第12話 寝言
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ユーマがフォールティスをお姫様抱っこしてローデンスの部屋を出た直後、フォールティスはユーマの腕の中で目覚めた。
お姫様抱っこされていたことにはすぐに気づいたみたいで、顔を真っ赤にした。
「えっ!?わ、私、今どういう状況?」
「おはよう、フォールちゃん。フォールちゃんはこの少しの間だけ気絶してたんだよ」
「やっぱり、その呼ばれ方すると恥ずかしいな…」
「じゃあ、何て呼べばいい?フォーちゃん?フォールティス様?」
「…もうフォールちゃんでいいよ」
「そっか。じゃあ、これからもフォールちゃんって呼ぶね」
お姫様抱っこされていることなど忘れ去り、ただただ呼ばれ方に再び顔を赤らめるフォールティスは、ユーマの腕から降ろしてもらった。
「けど、私はまだキミのお嫁さんになるって決まったワケじゃないんだからね?」
「分かった。それと、俺はまだ名乗ってなかったな。俺はシンドウ・ユーマだ」
「ユーマ、ね。私のお婿さんになれるよう、頑張ってね」
「ああ、もちろんだ!」
微笑みかけたフォールティスに、サムズアップで応えるユーマ。2人は既に、互いのことを想っていた。
「あ、そうだ。ローデンスに剣の練習とかについて訊いとかないと」
フォールティスと別れた後、ユーマは再びローデンスの部屋に戻ったのだった。
*
一方その頃、ローデンスの部屋にて。ローデンスとフロ-レアはユーマとフォールティスについて話していた。
「フォールティス様、ユーマ様のことが好きみたいですね」
ローデンスはニヤリとした。
「フロール、キミも感じたのかね。彼女、女の子として扱われたこと自体が無い上に好きだなんて言われるから…。まあ、ユーマ君がフォールティスのことを好きだと屋敷中に広めれば彼が次期領主で確定なのだよ」
「やはり、ドルトメッサー様は修道女のリーリア様の為に決勝まで勝ち残ってそこで不戦勝するのでしょうか」
「逆に、それ以外にあり得るとは思えないのだよ。彼はあの協会に週2、3回は行っているからね」
ローデンスはニヤリとしている口角を更に上げた。
「それで、どうしてユーマ様に次期領首になってしまうことを言わなかったのですか?」
「彼なら、フォールティスを想う気持ちを原動力にどこまでも仕事を果たしてくれるだろうからね。まあ、私も早々にこの世を退場する気はないが」
「おや、ユーマ様が戻ってくるようです。この話題は止めましょうか」
*
夕方。その屋敷の中をユーマは汗を流しながら歩いていた。
ー剣術って剣道に似てると思ったが、そうでもなかったな…。
そんなことを考えながらユーマが自室に戻ると、ベッドの上に誰かが転がっていた。
フォールティスだ。
ユーマは一瞬ドキッとした。夕日に照らされたその寝顔が、ユーマの鼓動を加速させた。
「…」
フォールティスが何か言っているのを耳にしたユーマは、フォールティスの目の前まで行った。
「好き…」
ーん?今、「好き」って言ったか?
ユーマは自信の耳を疑い、もう一度耳を澄ませてフォールティスの寝言を聞いた。
「…ん…、ユー、マ、好き…」
それを耳にしたユーマは、昇天しかけた。
正気に戻ったユーマは、フォールティスの横に寝転がり、その横顔を見つめた。
ー確か前世、冠那の横顔をこうやって見た時が、似たシチュエーションがあったような。
ただ、ユーマは首を横に振って冠那のことを忘れようとした。
ーあの娘は大天使様に転生したんだ。もう俺の手が届くところにはいない。
ーそう、手の届くところにはいない。
ーそして、手の届くところにフォールちゃんがいる。
ユーマは、自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
ーこの娘は冠那が転生した大天使様、コロヌ・アンジェルス様の使いじゃないのか。思えば、ローデンスもこの娘は数千年前から自分たちの義理の娘みたいなこと言ってたし。
ーいや、使いじゃなくて普通に天使か。
その横顔を見つめながら、ユーマは思った。
「ユーマ…、ねぇ…」
フォールティスは寝相が悪く(?)、寝返りを打つようにしてユーマの上に被さってしまった。
ーまあ、このままでいいか。
そのままユーマも寝てしまい、部屋を訪ねてきた客人に見られてしまうのであった。