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フクロ教授の特別授業2

「それが、勇者の剣、か」

フクロ教授は剣を見つめ、一瞬何かを言いかけた。古い大剣。柄こそ古いが刀身は手入れがよくされており、美しかった。

「はあ。!」

「突きとみせかけての、上段からの一撃。」

足を下げ身体を横にして躱す。身体の横をすぎる刀に見向きもせずにカウンターで顔面に拳を叩きつける。現会長の動きはこないだ見せてもらった。型さえ分かってしまえば、脅威ではない。あの剣技は魔法あってのものだ。春風さくらこの剣は、弱い。

「ぐぅ、……らぁ!」

鼻血を流しつつも、食らいつくように横に振り抜く刀を飛んでかわす。ふわりと跳ぶ彼女を目で追う。

「はっ!まるで猛獣だな!早く勇者魔法を使えって」

さくらこの頭を踏んづけて、彼女の背面にいく。

「そんな易易使えてたら、苦労は」

「聞いて呆れるな。チャンバラごっこならあの、クソ雑魚な生徒会長と遊んどけ」

「ばかに!!」

「そりゃあするさ。いまのお前は何のために剣を振ってる?」

さくらこの剣が止まる。なんのために。わたしは仲間のために。

「仲間のためといいつつ、自分の不甲斐なさの八つ当たりしてるだけだろ。だから、程度が知れるんだよ」

「わたしは別に好きで、こんな」

「オクトにも、そんなこと言えるのか!」

彼女はまっすぐさくらこを見た。怒っているのは私じゃない。彼女の方だ。涙を溜めた目でさくらこを見ていた。

「フクロ教授、あなたはいったい。」

はっとした彼女は、天を仰いで息をはいた。

「ちっ、あーあーあー。興ざめだ。心が乱れちまった。ここまでだな」

どうやらこれ以上戦う意思はないようだった。フクロは瓶を取り出し、中の紫色の液体をさくらこにぶっかけた。

「なん、臭っ!なにこれ、」

「龍の卵を発酵させて、薬草を練りこんでる。よく効くぞ」

雑巾に卵を塗りたくって、真夏にベランダで干して腐らせたようなえぐい匂い。

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛鼻がア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

のたうち回ったさくらこを地面に転がし、煙草に火をつける。しばらくして、悲鳴が聞こえなくなり、さくらこはフクロに尋ねた。

「……先生は、勇者魔法を使えるんですか」

「真似事だけどな」

はじめて、勇者魔法を知っている人を見つけた。

「教えてください!!!勇者って何なんですか?勇者魔法って!魔女は、勇者は、わたしは、」

「お、おい、落ち着けっての」

さくらこは頭を下げた。

「正直、頭打ちで、次が見えてこないんです!!」

頭をかきながらフクロ教授は聞いた。

「お前、まさか、勇者魔法を使えないのか。怪人をぶった斬ったって聞いたが」

「はい……あの時は、ただ必死で」

「自覚が無い、覚醒。有り得なくは無い、か。剣の記憶に呼応した形か?あー、そういうことか。はぁ、あのタコ。昔からの口下手は治ってなかったか。はは。剣の記憶か。誘って置いてなんだが、まずはテストをパスしてからだな。春風。」

「そんな」

「……焦んな。私もお前に伝えるために準備がしたい。」

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