副生徒会長2
副生徒会長はワロス家の長男である。魔法都市の市長の息子で、現在特命を受けて市外に派兵されている。彼は魔力的にも恵まれており、固有の魔法の盾魔法を得意とする。この盾は非常に硬い。上級魔法に匹敵するが、とても早く展開することができ、移動させることも容易だ。防ぐことにも攻めることにも長けており、魔法の戦闘訓練では負けなし。強力な盾で相手の攻撃を防ぎ、硬い盾を飛ばし、破壊することが不可能な槍となる。
ホウキの上に立ち、次々と撃墜していく。
前方から迫る小竜に対してつぶやく。
「ボクの敵では無いな。何を隠しているんだい?」
盾を三つ出現させて自身の周りを旋回させる。
「獅子回転錐」
螺旋に回る盾は近づく物を自動で排除する。快適な空の旅だ。徐々に敵の量が増えていく。おそらく敵の母艦も近いだろう。
「ボクの覇道の目障りだ。……蹂躙しようか」
杖を取り出す。金色にかがやく杖。装飾はなくただちいさな水晶がついている。その水晶の中は金の水に満たされているような輝きを放っていた。
「さて、行こうか。【雷獅子】」
杖は輝きその姿を変え、獅子をかたどった豪華な杖になる。周りを取り囲む盾が雷を帯び、辺りを照らす。彼に群がろうとする竜は大小様々に数十体いた。彼はホウキの上で魔法陣を展開し、杖を構え、唱える。
「吠えよ!讃えよ!我が覇道!獅子どもよ道を作れ!!雷獅子の賛美歌」
盾が回転し、魔法陣を描くと刹那。轟音とともに光線が発射された。直撃した竜は蒸発し、その場にいた全てを薙ぎ払った。
ただ1つを除いて。
空を泳ぐように現れたそれは、光線をうけてもびくともしない。魔法が拡散されているようだった。
「ったく」
聞こえるはずが無い男の声。地上からはるか上空のこの場所で白衣の男が現れた。撃ち出した魔法は空中でかき消える。煙が晴れたあとに現れたのは巨大な羽の生えたクジラ。その背中に男がひとり立っていたのだ。
「こちとら魔女の手帳の解析で忙しいんだよバカスカバカスカ撃ち込むなよ。いくら頑丈さが売りのスペースシャトルをベースに魔法加工してるって言っても、耐久性にゃあ、上限があんだよ。あと、戦闘機もタダじゃねーんだ。もうちょい加減しやがれ、っても、伝わらねーか。この世界線のやつらにゃ。教授がいたら、お前腹いせに実験台にされてたぞ。」
ぶつくさと文句を垂れるその男は、黒い煙を出す黒いタバコを吸っていた。なんだ。さっきからこいつ、何を言っている。濃い緑色の髪をもち無精髭を生やし、ボサボサの頭を搔く。試しに、盾を使い、頭を狙う。彼は首を寝かして、かわすもタバコの先が切られていた。
「っおまえ、貴重なタバコを許せねぇ。昔の世界線のタバコだぞ。もう、ロストテクノロジーになっちまった。吸えねーんだぞ!」
「あいにくぼくはタバコを嗜んだことはなくてね」
彼はふぅ、と1度天を仰ぎみて、落ち着いて言った。
「……家に帰りな。おれは、さっきの連中を返してくれたら、お前のことを見逃してやってもいい」
「あの者たちは、ワロス家が預かった。保護したものを差し出すことは、誇り高いワロス家にとって、ありえない選択だ。応じられないな」
「誇りじゃ命は救えねーぜ?」
「ふん。歴史あるワロス家に盾突こうなど」
「はははっ、。……俺たち相手に歴史を語るなよ、ガキ」
翌朝。魔法都市マジブロッサムに連絡が入る。ワロス家の船が沈没。第3魔法学校副生徒会長が行方不明になったというのだった。