最終決戦1
「……啓示だ!啓示を授かった!HAHAHA!てめぇなんざ、着拒だぁ?とかなんだか。魔女に言われた。HAHAHA意味がわからんが。きっといい意味だろう。なんせ、ぼくは」
「こんなにも、強いっ!HAHAHA!」
意識を失ったさくらこの前には、血まみれになった3人がいた。盾もボロボロ。杖も折れかけている。それでも、さくらこが意識を刈り取った数秒をムダにはしなかった。拳の一振。黄金の腕。力を一瞬トバされ、制御を失ったそれを盾の魔法とゴーレムで防ぎ、マジカルオウルの魔法で逸らした。全員の首の皮一枚が繋がった。
「はぁ、はぁ、はぁ、父上……」
「さくらこにぃ、手ぇ!出すな」
「……2人とも、下がって、さくらこを叩き起しなな。古代魔法!《火》!!」
マジカルオウルの魔法の火。原始の魔法。木人に魔法を回復して貰った時に教わった魔法。
「……木人の魔法か。いつの間に。……ついこないだまでは脅威だったけど、勇者の剣を持つ、僕には無意味さ」
彼女の炎を一太刀で切り伏せる。
「はっ、理すら焼き切る原初の炎さ。付け焼き刃のお前の勇者魔法で耐えられるかな。彼らは繋がっている。彼らの敗北は当然共有されている。」
「なに?」
切り伏せられた炎が再び勢いを取り戻す。
「小賢しい!」
「さくらこ!目を開けろ!さくらこ!」
盾の魔法の中で、ビシバシとさくらこに往復ビンタをかますマツリ。
「……ここを開けて。さくらこのほっぺがなくなってしまうまえに」
「なんだ、おまえは。」
マツリが振り向くと、そこにいたのは、小柄な少女。」
「な、おま、アンリ」
「開けて」
「大丈夫だ。……友達だ。」
信じてるぞとマツリが、アンリを見つめている。
「魂が体を離れてたみたい。一応戻ってきてるみたいだけど、眠ってる。私たちの魔力でさくらこを起こす」
「……許したわけじゃねーぞ」
「……わかってる。せーの!!」
2人はありったけの魔力をさくらこに込める。
「「戻ってこい!!さくらこ!!」」
「かはっ!!……はぁ、はぁ、はぁ、あれ?アンリちゃん。マツリちゃん?」
むせるさくらこに2人は抱きつく。
「さくらこぉ!」
「おい、感動の再開の最中に悪いが、抱き合ってる暇。ないぞ!」
盾の魔法に亀裂がはいる。
黄金の腕が、盾を砕く。
「8発HAHAHA。だいぶ扱いに慣れてきた。さっきより魔力のノリがいい」
片方の腕は、フクロ先生の髪を掴み、持ち上げていた。
「先生!!」
さくらこは鞘を構える。
「……母さん。みんな、力を借りるよ」
さくらこの手の中の鞘が熱くなる。
「桜一刀流。」
さくらこは百花繚乱流を会長から、教わっていた。脈々と伝承されていたその剣技を自らのものに昇華させた。魔法少女見習いの服を、今まで習った魔法のこもった鞘を、世界樹の記憶と繋がった時の人々の感情をひとつに込めて、流し込む。
「桜吹雪!!」
鞘を逆手に構え、振り抜く。その一振に魔法が込められて、とめどなく攻撃が降り注ぐ。私の魔法も、人々の魔法も、過去の人類の魔法も、世界樹の記憶している魔法が具現化していく。
「HAHAHA!その程度の魔法が、今更効くとでも?」
市長は、勇者の剣が魔法を次々と切り落としていく。
「HAHAHA!!今更大魔法程度、勇者の私には多少重く感じる程度で」
「は!そんな、大層な魔法じゃねーよ。誰もが、当たり前に使っていた。通常魔法さ。重く感じるなんて、剣があってないんじゃないか?」
「……?!なんだと」
「当たり前に使っている生活魔法さ。人々が息づいて、何年も何十年も、何百年も、何万年も。戦争だけが全てじゃない。人々の生活の記憶さ」
「そんな低レベルな魔法が、なぜ!」
「魔法は素晴らしいんだぜ!市長さんよ!」
「わたしは生きている!!来い!!!旧魔法!探求指針!お前の探してる主はここだ!!」
さくらこが手を伸ばすと勇者の剣が市長の手をはなれ、さくらこの手に収まる。
「な、に、」
「さぁ、最終決戦だ」