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番外編:SOO1.5周年直前生放送

────1年と半年程前。


「おい! もう始まるぞジーク!」


「はは、悪い悪い、残業が長引いてしまってね」


 そう言って、ジークはライデンの隣のカウンター席に着いた。


 カガミ、ナナホシ、ジーク、ヴェロニカ、ライデン、ノア、そしてアイリは、ラバーキャットのカウンターで大きなホログラムモニターを見つめていた。SOOの1.5周年直前生放送を見るためだ。何でも、半年後に控える2周年イベントについての重大発表があるらしく、一同は、期待に高鳴る胸を押さえていた。


 この当時はまだ『反乱軍』は結成されておらず、ジーク達4人は『呉越同舟』という反乱軍の前身となるクランに所属していた。そのため、ヴェロニカもジークも軍服を着ておらず、普通のプレイヤーと変わらない装備を身につけていた。


「しかし重大発表とはなんだろうね」


「個人的には、そろそろ『宇宙戦艦』についての情報が出てもいいんじゃないかと思ってる」


 ジークの述懐に答えながら、カガミはグラスをあおった。


「そういえば、この前クリアしたダンジョンの碑石にも宇宙戦艦についての言及がありましたね」


 ヴェロニカはジークを横目で見つめた。


「あぁ、宇宙戦艦についての言及はストーリーやNPCの発言、ダンジョンの碑石など至る所にあるからね。私も、宇宙戦艦についての情報を期待している」


「皆、考えることは同じみたいっスね。今、世界中で金属系素材アイテムの買い占めが相次いでるんスよ。宇宙戦艦の建造に必要そうなアイテムはもう市場から残らず消えてるっス」


「じゃあやっぱり価格も高騰しているのか?」


 カガミはナナホシに問いかけた。


「っスね。上鉄鋼は今朝の時点で先月の6倍に跳ね上がってました。今日の生放送次第でさらに高騰するか、或いは暴落するか……お、そろそろ始まりそうっスね」


 大きなモニターに表示されていたカウントダウンが0になると、画面が暗転する。すると、ロケットエンジンの轟音がモニターから聞こえて来た。


「こ、これはまさか……」


 次の瞬間、モニターに星の海を飛んでいく巨大な戦艦の映像が写し出される。


「うおおおおおおお!」


「キタアアアアアアアアアアアア!」


 カガミとライデンが叫んで立ち上がり、つられて一同も立ち上がる。店の外からも、他のプレイヤー達の歓声が聞こえてくる。フリード中がプレイヤー達の歓声と拍手に包まれていた。


◆◇◆


 宇宙戦艦と、それに関する情報、そして今後開催予定のイベントや実装予定の新装備、新たに探索可能となる惑星等、様々な情報が公開され、盛り沢山の40分間があっという間に過ぎていった。


「"続いては2周年記念イベント『DAYBREAKER』についての映像です、どうぞ!"」


 画面が暗転する。一同は、固唾を飲んでその画面を見つめた。


「"観測宇宙の存在確率、74.9%まで低下。コードレッド、終末任務(ターミナル・クエスト)を発令します。全開拓者は、至急、任務に当たってください"」


 それは、後にSOOをサ終寸前まで追い込むことになる恐ろしいイベントの告知映像だった。


 画面が切り替わったかと思うと、無数の触手を生やした巨大な怪物の映像が流れ始める。星をも優に上回る巨体を持つそれは、岩盤を角砂糖のように砕きながら星を丸々飲み込んでしまった。


 ほんの一分足らずの映像はそれっきりで終わってしまい、画面は、生放送の司会者達の映像に切り替わってしまった。


「"ということで『DAYBREAKER』の告知映像でした! いや〜凄かったですね〜!"」


「"えー、情報によりますと、全世界のプレイヤーがリアルタイムで同時参加する共闘イベントだそうです!"」


 カガミ達の額に脂汗が滲む。いつも強気なライデンも思わず口を開けていた。


「おぉ、マジか、まさかアレを倒せって言うんじゃないだろうな」


 カガミ達の間に沈黙が流れる。その沈黙を破るように、アイリは笑いだした。


「いやいやまさか! 何かの条件を達成したらイベントムービーが始まってムービーの中で倒される奴だよ!」


「はは、そうっスよね」


 カガミは顎に手を当てる。


「でも、このタイミングで宇宙戦艦を実装したあたり……マジでアレを倒すことになるんじゃないのか?」


 カガミ達の間に再び沈黙が流れる。ゲーマーとしてのプライドから、皆決して口には出さなかったが、全員が直感的に『無理だ』と感じていた。


 その時だった。


「"えーではここで、SOOのプロデューサーであるデネボラさんからメッセージが届いております!"」


「"2周年記念イベントDAYBREAKERに関しての重要な告知だそうです! いやー、楽しみですねー"」


 滅多に生放送に出演しないことで有名な、SOOのプロデューサー、デネボラ。年齢、性別、本名は一切不明。絶対に顔を見せず、音声にも必ず加工を入れているミステリアスなデネボラについて唯一分かっていることは、SOOの基幹システムをたった一人で、しかもほんの一週間で作り上げた天才だということだけだ。


 真っ暗な画面に『SOUND ONLY』の白文字が現れる。


「"こんにちは、開拓者のみなさん。プロデューサーのデネボラです。本日は、2周年イベント『DAYBREAKER』について重要なお知らせがあって、生放送にお邪魔しています。では、早速お知らせの方を……"」


 デネボラは、溜めに溜めて、直後にSOO中を大混乱に陥れることになる一言を吐き出した。


「"『DAYBREAKER』のクリアに失敗すると、その時点でSOOはサービス終了となります。みなさんの健闘を期待しています"」

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