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剣④

「くそったどり着けねぇ!」

「……またか」

魔法少女の2人は困惑していた。北棟の食堂を目指すつもりが、扉を開ける事に違う場所に出てしまう。

「誰も死なないでくれよ」

怪人の魔法か。気持ちばかり焦り、歯噛みする。


厨房の爆発は赤い炎を吹き上げ凄まじい勢いだったが、その中からゆらりと立ち上がる影があった。

「はぁ、はぁ、ははは!流石にビビったっすけど。我々研究室(ラボ)相手に粉塵爆発っすか。まさか魔法使いが科学を使ってくるなんて。傑作っす」

体の半分がちぎれかけたが、これが最後だったのだろう。さくらこは、床に伏していた。かろうじて息はあるようだ。

「ごほっ」

「あんな近距離の爆発。ただの人間にはキツいっすよね。まぁ、楽しめたから、そろそろ死ねっす」

尖らせた腕を振り下ろす。

「ちく、しょう、」

さくらこは痛みを覚悟した。だが、その瞬間は訪れず、変わりに何か液体の様な暖かい何かを頭に被った。

「え?」

さくらこが顔をあげると、タコニチュアが、さくらこの前に立ち塞がり、彼女を凶刃から守っていた。彼の腹部は貫かれ、口元から血がながれていた。

「タコさん!!」

「さくらこ殿、無事か。情けない。今の私には、盾になるくらいしか。できない。」

「なんすか、このたこ?」

彼は魔法を張り、怪人からの攻撃をしのぐ。

彼の腹部と口から血が溢れる。そんな彼は、あるものを空中から取り出し、さくらこにほおり出した。

カランと音を立てて、さくらこの前に古びた剣が落ちる。

「さくらこ殿、君に戦う覚悟があるなら、その剣を抜け。もしもこの剣を抜けば、君は巨大な運命に翻弄されることになる。」

「運命」

「君が春風さくらこならば。春風桜子というはじまりの魔女と同じ名前を持つ君に、この勇者の剣を継がせることは、危険ですらある。だが無干渉を貫くつもりだったが、ここで君たちを捨ておくほど、腐ってはいない!!」

「なにをごちゃごちゃ言ってんすか?」

「ዽጿ ኈ ቼ ዽ」

きいたことのない言語が聞こえ、タコニチュアは身体を肥大化させ、怪人へと襲いかかった。

さくらこに迷いはなかった。

剣をとる。

「うぐあああああああ!」

「はっ?なんすか?勇者ごっこなら、他所でやれって。気持ち悪いっすね!!」

タコニチュアを滅多刺しにする。

「やめろぉ!!!」

剣を鞘から抜き、斬りあげる。こんなボロい剣に自分の腕が切られるわけがないとタカをくくっていたが、一応硬質化だけはしていた。そのあたりは抜け目がない。だが、

「は?」

硬質化したはずの腕を易易と斬り、その斬撃は彼女の胸まで届いていた。

「ぬ?は?」

訳が分からず、動きが止まる。

「やああああああああああ!!!!!」

さくらこの剣筋は完全に素人のそれだ。だが、怪人の彼女だけは感じとっていた。その剣に込められた想いを、その想いに応えるかのように、剣は輝き、魔力を絡め取って打ち消していく。対魔女魔法「勇者魔法ブレイブ」は相手の魔力を打ち消し、魔力ではなく、気持ちの強さが効果に反映される。

「タコさんから、離れろ!」

「くっ」

剣は触れてないのに術の範囲が広く、魔力の塊である腕が切り落とされていた。

「これは…」

タコニチュアは、自分の手渡した剣の魔力を感じ取る。

おかしい。

あの剣は所有者の魔力を高めるのと、勇者魔法が使えるようになるだけのはず。タコニチュアが使用していた時には、自らの水魔法が強化されていた。だが、勇者魔法があれほどまで強く反応したことはない。さくらこ自身の魔力を感じない。あのこはそもそも魔法があまり得意ではなかった。

「まさか…」

さくらこ自身の魔法が、勇者魔法なのか。だから、通常の魔法が上手に使うことができず、今、その才能が目覚めたのか

「はあああああああ!!みんなをよくもぉ!!」

「はるかぜさくらこぉ!!!」

勇者ブレイブ大断ソード!!!」

振り下ろされた大剣は魔力でできた怪人の身体を分解し、両断した。

「あああ!消える、からだが、くずれ、るぁああ」

「はぁ、はぁ、はぁ、」

ふらりと目眩を覚え、さくらこはその場に倒れてしまった。

その姿を見届け、タコニチュアも仰向けに倒れ、空にうっすら上る二つの月を見る。

「いつか貴様にリベンジをしようと思っていたのだがな。魔女よ。復習に狩られた俺では無いみたいだ。貴様をそこから解放するのは」

手を伸ばすも、指先から、さらさらと崩れ始める。

今回の怪人は。俺たちの遺伝子が使われていた。タコの怪人、いや、タコの獣人の怪人。姿を変え、分裂しても動き、かしこい。過去の研究室ラボの怪人とは違う。


魔女に対抗するために多数の魔法少女を育てたい魔法都市マジブロッサム。魔女を目覚めさせるため、失われた勇者を作り出したい研究室ラボ。はるかぜさくらこは、勇者の資格を持った魔法使いとなった。どちらの組織も欲しがるだろう。


薄れゆく意識の中タコニチュアは、願いをこめる。


「勇気ある彼女の行く末に幸多からんことを」







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