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トップクラン 30

 一方その頃。リベリオンの上空では、アークに乗ったノアが敵機を殲滅して回っていた。


 反乱軍時代の撃墜数は優に1000を超える。『撃墜王』『英雄』『エース』『伝説』『死神』……付いた二つ名は数知れず、ノアの名前を聞いただけで味方は勝利を確信し、帝国兵達は震え上がった。


「うわあああああッ!? 被弾した! エンジンが、爆────」

「うわあああ! こっちに来るなああっ! ぎゃああああああっ!」

「くそ! 撃ち落とせ! 集中攻撃だ!」


 機銃の発砲はエンジンを狙って最低限に。2秒に3機という猛烈なペースで、ノアは敵機を殲滅していく。アークに襲い掛かる雨のような紅色の光線の弾幕を、ノアは眉一つ動かさずに回避する。アークの装甲には、光線が掠めた無数の焦げ跡が付いているが、それだけだ。


「くそ! あとちょっとで当たりそうなのに!」

「この回避の挙動……見覚えが……!」

「ッ! そんな訳ないだろう! アレはもう反乱軍を辞めているはずだっ!」


 ノアの人間離れした空間把握能力は、装甲に焦げ跡が付く程度の文字通り『間一髪』の攻撃回避を可能にする。掠めはするが当たりはしない。ギリギリ限界を攻めることで、普通のパイロットにはできない苛烈な攻撃が可能になる。


 その近くの宙域で、ノワールの高速巡洋艦カティサークは4番艦バルムンクを攻撃していた。リベリオンとカティサークでバルムンクを挟み込むようにし、ありったけの弾幕を浴びせる。しかし、重装戦艦であるバルムンクのエネルギーバリアはまるで城壁のように堅固で、巡洋艦のカティサークの砲撃では傷一つつけられていなかった。逆に、バルムンクの砲撃でカティサークのバリアは薄氷のように砕け散る。バリアの下の装甲があまりに強力なのでなんとか致命傷は受けていなかったが、劣勢は明らかだった。


 バルムンクの砲撃で激しくブリッジが揺れ、カップの紅茶が数滴、ノワールの柔らかな頬に跳ねる。ノワールは頬の紅茶をレースのハンカチで拭き、やれやれといった様子でカップとソーサーをテーブルに置いて立ち上がった。


「まったく。あのゴリラ女らしい品性のないゴリラ戦艦ですね……やむを得ません、私が出ましょう。ハッチを」


「かしこまりました、ノワール様」


◆◇◆


 カティサークがバルムンクの上空側、約200m程の至近距離に移動すると、船底のハッチが開いていき、ノワールが姿を現す。その手に握られているのはあのヤトノカミだ。だが、キララのそれとは異なり、上位5%の個体値厳選がしてある他、攻撃力を高める武器スキルがふんだんに付与されている。メイドの一人がジュラルミンケースを開き、中から、タイムアタック用のヤトノカミ改造弾を取り出す。


 ノワールは慣れた手付きで弾丸を装填すると、スコープを覗いて銃口をバルムンクのブリッジに向ける。ノワールは超一流の武器商人だ、当然、あらゆる武器を大抵の上級プレイヤーより使いこなすことができる。もちろん、キララのような超精密狙撃は不可能だが、200mの距離から全長300mのバルムンク相手に弾を当てる程度のことは造作もない。


「さて、キララ様の真似事でもいたしましょうか」


「『インドミナスレイジ』」

「『フォースレイズ』」

「『ベルセルクハウル』」


 ノワールの周りのメイド達が一斉にノワールに攻撃バフを付与すると、ノワールは引き金を引いた。轟く銃声、SOO世界最強の爆薬である電子励起爆薬が詰め込まれた1発あたり8000万クレジットの弾丸は、ブリッジ前方の甲板を貫き、内側で猛烈な爆発を起こす。装甲板がひしゃげて甲板に大穴が開く。強烈な青白い閃光に照らされながら、ノワールは弾をリロードし、再びブリッジに照準を定める。2発目の銃声、今度はブリッジのすぐそば、左舷側の装甲板に弾丸が命中し、青白い火柱が立ち上がる。


「むぅ……あと50m近づけてください」


「かしこまりました」


 バルムンクからの反撃が飛んでくるが、カティサークの強固な装甲はそれを容易く阻む。バルムンクにさらに近づいたカティサークの中で、ノワールはまたブリッジに狙いを定める。


「『インドミナスレイジ』」

「『ベルセルクハウル』」


 効果時間が短い分強力なバフをメイド達がかけ直すと、ノワールは引き金を引く。銃声と共に撃ち出される漆黒の弾丸は、今度こそブリッジの天井を貫き、ブリッジの中で猛烈な爆発を引き起こした。青白い閃光と共にブリッジのガラスがいっぺんに砕け散り、甲板に飛び散る。ノワールの視界の端に、無数のキルログが流れる。そのキルログを眺めながらノワールは静かに零した。


「……やはりあの女は居ませんか。どうやら、状況は芳しくないようですね」


 そう言って、ノワールはリベリオンのブリッジを見つめた。

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