生徒会魔法少女ミナト書記2
「ひぃぃぃ!!」
「なんだこりゃ!!」
カサカサと蠢くそれらはまさに蜘蛛の巣を散らしたかのように足元を動き回っていた。
「ちぃっ!」
ミナトはスカートに手を突っ込み、模様の描かれた1片の紙を取り出す。それを地面に叩きつけて、杖で刺す。
「どっから出してんですか!!」
「ポケットなんざないんだよ!しかたねーだろ!空と大地を包み込め!断崖絶壁!旧結界」
一瞬の輝きのあと、ドーム状に魔力の壁ができる。
「さくらこ新入生!こいつら、潰しまくれ!」
「え?!む、無理ですよ!!」
「やれ!あたしは結界の維持で手が離せない。こいつら、明らかに悪意あるもんだ。この場で全て殺す。この結界は早く発動するが脆い。長くはもたない」
「で、でも」
「踏み潰すだけでいいんだ」
「あ~もう、ええい!!」
ぐちゃ!
「ひぃ」
ゾクゾクと背中が寒くなる。足をあげるとネバネバとした体液のようなものと残骸がそこにはあった。
「うげぇ」
「よしその調子だ。」
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ。多分全部潰せたと思います。」
体育館の床はおびただしい量の虫の残骸が散らばっていた。
「ああ、ありがとう。こりゃ、報酬を上乗せしないとな。今日は帰りな。そこにシャワー室あるから。あたしは、ここの片付けしてかえるから。また明日な」
「は、はい」
さくらこと別れて、ミナトは床の残骸を調べる。虫のようではあるが、魔力で作られたものだろう。体液のようなものは消えてしまっている。足に見えたものは、それっぽく見せた金属製だった。
「襲撃にしては弱すぎるな。さくらこ新入生でも倒せる程度か。とりあえず会長に報告だな」
ミナトは電気を消し、食堂にもどる。誰も居なくなった体育館の床がぼうっと薄く光っていた。床から染み出したそれらは虫の中に入っていた体液に見せた魔法薬。ゆっくりと魔法陣を描いている。ゆっくりとゆっくりと体育館の床下で魔法陣を描いていく。
帰り道。
さくらこは杖を両手でくるくると回す。およそ自分の腕ぐらいはある杖の先にはほとんど透明な水晶玉。街ゆく先々で見かける杖は色の違いはあるも大体マーブル模様でたくさんの魔法が使える証になっている。八百屋では魔法で育てた野菜が宙を舞い、魚屋では空中で怪魚の解体ショー、たすけて、たすけて、肉屋では包丁がサーカスのようにくるくると周り肉をいろいろな部位にたすけて、切り分けている。この皆が見慣れた光景に。
「ん」
違和感を感じ、振り向くと魚屋のおじさんの包丁が魚じゃないものを切り刻んでしまうところだった。
「おじさん、ストーップ!!!」
助けたのは、今朝見たあのぬいぐるみのような奴だった。
「おいさくらこ!てめぇの魔法生物ならちゃんとてめぇで面倒みろってんだ!」
江戸っ子気質の魚屋の大将は、ピリピリしながら言った。
「いや、そういうわけでは」
彼女は否定するも魚屋は、既に魚の調理に戻ってしまった。
「かたじけない、腹が減っていたところ。美味そうな魚があったゆえ、勇者たりえる蛮行申し訳なかった」
「いえいえ」
そういえばさくらこも腹が減っていた。食堂で食べそこなってしまったから。
「なにやら、うまそうな匂いが足からくんかくんか」
そういうと、この生き物がスリスリとよってきて脚を嗅いできた。
「ひっ、なにすんのよ、あ、ごめ」
思わず思いっきり踏む。以外に柔らかな感触。
「至福!!いや、違う。お前の足から濃い魔力の香りがする」
「私の足がクサイって話なの?!」
さらに踏む。
「ワンダホー!!、じゃなくて、魔法がかけられてるんだよ。このままじゃ危ないから、食べさせてもらう。むしゃむしゃ」
ドMなんかこいつ。彼が口をもごもご動かすと足の裏から先ほどの体育館で踏み潰した虫の体液が剥がれ、彼の口に入っていった。
「もぐりんこ。んー、転送魔法の類だね。ストーカーにでも狙われてるのかい?」
「い、いやそんなことはないけど」
「ま、気をつけなよ。」
彼はそういうとトコトコと歩き始めた。さっきの様子でいうと、学校の体育館も危ないのでは?明日先輩に相談しよ。ただ上手くいく説明ができなさそうだ。
「ねぇ、君、明日ちょっと一緒に説明してくれないかな」
「?かまわないが」
「じゃあ明日世界樹の下で!」