第7話 サクラのメディオクリシス
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ユーマは寝かされていた部屋を出て、ドルトメッサーに教えてもらった部屋の前に立つ。彼は、その扉の前で大きく深呼吸した。
ー確かあの日から三日経ってるんだったか。その間に勝手に俺が聖騎士団に入る手続きとか済まされてないといいけど。聖騎士とか面倒そうだし。
そして、ユーマはその扉を三回ノックし、中にいる人の返事を待った。
「どちら様?」
少女らしき声がした。
ー異世界の領主と言ったらおっさんのイメージがあったけど、ありゃただの偏見だったか。
「先日、ドルトメッサー殿によってこの屋敷に運び込まれた者ですが…」
「それなら、お入りください」
ユーマが部屋に入ると、真正面の机のところで書類を書いていた銀髪の男が顔を上げた。
ーあれ?美少女では?
ユーマは目をこすってもう一度確認する。しかし、そこにいるのは以前その男だった。
「あまり緊張なさらなくても大丈夫ですよ」
「ん?のわぁ!?」
ユーマは驚きのあまり、変な声を出して尻もちを突いてしまった。さっきの声の主は、ユーマのすぐ右にいた。
メイド服っぽいけどメイド服じゃない、けどどことなくメイド服を連想させるような感じの、フリルのたくさんついた白黒の服、つまりゴスロリ服の少女がそこにいた。
紺色の髪と桜色の瞳を持つその少女は、ユーマに手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?ごめんなさい、びっくりさせてしまって」
「いえ、まあ、大丈夫です」
少女の方が領主じゃないというのは分かった。しかし、さっきからずっと領主は無言を貫いている。ユーマは自分の方から話しかけてみることにした。
「あ、あの、あなたが領主様で合ってますよね?」
「おっとすまない、私としたことが客人に気づけなかったのだよ。ようこそ、我らがウェルモンド家の屋敷へ」
「もう3日もここにいるらしいのですが、俺」
「ああ、ドルトメッサーが捕まえてきたあの聖騎士候補の少年か。自己紹介がまだなのだよ。私はローデンス・プロディーツィオ・ウェルモンド。この周辺一帯の領主なのだよ。それと、敬語はやめたまえ少年」
「分かった。俺はシンドウ・ユーマだ」
ローデンスは作業していたその手を止め、ユーマに向き合った。
「それでユーマ君、キミは何か知りたいようだな」
「ご名答。お前についてと、それとそこの少女についてだ」
「そうか、キミは転生者か。この世界の基本について知らないのだから、私やフロールについて知らないのも当たり前なのだよ。フロール、自己紹介がまだじゃないか」
フロールと呼ばれたそのゴスロリっぽい少女は、ユーマに向き合って一礼した。
「自己紹介が遅れました。私はフローレア・チェラシス・マーリン。サクラのメディオクリシスです」
「メディオクリシスってのは?」
「メディオクリシスとは、魔力から発生したものではなく、物や概念から生まれた精霊のことです」
「へぇ。それで、何かこの世界のキホン云々って言ってたが、それとお前らって関係あるのか?」
ユーマは話す相手をローデンスに戻した。
「サクラのメディオクリシスは2、3000年の大昔、『神話スキル』の最強、『桜花神話』に備わった魔法の一つである『核撃魔法』で世界を混乱に陥れた。だから嫌われているのだよ、禁忌の精霊として」
「ほぉ」
ー大昔だか何だか知らないが、そんな昔のことに囚われて現代まで嫌われ続けるなんて随分悲惨だな。
ユーマは、複雑な世界事情にどんな顔をすればいいか分からず窓から碧く広い空を眺めた。