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アロハのおじさん

小脇に抱えられ校長室を後にする市長。連れていかれるワルス。額から血を流している。

「待って」

さくらこは秘密の部屋を飛び出した。

「おいさくらこ」

制止する声を後ろに、さくらこはおじさんの後ろから声をかける。

「アロハのお、おじさん。ワルス、君、をどこに連れていくんですか?頭から血が出てる!医務室に行かないと!」

アロハシャツのおじさんはゆっくりと振り向く。初めは不思議そうな顔をしていたが、彼はにかっと笑い。

「HAHAHA!またあったね!こいつが寮で滑って転んだらしくてな。いまから病院に行くところなんだ!大事な1人息子なんだ」

「学校にも保健室の先生がいますよ!」

「うん!だけど、わたしの大事な一人息子なんだ。万全を期すために、わたしの直属の医師に見せたくてねー。」

「え、えっと」

引き止めるのは不自然だ。

「また、会えますよね。ワルス君と」

彼のことは良くは思っていない。だけど、先ほどの彼の表情が脳裏にこびり付いて離れない。

「……君は息子のなんだ?」

この人の笑顔は空っぽだ。感情がない張り付いた笑顔でこちらを観察している。怖い怖い怖い怖い怖い怖い!友達、ではない。嫌がらせしてきたし。クマ先生や友達、私を侮辱した。でも。このまま行かせる訳には。知り合いだと、理由としては弱い、か。だったら

「ラ、ライバルです!!!いつか、彼を倒します。」

あ、いや、倒しちゃダメか。何言ってんだわたし。

「ライバル?」

張り付いていた笑顔が解け真顔で凝視する市長。

「コレにライバル。君みたいなのが」

「はい」

桜子の瞳には怒りが写っていた。

「君が何にそんなにたくさん怒っているのかをわからないが、力がない人間が何を言っても現実は覆らないよ。君自身がそんなに弱いのに。ただ叫ぶだけでは誰も救えない。言いたいことがあるのなら成果を出していいたまえ。またね。ライバルのおじょーちゃん」

「さよなら、アロハのおじさん」

彼の背中を見ながらさくらこは歯噛みした。


「おいおいさくらこどうしちゃったんだよ。お前あいつのこと好きじゃないんじゃないか?」


「そんなんじゃないんだよ。家族はそうであるべきではないんだよ。あったかいもんなんだよ。」


「さくらこ?」


「ミナト先輩私お兄さんを探してくる。」


「おい、春風もどれ」

「……」

さくらこは無言で頭を下げ、かけだした。







市長は転移の魔法を2度使い、馬車止めの施設に向かう。遠い昔に切り落とされた広い幹の上だ。

空中に浮かぶ馬車、翼の生えた馬がそれを引いている。

「春風……ね。まさか、その名を聞くとは。」

彼は息子を雑に投げ込み、しばらくして異変に気づく。馬車が急に止まり動かない。

「HAHAHA大丈夫かい?」


「ガセかと思えばほんとにいやがる。あんな公共の場で護衛もつけずにどこに行かれるので、市長。参観日ですか」

杖を構えた青年が現れる。フードとマスクで顔をかくしている。

「HAHAHAなんで僕よりも弱い人間に護衛してもらわなければならないんだ。君だれ?」

「あんたに恨みを持つ人間の1人さぁ。杖は使うなよ。お前の息子が消しとぶぞ」

「それは困る。あと1個しかない」

「1個?何を言って。馬鹿なのか?人間は1人2人って数えるんだぜ。なぁ、やっちまえ」

目の前にいたはずの中年の男はその姿を消した。

襲撃者は無線を手に取り状況を確認する。ターゲットはどこに行った?

「お前はもう狙撃したのか。」

無線で呼びかける。無線から聞こえてきた声は先ほど話していた男とそっくりだった。

「君は声をかけるべきではなかったんだ。やっちまえなんて、そんなことを言ったら、複数敵がいるに決まってるじゃないか。奇襲の意味が無い。時間稼ぎのつもりだったらもう少し別の方法を考えるべきだったね。HAHAHA無能な指揮官は味方を殺すんだよ。マジでさぁ」

無線の先から聞こえてきたのは、先程まで話していた男の声だった。

「なんでそこにいるんだ。そこはここから1キロ以上離れた場所なんだぞ。おい!ミラは!ジャックは!無事なんだろうな!!」

「無事なわけないじゃないか。ちゃんと殺してるよ。」

「てめえ!化け物め」



人を化け物扱いするなんてひどいじゃないか。こんなにも人間なのに





その声は男の後ろから聞こえた。吐息を感じるほど近くに奥歯がカチカチとなる音が響く。

「HAHAHA」

彼の耳に残る最後の音となった。




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