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病室にて

さくらこは病院にいた。世界樹の中央の幹にある大魔法病院。魔力の流れが強い場所であり、魔法による怪我や病はここで治療するのが一番良いと言われるからだ。

「改めてお礼を言うよ。春風さくらこくん!HAHAHA!私の息子が返ってきた。ガリレオ!優秀だな。君のところの生徒は。まさか、クラーケンとは、懐かしいな。あんな化け物イカ、そうそう出会うまい」

アロハシャツのおじさんが豪快に笑う。病室には、さくらこと、ワルス市長、治療のため眠りについている副会長、そして、校長がいた。

「キミの次男は学校に復帰するのか。約束どおり」

「約束?」

「長男が帰ってきたら、次男は復帰させるはずでは?」

「無事に返ってきたら、な。魔法石がない。完品じゃない。君は欠品に代金を払うのかね?HAHAHA。ナンセンスさ」

「なっ!」

さっきから言い方全てが、ひとをモノ扱いにしているようで、フツフツと込み上げるものがあった。それに約束は?死ぬ思いをして、やっと。しかし、校長は手を出して、さくらこを制した。

「……今回の件被害はともかく、無事に救出できたんだ。大大的に報じれば、この町の信頼に繋がるぞ。怪人にさらわれても、必ず助け出しますと。海外からの支援も受け入れられるはずだ。」

「……ふむ」

「ここにいる少女は今回の立役者だ」

まじまじとさくらこを見つめる。サングラスをずらしたその瞳は透明で、目があわない。吸い込まれそうな虚ろな瞳。

「フラワーも、マジックブーストも、ソウルアーツも、神化真解も、習得してないこの子がねぇ。ニワカには信じられないな。」

「だが、事実だ。彼は君のところのボロスを助けるために命をかけた。」

「人聞きが悪いな。大事な息子を熱心に教育するのは当然だろ?」

「ボロス……君はいまどこに」

「家で修行しているよ。りっぱな跡取りにするために」

「副会長は」

「これはダメだ。魔法石がない。ワルスの当主には、なり得ない。もう縁は切った他人だ」

あっさりと言った。さくらこは歯噛みし、杖を取り出した。

「おい、春風!」

「なんの真似だい?HAHAHA!折れた杖で」

さくらこの杖はポッキリと折れていた。

「あ、え、っと、そ、それなら、これを直してもらえないですか?あなたの息子さんを助けるために折れてしまったんです。学校では杖の支給は1回きりだって」

昨日たまたま折れてしまっただけだが。彼は杖を観察して笑った。

「HAHAHA!それならお安い御用さ。どうやら、魔石は無事なようだから大丈夫だろ。君はお転婆さんだな。普通杖を折るなんてことはありえないからね。よっぽど大きなエネルギーが流れないと。クラーケンとの戦いで魔力が逆流でもしたのかな」

さらさらと紙に一筆書いて、さくらこに渡した。読めない。だけど、どこかで見たことのある様な文字だ。

「最高級品でも買えるよ。学校に帰る前に世界樹街道ストリートにでも行きなさい。我が町の名所のひとつだ。昔はよく行っ……た。」

ワルス市長は頭を抑えて、すこしふらつく。

「すまない。体調が優れなくてね。今日は帰るよ」

彼が出ていったあと校長はため息をついた。

「馬鹿か。お前、壁のシミになりかけたぞ!」

「なんか様子がおかしかったですね。」

「アイツがおかしいのはいつものことだ。あの野郎。息子をなんだと」


「……器。僕たちはワルスの器だそうですよ」

静かに副会長は言った。

「お前起きて……」

「……父上の反応は当然。ワルスは力の繋がり。継承者が弱いことはありえない。世界樹を守るためにも。……ボロスが次の器に選ばれたのか。」

ぼぅっとした表情で呟いた。

「あ、あの、」

「あぁ、あらためてお礼を言うよ。ありがとう。春風くん。僕の命の恩人だ。弟から、話は聞いていたけど。想像とはちがった子だね」

「あ、あいつが、なんて」

超絶美人でスマイル素敵な魅力的な女の子とか言っていたら、どうしよう。バンバンと机を叩くさくらこ。

「いけ好かないクソ女」

よし、叩き折ろう。

「ワルス家と張り合おうという気骨のあるやつはすくないからね。僕なんか喧嘩らしい喧嘩をしたことがないよ。改めて感謝する。」

「は、はぁ」

う~ん。素直によろこべない。

「僕にできることは何でも協力するよ。」

「ま、まずは身体を治してください」

「ははは。そうだね。校長先生もありがとうございます」

「お前のことはわたしが後見人になるから、心配すんな。いまはしっかり休め。」

そう言った校長先生は、さくらこと病室を後にした。

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