第13話 アスター
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ユーマの部屋の前に、水色の髪を七三分けにした髪型の1人の少年がいた。
装飾に金の使われた軽装のようなものを着用し、腰に聖剣を携えているその後ろ姿は、誰が見ても聖騎士だと分かる威厳を放っていた。
少年は、その部屋の扉を大きく3回ノックをした。
「おーい、誰かいるー?」
しかし、中から返事は返ってこない。少年は、首をかしげた。
「あーれ?もしかして寝ちゃったかな…」
少年は扉を開けて中に入り、魔力灯のスイッチを押した。すると、ベッドの上で2人の男女が重なっていた。
少年は何かと勘違いしたようで、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ぼ、僕はまだ未成年なんですけど!?16でソレを見ちゃうのは流石にマズいって!」
その声を聞いて、下にいた方の少年が自分の上に被さっていた少女を気遣うようにしてゆっくりと起き上がった。
「あ、何だ…。勘違いだったか」
「ん…。誰だ、お前?」
「僕?僕はアスター・オール・フォーン。ここの聖騎士だよ。16歳の僕よりも背だ高いけど、キミって何歳なの?」
「俺はシンドウ・ユーマ、14歳だ」
「14で僕よりも背が高いなんて…。それで、今日の新入り君ってキミで合ってるよね?」
「ああ、そうだが」
「キミに渡しておきたい物があるんだ」
そう言って、アスターは何かが入った麻袋をユーマに渡した。ユーマがその中身を確認すると、そこには笛のような物と水分の抜けた赤い物質が入っていた。
「これってあれか?遭難した時に助けを呼ぶ為の笛と非常食か?非常食にこんな水分の抜けきった肉は向いてないと思うんだが」
「いや、まぁそういう使い方もできるのかもしれないけど、違う!これは、ヒッポグリフを呼び寄せる笛と、ご褒美にあげる用の馬肉だよ」
「つまり、これを使えば野生のヒッポグリフも使役できるってことか?」
「けど、呼び出すには決まったメロディで吹かないとダメなんだよ。僕がお手本を見せてあげる」
そう言って、アスターは自分の腰のベルトに引っかけてあった笛を手に取り、それを吹いた。
そのメロディには聞き覚えがあり、ユーマはすぐに気づいた。
ーこれ、リコーダーで吹いた『威風堂々』の1、2小節目じゃん。俺でも簡単に吹けそうだな。
ユーマがそんなことを考えていると、部屋のベランダに1匹のヒッポグリフが現れた。
「コイツは僕の相棒、アクちゃん。人懐っこいからすぐに乗れるようになるよ。試しに頭でも撫でてみる?」
誘われるがままにユーマがヒッポグリフ、アクちゃんの頭を撫でてやると、アクちゃんは嬉しそうに唸った。
ー猫かよ。それにしても、羽が柔らかい。アルターがしっかりお世話してる証拠か。
「もしアクちゃんの助けが必要な時は僕に言って。基本遠くに行く用事が無い時はアクちゃんも暇だから。それか、僕に言わなくてもその笛を吹けば来てくれるよ。この笛は特注品で、僕とキミと団長しか持ってないから」
「へぇ」
ーということは、俺を屋敷に運ぶ時にドルトメッサーはアクちゃんを使ったのか。
不意にアルターは話題を変え、ユーマにこう質問した。
「ところで、キミは誰と雑魚寝してたんだい?」
「ああ、フォールちゃんというか、フォールティスちゃん。領主の義理の娘の…」
「あの1か月前に突然現れた娘ね。…ん?確かその娘は来週の『聖騎士団最強決定戦』の優勝者と結婚するんだよね?そんな娘と仲良くして領主様が何も言わないなんて…」
「領主…、ローデンスが言うには、俺の優勝は確定らしい」
「つまり、トーナメントで君が団長と決勝まで当たらないように仕組まれるってことね。僕は準決勝で団長と当たるようにされるかな。ま、僕は結婚なんて更々興味無いからけど、もしもトーナメントで当たった時は、互いに全力を尽くそう!」
「おう!」
そして、アスターは部屋を飛び出していった。
ーいい奴そうだな。来週、できれば戦わずに済めばいいが。
そんなことを思うユーマであった。