第17話 フギンとムニン
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ユーマたち三人がテレポートしたのは、王都が目の前に見える草原であった。
ユーマはシャーマに尋ねた。
「どうして直接王都に行かなかったんだ?」
「直接王都に行くと、あの魔法に何者かが遠隔で干渉していた場合、ソイツまで王都に入れることになる。もしそれが<72柱>の悪魔だったら混乱も死者の発生も回避できなくなる。だから直に王都へはテレポートしないようにしている」
「なるほど」
シャーマの説明に納得したユーマの視界に、二羽のカラスが写り込んだ。
ーこの世界にもカラスはいるのか。こっちでもゴミ袋漁ったりするんだろうな。
すると、一瞬の隙に二羽のカラスは消え、代わりに二人の黒い服 ー 片方はドレスのような服、もう片方は軽装のような服 ー の美少女が現れた。
「ねぇ主様、今日はね、ドロボウを成敗したんだよ?すごいでしょ?」
「ああ、よくやった」
そう言いながら、シャーマはドレスの少女の頭を撫でる。
すると、軽装の方の少女も口を開いた。
「けど主人、ムニンはソイツを気絶させただけで捕縛しようとしなかった。私が監視してなかったらソイツが目覚めた後に被害が拡大する可能性だってあった」
落ち着いた口調で話した軽装の少女はシャーマに撫でてもらおうとはせず、ただ自分の三つ編みを親指と人差し指でいじっているだけだった。
シャーマはその少女に近づくと、そちらも撫で始めた。
-ナデポ狙いか?
ユーマはそう考えたが、シャーマの方は全く意識していない。
しかし、その少女は顔を赤らめていて、毅然とした態度を崩さまいとしている。
「確かに捕縛することも大切だが、気絶させてくれただけでもいいんだ。それでも、後のことまで考えて動いてくれてありがとうな」
「は、はい…」
ー俺の目と耳が間違っていなければ、この男はこの二人には優しいみたいだな。まあ、俺からしたフォールちゃんみたく大切な存在なんだろう。
すると、ドレスの少女がユーマとフォールティスに気づき、警戒態勢になった。
「ねぇ主様、そこの人たち誰?」
「ローデンス卿の領地に降り立った新しい転生者らしい。俺はこの少年を強制送還しに行ってたんだ」
「それにしても、長くなかった?まさか、そこの女の子でもナンパしてたの!?ひどーい、フギンちゃんとムニンがいるのにー!」
「人聞きの悪いことを言うな。そこの少女はただの少年の連れだ。二人とも、自己紹介するんだ」
「「どっちのこと?」」
「「二人ともって?」」
少女たちと互いに思ったことが被ったユーマとフォールティス、少女二人は盛大に笑った。
「それじゃあ、こっちから自己紹介するか。俺はシンドウ・ユーマだ」
「私はフォールティス・デジディット・カエルム。種族が分かんないけど、よろしくね」
次は少女たちの番。先陣を切ったのはドレスっぽい服の少女の方である。
「私はムニン・インテリジェンツィア。よろしくー!こっちは私のお姉ちゃん、フギン・インテリジェンツィアでーす!」
「よろしく。それと、私達の種族はコールヴスだから」
一見対照的な雰囲気の二人だが、姉妹だからか、どことなく似ている感じはあった。
「そういえば主様。今日だけど、何か空気中の魔力濃度が濃くなったり薄くなったり繰り返してるんだけど、何が起きてると思う?」
「それは俺にも分からない。だが、何かしらの異常が起きている、或いは起きる可能性があるから、この後もしっかり王都全体だけでなく周囲にも気を付けてくれ」
「はーい。それじゃ、私たちは王都の警備に戻りますね」
そう言って、フギンとムニンの二人はカラスの状態へ戻り、空を飛んでいった。
「シャーマ、お前ってあの二人とはどういう関係なんだ?」
「主従とでも言うべきか。まあ、過去に色々あってな。奴隷として使役してるワケではないから安心しろ。それと、そろそろ国王陛下のところへ行くぞ」
そう言って歩き出したシャーマの後を、ユーマとフォールティスはついて行った。