くしゃみ三回
くしゃみが出た。それも、三連続で。
しかも三連発してもなお、どうにも鼻がくすぐったくて仕方がない。とはいえ自分は至って健康なはずで、風邪を引いているなんてことは……多分ない。ぱっと思い付く原因と言えば、今首元に巻いている薄手のストールくらいだろうか。
というのもこのストール、つい先程クローゼットの奥から引っ張り出したばかりなのだ。今日はやや日が照っていて厚手のマフラーでは少し暑かったけれど、マフラー無しではさすがに寒かったので、急遽登場してもらっているのである。ここ三、四ヶ月の間はずっと出番がなかったから、多少なり埃を被ってしまっていてもおかしくはない。
今しばらくはカーディガンのように脱ぎ着のしやすい服を駆使すれば上手いこと調節して過ごせるだろうけれど、本格的に衣替えの作業に着手しなければならなくなる時期も、きっともうそう遠くはない。なぜか衣替えをした途端に寒い日が来たりもするのだが……まぁ、こればかりはどうしようもないと割り切って柔軟に対応することにしよう。
鋭さを失った風が吹いて、白くて丸い小さなものがいくつか目の前を横切って行った。
道すがら風上を見やれば、可憐な梅の花が、まだ葉も芽吹かぬ枝をいじらしく飾っていた。
そろそろブーツの出番は終わりかもしれない。こたつは……しまうのはまだ惜しいか。
次の休みには、桜よりも一足先に梅で花見に興じるのもいいかもしれない。
そう思い立ってようやく、ふと三連続くしゃみの真の原因に思い至って、あぁなるほど、と思った。
そういえば自分は花粉症なのだった。症状はそこまで酷い方ではないにせよ、全くもって最悪だ。
いつの間に季節が変わったのだろう。
今日は帰りに花粉症の薬を買って帰ろう。あと、衣替えに備えて防虫剤も。
花粉症で春の訪れに気付いた人の話。
「一謗り、二笑い、三惚れ、四風邪」ということわざがあるらしい。三回は恋の噂。
春の訪れは季節だけじゃないのかもしれない。




