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中間試験2

お次は魔薬学。魔法を使った薬のテスト。作るものは傷薬。さくらこは普段の修行で生傷が絶えず、アンリが作る魔法薬をもらっていた。当然作り方はバッチリ把握してる。

「春風さくらこさん。わたしの授業をきちんと受けていれば、透明の魔法薬が出来るはずです。貴方のは何色ですか?」

「ドブ色です。」

「鍋が溶け始めています。こんな物を傷口に塗ってしまうと」

「たちどころに傷が無くなりますね」

「腕そのものがなくなります。」

うなだれているさくらこ。その時爆発音がした。室内に立ち込める煙。

「あらあらどうしたの」

「すみません。先生。杖の攪拌を忘れてしまってて」

「アンリ・ガルダリオンさん。珍しいですね貴方が。成績は下がりますが、再チャレンジなさいますか」

「はい、すみません」

アンリちゃんがミス?そんなことは考えられない。傷薬なんて、すぐに作れるだろうに。

「あ……」

さくらこは自分が杖で魔法薬を混ぜるのを忘れていたことに気づく。まさか、自分のために。

試験が終わったあとにさくらこはアンリの元に駆け寄った。

「アンリちゃん!どうして」

「ウチだって完璧じゃないわ」

「傷薬なんていつも」

「手元が狂っただけ」

「……ありがとう」

耳を赤くしたアンリは小さく一言言った。

「……美味しいお菓子を一緒にたべよ」

「分かった!とびきり美味しいのを用意しとく」

これ以上足をひっぱることはできない。その後の試験は今まで以上に必死に取り組んだ。そして、さくらこは最後の試験に望む。


「魔法歴史学かぁ」

マツリは冴えない表情をする。

「今年来た先生だから。試験の傾向がわからないからなぞだな。暗記はどうもな」

「歴史はストーリーが大事」

「ストーリーかぁ」

「やぁ、諸君」

扉が開いて、フクロ先生が入ってきた。

「試験を始めるよ。表紙に名前を書くこと。裏に問題がある。飛ばすことはせず1問ずつ確実に解き次に進むこと」

普通のペーパーテストのようだ。胸を撫で下ろす。次々に紙が配られていく。

「では、開始」

裏向きになったテストを表に返す。

問1確認されている世界線を答えよ

よし、普通の問題だ。

問2世界樹の起源と活用法を答えよ

これもアンリちゃんとやったとこだ。

問3前世界線において獣人が多く生き残った理由は

たしか英雄がいて、時間凍結の魔法をかけたんだっけ

問4獣人戦争における和平条約は

問5はじまりの魔女について人類と敵対している理由は?

順調に問題を解いていく。つぎのページをあけると

テスト用紙には、魔法陣が刻まれており、さくらこは全身の力が抜けるのを感じた。ごとんという音がして、それは自分の頭が机にぶつかった音だと気づいたのは少しあとだった。

「春風!春風!大丈夫か!医務室へ運ぶ。諸君はテストを続けたまえ」


「……え」

さくらこは周りを見渡す。真っ暗な空間だった。

「よぉ春風。」

「フクロ先せ、い?」

何故か違和感を感じた。身長がひくい。というか幼い。同世代くらいだ。

「安全に話せる場が欲しくてね。君はいま、医務室で横になっていて、私が治療するふりをして精神介入している」

「ほかのみんなは」

「普通に試験を受けているだろうよ。魔法陣を仕込んだのは君だけだ。」

「どうして」

「スパイがいるらしいし、ほかの者に聞かれたくない。ああそうだ。おめでとう。成績のムラはあれど、全てのテストに合格したね。君が努力したのは知ってる。成果を出した。だから私も応えようと思ってね」

「たくさん聞きたいことがあります。」

「だろうね。だけど、時間がないからね。とりあえず。勇者魔法の使い方について教えておこうか。オクトが話してくれたことだから私が詳しい訳じゃない。それでも聞くかい」

「はい!」

彼女はさくらこの正面に立つ。

「勇者魔法は対魔女の特攻魔法だ。はじまりの魔女には魔力では勝てない。誰もな。年季が違いすぎる。こっちはたかだか10数年。あっちは何千何万年。だからこその勇者魔法の力」

「魔力を打ち消す」

「その通り。勇者魔法とは魔法と名前がついているけど、魔心臓が生み出すものじゃない。」

「それって」

「人の感情さ。怒りや喜び、悲しみ。感情の強さがエネルギーに変換される。あとは、その想いを込めて打ち出す。それが勇者魔法ブレイブさ。純粋な気持ちであればあるほど力が増す。何ができるかは術者次第らしいがな。私の場合は、憂鬱な感情に重力が付与される、みたいにな」

「わたし次第」

「より純度が高い感情は力を発揮しやすい。たくさんの思い出を作り、感情を思い出しやすくしておけ。あと、この勇者魔法のことは秘密にしとけよ。お前は弱いからなモルモットにされるか相手に利用されるか。そうなれば人類は二度と勝てない。」

「魔法少女計画は失敗するんですか?」

「いや、あの計画は魔女の月まで行くために必要だ。オクトの話では空には月に行かせまいとする研究室の奴らがいて、行く手を阻んでくる。オクトの時は、そこで消耗して、魔女との対決にならなかったらしいからな。味方は必要だ。さて、時間だな」

「先生は何者なんですか?」

「なんでも聞いてちゃ、学びにならない。それに、いい女には秘密がつきものだ。」

彼女はウインクして、指を鳴らした。

視界が明るくなり、さくらこはベッドによこになっていたことに気がついた。

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