第14話 最強決定戦
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ユーマが聖騎士 ー とは名ばかりの騎士見習い ー になって1週間が経った。その間に彼は確実に剣の腕を上げた。他の聖騎士には及ばないが。
彼は今、控室に居た。
ー『どうせ、聖騎士最強決定戦もキミが優勝することだろうよ』か。結局、あれってどういう意味だったんだろうか。まあ、フォールちゃんが手に入るなら何でもいいけどな。
「第3試合、ユーマ対ローの開始5分前です」
「あ、はい、どうも」
控え室に訪れた職員に軽く返し、ユーマは席を立った。
ー新参だからって無礼てる奴らに俺の実力、とくと見せつけてやるか。
剣を持ち、控え室を出る。そしてユーマは左右を見回し、ある少女を見つけてその方向へ駆け出す。
「ユーマ、準備は大丈夫?」
「もちろんだ。俺も早いところフォールちゃんを自分のモンにしたくてたまんないんだ」
「そ、そういうこと言われると恥ずかしいな、やっぱり…」
ーあぁ、ガチでフォールちゃんは天使だ…!
「30秒前!」
職員から声が掛かり、フォールティスの可愛さに浸っていたユーマは現実に戻される。
「んじゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、ユーマ」
微笑みかけるフォールティスを名残惜しそうに見つめながら、ユーマはスタンバイする。
「歩き出すまで5、4、3、2、1、0」
職員の合図で、アナウンスとタイミングが合うように俺は踏み出した。
*
ーローデンスの言っていたことが当たったと言うべきか、ローデンスが仕組んでたと言うべきかは分かんないが、どうしてこうなった…。
今は決勝戦直前。
ユーマが相手の前に立つと、相手は誰しも即座に降参を申し出た。ユーマが降参を受け入れ、不戦勝になった聖騎士の中には随分と嬉しそうにしている者もいた。
ーそんなにフォールちゃんが嫌なのか?ローデンスが仕組んでるにせよ、これはフォールちゃんに失礼だと思うんだが。
「決勝戦、ドルトメッサー・ロールルヌ対シンドウ・ユーマ」
魔力で動くスピーカーのようなものから放たれたアナウンスに、観客席からは歓声が上がった。
ユーマとドルトメッサーは互いに向かい合った。
「それでは、開始!」
ドルトメッサーは地面に剣を刺し、ユーマに話し始めた。
「そういえば、ユーマは何でここに来るまで全て不戦勝で済んだと思うか?」
「そりゃ、ローデンスに仕組まれてたからだろ?」
「まあ、根本的な話をすればそうなるが…。お前は今まで、領主の仕事を押し付けられてきたんだ」
「もしかして、普通ウェルモンド家の跡継ぎ決める時はこんな感じでやってんの?」
「いや、どこの領家も同じだ。跡継ぎが女しかいなかった時、他の貴族で本家の継承権を持たない男からの申し出がない場合はこうやって跡継ぎの男を決めるんだ」
「じゃあ、俺がローデンスの後のウェルモンド家の領主になるってことね」
「なんだ、随分受け入れるのが速いじゃないか。普通、跡継ぎ云々の話を知らずにこういったモノで最後まで残ってしまった者は皆、発狂したり自殺未遂を図ったりするのだが…」
微妙な顔をしているドルトメッサーに、ユーマは笑いながら答える。
「俺には、フォールちゃんがいるだけで十二分だ。フォールちゃんと一緒にいる為だったら領主だろうが何だろうがやってやんよ!」
そう答えたユーマに、ドルトメッサーは更に微妙な顔になった。
「自分の運命の人と一緒にいる為なら何だって、か…。参ったよ、ユーマ。俺は最初からリーリアと結婚したかったから決勝で降参するつもりだったし、そろそろ降参してもいいか?」
「ああ、サンキュー!ドルトメッサー。いや、ドルトメッサーは呼びにくいしこれからはメッサーって呼んでもいいか?」
「ユーマにはまたしても仮を作られてしまったからな。俺を聖騎士団長として敬わないことくらいは全然構わないさ」
二人はその場で固く握手を交わした。観客席からはさっき以上に大きな歓声が上がり、半分以上の試合が不戦勝で終えられているにも関わらず観客たちの多くは満足そうであった。