第8話 変態さん
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ユーマはフローレアのことだけでなく、ローデンスのことも色々聞いておくことにし、あの後もその部屋に居座った。
「そういえば、フローレアとローデンスはどういう関係なんだ?」
「おっと、フロールの居る環境が当たり前すぎてその説明を忘れていたのだよ。フロールは私の親衛隊隊長なのだよ」
「親衛隊?普通にただの護衛とかメイドとかじゃなくてか?」
「私の認識として、護衛よりも身近で、メイドよりも戦闘に強い、という観点で親衛隊と呼んでいるのだよ」
「フローレアは『桜花神話』を持ってるから親衛隊隊長と言われても普通に納得だが、他の親衛隊員はどうしたんだ?」
「私が頼んだどんなこともフロールがこなしてしまうのでね。非常時以外はメイドの仕事に回ってもらっているのだよ」
「つまり、親衛隊は殆どフローレア一人ってことか?」
「まあ、禁忌の種族を敵に回そうなんて奴はよほどの命知らずでない限りいないのだよ。だからフロールには傍にいてもらうだけで私自身も守られてるのだよ」
ーこんなチートな娘がいるのにわざわざ俺を連れてきたなんて、ドルトメッサーは一体何を考えてたんだ?
すると、ローデンスは計ったかのようにユーマが考えていることを話し出した。
「確かキミ、聖騎士隊長ドルトメッサー君と同じ体質なのだよね?」
「ああ、『聖剣を刺すことで身体強化できる』ってヤツか?そんな理由だけで俺はここに連れて来られたのか!?」
「まあ、それもあるのだろうが、彼は行く宛ての無い君の身を案じてくれたのではないのかね?」
「なるほど」
「ただし、私もただの居候を屋敷に置いておくわけにはいかないのだよ。どうだ、聖騎士になってみないか?聖騎士になれば給料の安定は保証され、領民からも憧れの的になることができるのだよ。それに、聖騎士団の宿舎はこの屋敷。務めの何もない日にはこの屋敷で贅沢な休日を送ることができるのだよ」
ただ、ユーマは間髪入れず首を横に振った。
「嫌だよ、悪魔とかと戦うのって主人公のやることじゃん。けど、俺主人公じゃないし。何せ、スキル未所持だぞ?そんな奴が役に立つか?」
「十分役に立つのだよ。それに、ドルトメッサー君と同じ『聖剣を刺すことで身体強化できる』体質ならば、いずれ『剣聖神話』を獲得する可能性があるからなのだよ」
「それって根拠あんのか?いや、信じてないワケじゃないんだがな」
「例えば、現代唯一の『剣聖神話』所持者、<オーディン>と呼ばれるシャーマ・ルルヌ・カールなのだよ。彼も同じ体質を持つし、過去の伝承に登場する『剣聖神話』の持ち主も皆がそろって似たような体質を持っていたとされるのだよ」
その話で何かを思い出したかのように、ユーマは急に顔が青くなった。
「どうかしたのかね?ユーマ君」
「いや、そういや起きてからトイレ行ってなかったわ、と…。それで、トイレ使いたいので場所教えてもらえるか?」
「この部屋を出て左に行ってすぐのところなのだよ」
「サンキュー、ローデンス!」
そう言い残して、ユーマは目にも止まらぬ速さでその部屋を後にした。
ローデンスの言う通り、トイレはすぐのところにあった。
ここで彼はよく考えるべきだった。ただ、誰かが入っていないかをノックなどで確認するなど考える余裕は、この時のユーマには存在しなかった。
そして、ユーマは勢いよくトイレの扉を引いた。
「よっしゃー!何とか間に合っ…」
扉の先、一つしかない便器には既に、一人の少女が座っていた。
ユーマの目算では、身長は中3男子の上の下な164センチあるユーマと同じくらい。綺麗な純白の髪で、金と赤のオッドアイをもつその少女に、ユーマは既視感を覚えた。
ー懐かしい。この目元、忘れちゃいけない誰かに似ている…。
冠那だ。前世の、数日前までの、彼女。事実元カノだが。
「お前、まさか…、冠那、なのか…?」
しかし、少女は無言で下ろしていた白いミニスカートと水色のパンツを履き直すと、ユーマの目の前まで歩いてきた。
「…え?どうかされ」
「この、へんたいさぁぁぁぁぁん!」
ー変態にさん付けするとか、かわいいかよ…。
ユーマは凄まじい勢いで壁に打ち付けられ、そのまま気絶した。
ちなみに、漏らした。
彼女はメインヒロインです。