新たなる杖2
ミナト先輩の悩みってなんだろうか。
「ん?すまんさくらこ、席を外す。念話が来たみたいだ。」
「はい。」
さくらこは机の上には、写真が飾られており、森の人らしき、木が並んでいる写真。魚人や獣人、巨人など、様々な種族がならんでいる。皆笑顔で杖を持っている。その写真の1番奥、かといって手入れはされてない訳では無く、むしろ1番小綺麗な写真立てに1人の女性がいた。彼女は白衣を来ていて、手のひらの上には小さな木の枝が乗っていた。屈託のない笑顔。どこかしら、何か不思議な懐かしい感じがする。
「何をしている。」
「え、えっ、と、たくさんのお客さんがいたんですね。」
「そうだね。我々はたくさんの杖を産み。たくさん届けた。はい。さくらのこよ。君の杖だ」
森の人が渡してくれた鞘は、桜色に線が入っており、印象をだいぶ変えていた。荒波に見えていた模様も春風のように穏やかなものに感じた。中心にはさくらこの魔法石がはめられており、中で魔法が渦巻いていた。
「桜紋 華吹雪。君の名前の元になった木の名前さ。昔はたくさんいたんだが、いまは、ただ1本だけ」
彼は天井を見上げる。想いをはせる数秒。森の人は穏やかに言った。
「魔法石の魔法は、今までみたいに勇者魔法の影響を受けないように、鞘の表面に魔法を流しなさい。その桜の紋には、我々の魔法が流れている。君の魔法を後押ししてくれる。そうすれば、君の魔法は普通の魔法に匹敵するレベルで使えるだろう。腰紐も付けておいた。」
「あ、ありがとうございます」
さくらこは勇者の剣を鞘に収める。元からそうであったようにしっくり来る。さくらこはそれを腰にさげた。
「とてもにあっているよ。」
「ありがとうございます!」
さくらこの笑顔を見て満足そうに椅子に座った。
「行きなさい。君に世界樹の加護がありますように」
「あなたにも!」
さくらこの一言に少し驚いたが頭の花がぽぽぽんと咲いた。さくらこたちを見送り、森の人は店の椅子に腰掛けた。彼は店内の夥しい数の杖を見上げる。
「さくら。巡るめく世界で君との想い出だけは色褪せない。」
先程までさくらこが見ていた写真を持ち上げ、見つめる。
「君の意思はきちんと受け継がれてるようだよ」
「あ、すまねー。さくらこ今すぐに戻らないといけない」
「どうしたんです?」
「どうやら揉め事が怒っちまったようでな。おまえの友達が原因みたいだぜ?あのオレンジ髪のほうの」
「マツリちゃんが?!」
さくらこは時計台に急ぐ。
「おいおい!マツリちゃんよぉ!その態度はないんじゃねーか?」
「あ?姉貴こそなんでこんなとこにいんだよ!」
「部長落ち着いて!」「マツリ、ウチ恥ずかしい」
何やら人だかりができていた。
「あ、ようやく来たよ。何とかしてくれない?わたし、処しちゃいそう」
ルイズが駆け寄ってきた。格闘の後がみえる。
「よーしよしよし!よく我慢した偉いぞ」
大型犬を褒めるかのようにミナト先輩がわしゃわしゃとなでる。
「ま、マツリちゃん、どうしたの」
何やらマツリちゃんが、絡まれていた。マツリちゃんも身長が高いが、絡んでる相手はさらに大きい。
2mはあろうかという女性がしきりに頬ずりしている。マツリも振りはなそうとしているが、万力の如く抱きしめられ、離れることが出来ない。
「せっかくいい気分だったのによ!この馬鹿姉貴のせいで」
「よぉ!冷たいな!3年ぶりのお姉ちゃんだぞ!もっと抱きしめさせろ!!桜髪の女!あたしはハナビ=ライオリア!妹が世話になってるみたいだな!」
カッカッカッと笑う彼女にさくらこはあっけに取られてしまった。
「あの嫌がっている、みたいなんですけど」
「ん?いや!照れ隠しだろう!ツンデレだ!ツンデレ!これから、うちに帰って!抱きしめて、舐めて、嗅いで、堪能して、服を着せ替えて!吸うんだ!」
「くそ姉貴いい」
「あ、そうだ!おまえもどうだ?」
さくらこの方を見て、手を伸ばす。どうだ?どうだって何を?!!!
「2人同時に可愛がってやるぜ?」
わ、わたしも?!