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無差別PK 3

「無差別PKとは何だ」


 MMOをやったことが無いクロウは無差別PKの意味を知らなかった。


「無差別PKは言葉通り、無差別にPK、プレイヤーをキルすることだ。ただし、銀華の場合はプレイヤーやモンスターどころかNPCまで、目につくもの全てを片っ端から斬って回っているらしい」


「それは悪いことなのか?」


「悪いことじゃないっスよ。ただし、やると滅茶苦茶嫌われます。SOOではキルされるとデスペナルティとして5分間待ちぼうけをしなきゃいけないんスよ。貴重な時間を削ってゲームをしている現代人からすると、やられていい気持ちはしないっスよね」


 仮に、仕事などの都合で1日に1時間しかログインできないプレイヤーが、素材を集めるためにフィールドに出ていたとする。更に、そこで銀華に無差別PKをされたとする。銀華との戦闘に2分、デスペナルティの待ちぼうけに5分、もう一度フィールドに行くのに3分掛かったとすれば、それだけで10分のタイムロスだ。貴重なゲーム時間の6分の1を理不尽に削られるのは嬉しいことではない。


 しかも、狩場の奪い合い、敵対クランとの戦いなどの名目があればまだゲームとして楽しめたかもしれないが、望んでもいない戦いを突然押し付けられて、挙句の果てに殺されるのは大半のプレイヤーは納得がいかないだろう。


「なるほど、確かにそれは許し難いな! なんて奴だ!」


 クロウは憤慨した。


「と、いうわけで銀華はSOOで最も嫌われているプレイヤーの一人だ。ちなみにこの『懸賞金』っていうのは、NPCからの信頼度が下がると発生するペナルティだ。プレイヤーやNPCを殺したり、NPCの店で盗みを働いたりすると信頼度が下がってく。あんたも、PK中心に遊ぶなら懸賞金には気を付けた方がいい」


 カガミはキララの方を見てそう言った。


「なんで急にその銀華って子の話を?」


「銀華は普段、とある惑星に引きこもっていてそこから出てこないんだが、つい最近、この自由都市フリードの近くで目撃されたらしいんだ」


 キララは顎に手を当てた。


「あんたならこの状況のヤバさがわかるだろう。自由都市フリードは、言わば初心者の拠点都市。そのフリードの周りで銀華が無差別PKを始めれば、初心者は皆殺しだ。腕がたつ分、大半の初心者狩りよりもタチが悪い」


 大半のゲームに言えることだが、『初心者にゲームにハマってもらう』というのはゲームが長続きするために重要なことだ。銀華は、言うなれば超高難易度ボスのようなもの。ゲームを始めていきなり超高難易度ボスと戦わされれば、大半の初心者は楽しくないだろう。銀華のせいでSOOがサ終する……というのは大げさかもしれないが、初心者にとって大きなストレスになるのは間違いない。


「まぁ、あんたに銀華をなんとかしてくれ……なんて頼むつもりはないが、倒しごたえのある獲物だと思うぞ? 銀華の強さはSOOでも指折りだからな。倒せば懸賞金も貰えるし」


 クロウは拳を握った。


「許せん! 俺はやるぞ、俺が銀華を倒す!」


「無茶だ、前に上級者30人が討伐隊を組んで銀華を倒そうとして、そっくりそのまま返り討ちにあった相手だぞ。いくらあんたが他ゲーで強かったとしても、レベル1の初心者にどうこうできる相手じゃない」


「ええい黙れ! やると言ったらやるんだ! 俺は行くぞ!」


 そう言って、クロウは『うおおおおおおお』と叫びながら店を飛び出していった。黙って何か考えていたキララが、おもむろに口を開いた。


「ねぇ、信頼度が下がると、懸賞金以外に何かペナルティはあるの?」


「ん? そうだな……NPCの態度が悪くなる、NPCの店の商品の値段が高くなる、或いはそもそも商品の売買に応じてくれなくなる、街に入れなくなる、入ったとしても衛兵に攻撃される、なんかがあるな」


「ふーん……」


 ナナホシはタバコの灰を灰皿に落とした。


「その様子だと、また何か気づいたみたいっスね」

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