表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/105

勇者と魔女

さくらこは透明なチューブのようなエレベーターを登っていく。世界樹の内側にあるそのエレベーターは、木の内部を映しながら上がっていく。かなり長い時間が立って、世界樹の頂上にたどりつく。宇宙が近い。見下ろすと果てしない大きさの世界樹があった。何千、何万年もの時間をこの地に居続けたのだろうか。

ふと、動いているものが、見えた。校長と教授が見守るようにエレベーターを見上げていた。

「……行ったか」

「あぁ、姐さん。うちの生徒を無事返してくれるといいが」

「あたしたちは次の瞬間滅ぼされるかもしれねーのに、一人の心配かよ」

「未来ある若者の命には変わりないさ。私たちは私たちのできることをするぞ」

「はーッわかったよ」

流れ星のような、エレベーターを見送った後2人はそれぞれの陣営に指示を飛ばした。

「全研究員、怪人諸君。研究のお時間だ...」

「マジブロッサムの住民、および、全人類に告げる」






初めて見る宇宙は、途方も無かった。第二魔法学校での無重力の部屋。あそこなんて、比べ物にならないほど、果てしない空間にさくらこは目を丸くしていた。

たくさんの機械の破片を抜けた先にそれはあった。

巨大な月。いや、機械の塊。月と地球の間ぐらいに存在していた。

軌道エレベーターは、その中に繋がっていた。

「ご利用ありがとうございました。宇宙ステーション駅。宇宙ステーション駅。お忘れ物にご注意ください」

がらんとした駅。気味が悪いほど清潔で、静かだった。

「んで、よぉよく来たな。マイドゥター。そのまままっすぐ進みな」

駅内のアナウンスから突如として話しかけられた。

「はるかぜ、さくら、さん」

「おぅ、そうだぜ、モノホンさ。早く来な」

無機質な廊下を進んでいくとガラス張りの広い空間に出た。そとには蒼い星があり、中心に巨大な機械が設置してあった。

恐る恐る近づくと、中には、老婆が液体の中で静かに眠っていた。

「あんまりジロジロ見るんじゃねーよ。恥ずかしいだろ?こっちはすっぽんぽんだぜ」

「あなたが春風桜さん」

「あぁ、悪いな。こんな格好で。まぁ、でも、力は健在だからよ」

さくらこの身体がふわりと浮かぶ。

「まさか。天使の一体が、勇者になるなんてな」

「私は人間じゃないのですね」

すこし寂しそうにさくらこは言った。

「いや、人間さ。りっぱに生きて、怒って喜んで、悩んで感情があるんだ。誇れよ」

「……はい」

「いまの世界線はどうだ?マイドゥター?いや、さくらこ。」

「戦いは嫌だけど、魔法のあるこの世界は好きです」

「そうか。あたしの目指す、私がいた世界は多分二度と作れないんだろうな。結局どこかで起きる小さな綻びがデカイズレになっていく」

「……わたしは、世界樹の中であなたの魔法石に触れました。たくさんの人たちが、生きて、死んでいきました。精一杯。姿形は違っても、幸せを求めて」

「……あたしがしてきたことは間違っていたか」

「………………わかりません。でも、さくらさんが、いえ、お母さんが幸せになりたかったことは分かります。日記も見ました。お母さんは魔力の隕石を研究するまでは普通の子どもでした。もとの生活を取り戻したかっただけですよね」

「まぁな。……さくらこ。お前は勇者として、私を討つか」

「えっ」

「勇者の剣は私が暴走した時に止めるために作った。歴代の継承者はたとえ相手がどんなに巨大でも、立ち向かう資質があるものがなっている。」

装置から膨大な魔力が漏れ出す。

「あたしを終わらしてくれ」

切なる願いだった。

「……………………………………」

「わたしにとってお前の人生は決していいものじゃなかっただろう。天使の肉体はたしかに丈夫だが、対魔力に特化してほとんど自前の魔力がなく、勇者魔法の素質のせいで魔力がない。この世界線では、不便なことも多かっただろう。両親はおらず、幼い記憶はない。それでも、お前はこの世界が好きだと言った。私の分身たるお前が」

「……はい」

「あたしは未来をお前に託したい。」








ダメダ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ