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春風桜1

「逝ったか。魔女までたどり着けた愛すべき宿敵ダーリンよ」


第二の月と化した宇宙ステーションから星を見下ろす。自己進化を繰り返す人工知能は、宇宙ステーションを小さな衛星程まで作りかえここまで大きくなっていた。研究を繰り返し、目下の国に被検体を送り込む研究室ラボ。男は繰り返しさくらこたちの戦闘映像を見て、必死にメモをとっていた。

もう1人は長い白衣をだぼつかせ、椅子の上に体育座りをして、カップの液体を飲んでいる。どうやら苦かったようで顔をしかめている。

「所長!なにくつろいでいるんですか。絶好の機会なんですよ。あらたな魔法の発現。しかもこれは過去のデータにあった勇者魔法の効果と類似している。勇者覚醒に1歩近づいているんです。早く怪人のデータを分析して、次の怪人を送り込まないと」

「無駄さ」

彼女は残った飲み物を飲み干し、空に投げた。空中でカップはひしゃげ、そのままゴミ箱へ飛んでいった。男は疑問に思いながら連絡をつなぐ。

「……データは取れたか?レコードを見ろよ。あ?怪人ごと、消失した?馬鹿言うな」

「魔力駆動の記録装置は、低予算低コスト低重量だが、魔力を打ち消すタイプには、意味をなさない、か。1つ勉強になったな。勇者魔法。興味深いな。怪人を使い刺激を与え続け、ストレスを与え市民の魔力の覚醒を促す段階は済んだ。勇者魔法の覚醒を確認。世界線はなおも移動中。順調だ。次の段階にコマを進めよう」

「は、はい!」

「あぁ、それと。あの怪人を作り出したのは、誰だ」

「私です!いやぁいいアイデアだったっしょ?保管庫の勇者の仲間だった女のDNAを使って、つくりあげたんすよ。たこの獣人なんていたんすね!性格は私好みに仕上げたんですが。変装、分裂、強力な触手!高い魔力!!量産してもいいかと」

「……そうか。いい趣味をしてるな。……お前墓を暴いたのか?」

「墓?墓とは?何か問題でも、死体の入れられたケースのことですか?」

「………もういい。わたしは次の段階の作戦を練る。部屋から出ていけ。あれは二度と生産するな。墓にも、わたしの部屋と横の部屋には二度と近づくな。他の奴らにも命令を遵守させろ」

「わかりました。では、わたしはカタログを更新していきます。」

事務的な口調となり、男はそとに出ていった。

「やはり、アンドロイドには、限界があるか。効率的だが、倫理観にかける。……すまないなタコニチュア。君らには、敬意を払いたいのだが。まぁこれで、勇者が現れた。勇者の剣も。魔女の手帳は、役に立たなかったが、奴らが魔女の遺品を持っていることはわかった。だとしたら、あれも奴らが持っているのか?ピースが揃いつつある。はるかぜさくらこ。彼女を研究したい」

彼女は椅子を回転させる。くるくると回りながら考えを巡らせる。

「世界線はまだ乖離してるとはいえ、あの位置にある。仕組まれた怪人の登場もシナリオの上か。我々も大抵悪趣味ではあるが、やつらも……」

彼女が見上げるのは、巨大な機械。彼女の目的でもあり、最終目標。機械には棺のようなものが取り付けられており、太い配管がつなげられていた。棺にはプレートがはめられており

「HARUKAZE SAKURA」

と書かれていた。


事件の後、校長室に怒鳴り込んでいく姿があった。

「校長!!」

「ははは!そう怒るなよロック先生!生徒は死んでないし、設備が多少壊れた程度すぐ直る」

「警備員は1人亡くなったんですよ」

「だからどうした。」

「なっ」

「この学園を守る以上、犠牲はでる。契約書にも書いてあるし、補填もしよう。成果を見ろ。研究室の奴らが今までのなんちゃって怪人ども以上の兵器を極秘裏に持つことを暴き、長らく探していた対魔法の力を持つ人間が現れた。月を落とし、我々の抱えている問題を解決する時がきたってことさ。」

校長はロックを見上げて笑いかける。

「春風さくらこは奴らに狙われるだろうよ。しっかり鍛えてやれ。それがこの世界のためにもなる」

答えずロックは答えず、部屋をでる。閉まった扉を見て、ため息をつき、外の月を見上げ校長はつぶやく。

桜姐さくらねぇ。あんたに会える日が近づいて来てる。待ってろ」

彼女は校長室の机の引き出しを開ける。棚は厳重なケースとなっており、中には様々な品物が密閉されていた。中には手帳やペン、杖、写真などが大切に収められていた。写真には、学生たちが並び、笑顔でポーズをとっていた。中の手帳はあるページが開かれており、走り書きがされていた。

「再び世界に魔法を、か。Restartplan。魔女狩りの先を見て動いた桜の種が芽吹いた。これから忙しくなるな」

校長は、杖を振るって全校に伝達をする。

「明日の夜7時に引越しをする。必要な荷物は自分の部屋に閉まっておけ。壊れてはいけないものや貴重品は、自分で持っておけ。上級生たちは1年坊主共を校庭に集めろ。6時半だ。

教職員の諸君。持ち場の固定と破損箇所の修復と魔法陣の設置を。襲撃のあった地下の体育館と魔法実習室はほかの危険な魔法があってはならないから、切り離していく。いまから校長室には立ち入り禁止だ。」


研究室と学園のそれぞれの長は交わることのない視線を交わす。

「「わたしが春風桜子はじまりのまじょを甦らせる」」

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