第15話 宴の前のデート
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控え室に戻ると、ローデンスやフォールティスたちが待っていた。
「おめでとう、ユーマ」
「おめでとうって言われても…。ぶっちゃけ、俺は何もしてないぞ?」
「私がおめでとうって言ったのは、ユーマがちゃんと私のお婿さんになってくれたからだよ」
「まぁ、メッサーから聞いたんだが、俺はどうやらローデンスの跡継ぎを押し付けられてたらしいんだ。けど、俺としてはフォールちゃんと結婚できるならそれだけで頑張れるぞ」
「ユ、ユーマったら…」
二人がそんなやり取りをしていると、ローデンスが割って入ってきた。
「ユーマ君、キミが次期領主になってくれて私は嬉しいのだよ」
「けどいいのか?そういう仕事に対して知識も経験もからっきしの俺に次期領主なんかを任せて」
「正直なところ、キミは私の聖騎士団の面々の中では常識人な方なのだよ。だから、完全に安心し切っているわけではないが次期領主を任せるには十分なのだよ」
「そ、そうか…」
俺が苦笑していると、アルターやその他名前を知らないが顔は知ってる連中が入って来た。
「そういえば、今夜は宴を開催するって言ってましたよね?領主様」
「おいおい、アルター君。それは屋敷に帰るまでナイショにするという話だったではないか。仕方ない、バレてしまった以上は。と、いうことでユーマ君。この後帰るのはいいが6時になるまでは大広間に近づかないでくれないだろうか?」
「分かった。それなら、ちょっくらフォールちゃんとデートでもしてくる。まだそれくらいの時間はあるだろ?」
「まあ、好きにするがいいのだよ」
そして、、ユーマは即座に荷物をまとめ、アスターのヒッポグリフの引く荷台に揺られながら屋敷へ帰ったのだった。
*
昼下がり、乾燥した風の吹くウェルモンド邸正門にて。
ユーマは厚着をしているにも関わらずその寒さに歯をガタガタ震わせていた。
ー12月16日、か。あの超有名Pの誕生日だな…。それはさておき、こっちの寒さは日本と大差無いな。これ、雪が積もるかどうか心配だな。
ユーマがそんなことを思っていると、いつもとは違う少し厚着した少女が駆け足で近づいてきた。
「お待たせ。ごめんね、寒かったでしょ」
「い、いや、俺、俺も今来た、とこ、だし。そ、んな、に、待って、無い、よ?」
「震えてるよ?やっぱり寒かったよね?」
「こ、これ、くらい、この前、凍え、死に、そうになった、時に比べ、れば、全然、大丈、夫、だか、ら」
「無理しないの」
ちょっと怒った口調のフォールティスは、ユーマに近づくと何かを巻き付けた。長いマフラーである。
「こ、これって…?!」
「寒いって言ってくれればもっと早く巻いてあげたのに。こうやって2人で出かける日がすぐに来るかな、と思って夜なべして作ったんだからね」
「フォ、フォールちゃん…!!」
「ホント、身長が一緒くらいでよかったね」
「そうだな。まあ、それも互いに運命の人だって証拠かもしれないけどな」
「う、うん…」
フォールティスは、急に顔を赤くして俯いた。
ー可愛い。
ユーマの正直な感想である。
「そ、そういえば、私ってユーマに直接好きか嫌いかって話したっけ?」
「そんなの、言われなくたって今こうやってるだけで一目瞭然だろ?」
ユーマがそういうと、フォールティスは更に顔を紅潮させた。
「それに、もう1週間前のことになるけど、既に寝言で『好き』って言ってたぞ」
「そ、そうなの…」
フォールティスは、今にも頭から湯気が出るんじゃないかという勢いで耳の先まで真っ赤にしていた。
そして、歩いているうちにあの日 ー 転生した日 ー の教会へ着いた。
「ここに、ちょっと話をしておきたい相手がいるんだが…」
「浮気は許さないからね?」
「そういうワケじゃないから…!」
ふくれっ面になるフォールティスを可愛いと思いつつ苦笑する以外の反応を思いつかない複雑な心境のユーマは、その教会に入っていった。