く使いこなしたもんが合格や。おい、やれ」
彼女は魔法玉を全員に配らせる。なかは金色に輝いており、周りの皆は自分の杖の魔法玉に合わせる。すると、なかの金色が、魔法玉に移動したのだ。
「いっくで〜!花魔法バリュー!」
パスン。彼女が高々とあげた杖から空気の抜けるような音がした。
「ん?」
何も起きない。
「こっからがおもろいねん!五百ブロッサムつこうて!バリュー!」
コインを取り出して、魔法を唱えると、コインが焼き切れ今度は光線が放たれた。さらに札束を取り出す。
「こっちは1000ブロッサム!バリュー!」
さらに輝きと太さを増した光線が放たれた。
「価値が高まれば高まるほど威力を増す魔法。バリュー。まだまだ研究中やけど、威力は保証すんで。この魔法をつこうてこの岩を貫いたらええ。今後の魔女や怪人との戦いのためにもな」
彼女が指を鳴らし巨大な岩を召喚する。
「今回志願者、推薦者、合わせて、128名。通過すんのは、50名ほどかな。がんばるんやで!」
「ど、どうやって金を稼ぐんだよ。おれたちは授業を受けに来たんだ。つまらない商売してる場合じゃねーんだよ」
「授業を受けながら準備するに決まってんだろアホ。」
「アホだと?!」
「その小さな脳みそで考えや!商売バカにすんのも許さへんで!なんでもかんでも聞いてるだけじゃだめや!さっ行った、行った!授業がはじまんで」
キンギョは、皆を急かすなかで、マツリと目が合う。
「ふーん、生きとったんやな、われ」
「キンギョ姉さん」
さくらこに緊張が伝わってくる。少し震えている。
「ライオリアの恥さらしが」
「マツリちゃんは恥さらしなんかじゃ」
「なんや?なんや?」
彼女の周りにコインが浮く。
「あたしに逆らうか。ええ根性してんの?」
「やめろさくらこ。キンギョ姉さん。心配かけてしまい、すみませ」
その言葉を手を振り遮る。
「やめぇや、水臭い。」
彼女は優しい笑顔を向ける。
「うちのもん、だーれも探さへんかった。この瞬間までなぁ。みすぼらしい服を着て、他人の杖借りて、野垂れ死んだら良かったのに。だっさいわぁ、せいぜいライオリア家の人間だと、思われんでな。迷惑や」
「なんで、そんなひどいことを!」
さくらこも、アンリも憤りを感じた。だが、
「やめろ!姉さん失礼します」
マツリが、あぁ、言った以上。手を出せない。渋々3人は引きさがった。
三人が去ったあと、ハナビが戻ってきた。
「キンギョ姉。今日はあたしの担当では?」
「勇者が見たくてなぁ。堪忍な」
「マツリは試験をクリア出来ますかね」
「マツリって誰や?はよ行くで。ワルス家の勢いが弱い今がチャンスや。この期に乗じて優秀なやつの青田買いや!」
ハナビは床に散らばるコインに目を向ける。御三家の家紋が入ってる。ライオリア家、ワルス家、ブロッサム家。なかでもライオリア家は野心家で有名だ。そうなった一端はキンギョ=ライオリアの存在もある。父や母同様に力なきものに価値はないと考えている。キンギョは力を認められ入ってきた養子だ。子供の頃より野心家で、マツリに対してのあたりはキツく、実子であるマツリよりも愛された。彼女にとってマツリは邪魔な存在なのである。
「……負けんなよ、マツリたん」