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副生徒会長

部屋を出る間際

「歴史学の授業がある日の昼休み私の研究室に来なさい。さっき教えたことを詳しく教えてあげよう」

「あ、ありがとうございました」

フクロは微笑み手を振った。もう片方の手には杖をにぎり、気配を感じた廊下へ。さくらこと話をしている間から部屋の外に人の気配を感じていた。拘束魔法をギリギリまで魔力を殺して、起動する。ドアをゆっくりとあける。

部屋の外にいたのはロックだった。

「フクロ教授。春風さくらこになにをしていた」

「試験中に倒れたので、医務室に連れてきただけです。盗み聞きとは」


「……おれの生徒に余計な真似をするなよ」

彼の右手は体の後ろにあり見えない。杖か武器か。さすがに殺されはしないと思いたい。

「【凶月】と呼ばれた貴方がずいぶんお優しいことで」

ぴくりと彼の耳が動く。

ロックは唸るように言った

「その名は捨てた。」

「名前を変えようが過去は変わりませんよ」

「っそうだな」

牙を見せて唸るロックを見て、彼女は手の平を向け戦意がないことを伝える。

「ただの歴史学の話です。他意はありませんよ」

「ふん」

彼はフクロの横を通りのそのそと病室に入っていった。彼の後ろに隠してた腕はバスケットがあり、果物が見えた。どうやら見舞いの品が入っているようだった。

「ふぅ。怖かった。さすがにあの威圧感には圧されるな。味方でいるうちは安心だけど。…………ははっ……味方ねぇ、私もずいぶん入れ込んじまったな。人のことは言えないか」

さてと。うんと伸びをしてフクロは歩き出した。春風さくらこは勇者魔法について素人。魔法の力は中の下。だが、研究室の奴らは彼女を狙っている。学校の支援体制は力が入っている。上級魔術師レベルの警備、異変が起これば担任に連絡がくる。彼女の担任は歴戦の猛者。世界樹の結界と隠された学校。

だが、それでも、安心はできない。不動の地位にいた勇者を倒し、未熟な若者に継承させた。次は強奪に動くだろう。もし捕まれば、さくらこはろくな目にあいそうもない。魔法都市側は不利と。

「あたしも、備えておくか」

フクロはフードを被る。彼女の姿は闇に溶けた。


世界樹がギリギリ見える遥かかなたの空に5つのホウキ雲が見える。

全身に風を受け、ホウキで旋回する。闇夜の中、雲を切り裂きながらの逃走劇。5人いる小隊は、矢尻のような編隊で飛行している。

「隊長!限界に近いです。これ以上は我々もホウキも持ちません!!」

「せめて、この情報を!!」

「ぐわあああ」

突如、火の玉が落ちてきて、1人の魔導師を飲み込む。

「アルフ!!」

「引き返すな!!奴は助からん!!」

銀色の小竜が火の玉を吐き出しながら下から上がってくる。

「呼吸をあわせろ!魔法種シードシルド

「「「強化パワド」」」

「我らを守り給え、堅牢盾パワシルド!!」

先頭の魔導師が編隊の下に盾の魔法をはり、残りの3人が魔法を強化する。盾の魔法は大きく広がり、輝きを増す。寸前まで迫っていた盾にあたり、火の玉が空に散った。

「よし、上手くいった」

隊長が下で花火のように散った火弾を確認して、胸を撫で下ろす。

「このまま帰還する。急ぐぞ。おいどうした」

部下の返事がなく、顔をあげる。

「くそっ」

先ほどの火の玉が10数個落ちてきたのだ。

「あと少しだ!みんな、歯を食いしばれ!!生き残るぞ!!」

追う火の玉を振り切るようにホウキを進める。

「追跡されている!」

避けたはずの火が追ってくる。杖を後ろに向け、丸薬を噛み、呪文を唱える。丸薬は世界樹の葉っぱを加工したものだ。魔力が一時的に上がる。

「打ち砕け!魔法葉リーフ水大砲ウォルタン

水の大砲を撃ちだす。魔力消費が大きく、あまりいい手とは言えないが。部下の真後ろにいた小龍にあたるも、勢いは変わらず。化け物が。部下をこれ以上死なす訳には。

「隊長!!」

振り向くと銀色の龍が目前まで迫っていた。

「くそったれ!!!」


「…獅子レオ大盾タード!!」


静かにしかし、力強く声が響く。金色の盾が現れ、銀の龍を両断する。

こちらに向かう魔導師。味方のようだ。すれ違いざまに念話が届く。

「こちらマジブロッサム【雷獅子】。西に2km。ボクが乗ってきた船がある。そちらに逃げろ」

「すまない!!!」

彼らの後方にはまだ小竜が迫ってきていた。ホウキの上に立つ彼の横を小隊が通り過ぎていく。

「魔力のない下等なトカゲが…… 強固な盾は鋭き槍にもなる獅子レオシル連射弾ニド!」

魔法の盾が次々に現れ、一斉に飛び立つ。鉄で出来た小龍の群れはあっという間に切り刻まれた。

「……なぜ、ボクが雑魚の尻拭いをしなければならんのだ」

数多の火の玉を屠り、第3魔法学校の生徒会副会長バレオ=ワロスはボヤいた。

「ワロス家軍用艦ハレムに通達。これより敵母艦を強襲する。ディナーの用意をして待っていろ」

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