表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/105

引越し

翌日、さくらこはボーとした頭で、病室を後にした。脱力感がひどく、また全身のあちこちが痛かったが、引越しが行なわれるらしく追い出されてしまった。

生徒は皆無事。マツリちゃんたちも無事だそうだ。でも。


「たこさん、、、」


さくらこの胸のつっかかりは残ったままだった。

「さくらこ一年生」

そこに立っていたのは、ミナトだった。

「先輩……」

「……大変だったな。」

2人で校庭に向かう。

しばらくの沈黙ののち、ミナトは立ち止まり、口を開いた。

「悪かった。さくらこ。助けが間に合わなくて」

深々と頭をさげる。

「や、やめてください。先輩、みんな、無事だったから」

ズキンと胸がいたむ。

「あのぬいぐるみ。生きてたんだろ」

顔をあげるとミナト先輩が優しく微笑む。

「!」

「魔法生物とは違う。過去の偉物だ。」

「先輩……」

そんなミナトをさくらこは横薙ぎに斬る。

「あなたは誰ですか……」

「くくく、これは驚いた。剣を抜く前に見抜くか?そんな目でみんなよ。ダーリン。あたしは自分で確かめないと気が済まないたちでな。春風さくらこ」

「ミナト先輩の姿が魔法なのを感じます。」

ミナトの姿が歪み、人影が現れる。

「校長、先生……」

「引越し前に確かめたいことがあってな」

校長はさくらこを観察する。空中から取り出した勇者の剣。瞳の色が違う。透き通るような金の瞳。勇者の剣を託されたものに起こる肉体の変異か?興味がつきねぇ。あのタコはほとんど語らずに逝っちまったからな。彼女の手から剣が消えると彼女の瞳は元の色に戻った。

「あぁ、引越しを行うのは、奴らにこの場所が特定されたのが確定したからだ。奴らに情報を流している奴がいる。お前が1番怪しかったんだぜ?春風。中学までのデータはなく、今年突然入学してきた転校生。お前こそ何者だ?春風さくらこ。なぁ、おい。」

校長が指を鳴らすと3人の魔法少女が武器を構えてそこに立っていた。

「勇者を作りたい研究室(ラボ)にとって、お前は最高のモルモットだ。スパイとして敵地に送り込むのは、あまりにも……もったいねぇ。魔法の無効化。魔女に届きうる力だ。かの英雄タコニチュアが、到達して以来、人類は月に、いや、宇宙にすらたどり着けていない。」

「なんの、話、ですか。」

「ふぅー。……マジブラッド。」

「嘘をついてたなら、もう処してますよ。研究室の記憶があるようなら八つ裂き確定です」

「だよな。……春風、退学通知前の勧告だ。入学早々わりぃな。3人の魔法少女がお前の師匠兼監視役になる。魔法少女見習いとしてこの学園で過ごし力をつけ、あの月から魔女を引きずりおろせ。お前が生き残れる道はそれだけだ。さて、諸君」

それだけ言い残すと、彼女はどデカい山高帽子を被り、杖を取り出す。

「始めるぞ」


校長は長いローブの下からたくさんの杖を展開する。それぞれが意思を持っているかのように動き、別々の魔方陣を書き始める。丸を基本とした魔法陣、どこかの民族の文字で書かれた魔法陣。世界中のありとあらゆる、歴史に連なる古来の魔法まで。同時に起動させる。魔法少女たちも、そのサポートに入る。展開し、バラバラに弾け、飛ぼうとする魔法をつなぎ止める。

「3年前よりかだいぶ楽だぜ。お前たち。成長したなぁ。見とけよ。春風。今お前が見ている魔法は、現時点の最高到達地点の魔法使いたちの魔法だぜ。」

さくらこは胸のざわつきを感じた。目の前に広げられるカラフルな魔法ではなく。その大きな山高帽子を見てた。さくらこに刻まれた勇者の剣が反応しているようだった。

「……亡霊共の殺気か。姐さんの帽子に反応してるようだな。……手ぇ出さなくていい。お前ら。ラボの連中に追跡されないように多段式でいく。」

彼女の魔法が収束していき、ある形をとる。

「……鳥?」

不死鳥(フェニックス)だよ。さくらこ1年生。この学校が【鳥の巣】と呼ばれる所以さ」

「この鳥が学校を運ぶ。」

不死鳥の身体が一気に膨れ上がり、その魔法があたりに広がる。ほんのり暖かい空気が周りを包む。

「春風。絶対に剣は抜くなよ。魔法が掻き消えたら、私たちは消滅してしまうからな。」

「命尽きても甦り、遥かな時を飛び回り、我らを連れてけ巣と共に、多次元移動魔法【不死鳥】3段加速の陣!!」

「「「はい!!」」」

「発動!!!」

グイッと引っ張りあげられる感覚があったあと、浮遊感が感じられる。小刻みな振動がしばらくして止み。目の前に燃えるように赤い羽根がさくらこの前に現れた。

「……春風さくらこ。不死鳥の羽を校長に渡してくれ。」

「は、はぁ」

受け取った校長はその羽をしばらく見つめていたが、胸からフラスコを取り出して中へ入れた。のどに杖を当てて、校長は放送する。

「……全校に告げる。引越し完了だ。各々の荷物を確認してくれ。教職員はライフラインの確立と、ネットワークの再接続。世界樹とのリンクを最優先に。あたしは、少し休む」

くるりと振り返る時には、山高帽子もローブも消えていて、いつもの白衣姿だった。

「春風。引き受けてくれるか?魔法少女見習い。」

「拒否権はないんでしょ」

「ねーな。勇者としての運命がお前を否が応でも魔女討伐に向かわせる。犬死しようが、相打ちになろうがてめぇが死んだら、今の世界線が崩壊して、次の世界線がはじまる。すなわち今の人類の大量絶滅だ。今度は我々が亜人と呼ばれるようになる。」

「……わかった」

「いい判断だ。……運命は待ってくれない。いくぞお前ら。ミナト。今日はお前が春風につけ」

短くそういうと校長たちは行ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ