第11話 フォールちゃん
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フォールティスの膝枕が終わった後、ユーマはすぐさまローデンスの部屋に向かい、今度はノック無しにドアを勢いよく開けた。
「頼もー!」
「おや。随分と元気ではないか、ユーマ君」
扉の先では、ローデンスがまた書類を書いていた。
フローレアに警戒態勢を取られたユーマは、首を横に振ってみせて彼女に落ち着いてもらい、ローデンスの眼前に立った。
「俺に、娘さんをください!」
「あれ?ユーマ君、どこへ消えたのだよ」
ユーマは全力の土下座をかました結果、ローデンスには作業机に隠れて見えなくなってしまった。
「それはできないのだよ。来週、誰かに嫁ぐことが決まっているのでね」
「話は聞かせてもらったよ。『聖騎士団最強決定戦』とやらで勝ちゃいいんだろ?」
「それで、キミはどうするのだよ?」
「無論、聖騎士になる!『神聖力』が高いし、すぐになれるだろ?」
「しかし、うちの聖騎士たちは皆、生半可じゃないのだよ。ドルトメッサー君も出るのだ、キミの敗北は確定も同然なのだよ」
「んなもん、やってみなきゃ分かんねぇからな。俺は誰が相手だろうと、必ずフォールちゃんをゲットしてやる!」
ローデンスはあたかも納得したかのような顔をし、1枚の紙を差し出してきた。
「そこに名前、年齢、血液型、志望動機、その他通達事項を書いてくれなのだよ。正装や剣はこちらで用意するのだよ」
「なぁローデンス、聖騎士って全員が聖剣を使えるわけじゃないのか?」
ユーマはその紙を慣れない言葉で書きながら訊いた。
「聖剣を使う許可が下りるのは一定以上の功績を修めた者、或いは『剣聖神話』の所持者だけなのだよ」
「一定以上の功績って例えば何だ?」
「そうだな…、<72柱>の悪魔を1匹でも倒すことや、<七つの大罪>の悪魔に傷を負わせることなのだよ」
「そ、そうか…」
ー俺が悪魔を倒すなんて、よっぽど先の話だろうな。スキルの獲得方法も碌に知らない俺には無理かもしれないが。
紙を書き終え、ローデンスに渡したユーマは、さっきから一言も喋らないフォールティスの方を見た。彼女は、顔を真っ赤にして、目をグルグルさせながら湯気を上げていた。
「どうした、フォールちゃん?体調でも悪いのか?」
「そ、それだよ、それ。フォールちゃんって呼ばれたから、恥ずかしくなっちゃって…」
「照れてるのか、フォールちゃん。やっぱり俺はキミが好きだ!」
「あ、あわわわわわわわ…」
そのまま、フォールティスは気絶してしまった。
「ここまで我らの娘を熱愛した男は今までいなかったのだよ。過去の記録にも、彼女が目覚めてからのこの1か月間も」
「ま、俺って勘違いしやすい男だからな。前世の彼女に似てた上、優しくされたらもうメロメロよ」
「どうせ、聖騎士最強決定戦もキミが優勝することだろうよ」
「は?」
「私の妹の婿を決める時もそうだったのだよ。一番やる気のある者が優勝したのだよ」
「ローデンスって妹いたんだな」
「我が家の領地は広すぎてね、父と母は領地全域をしっかり管理する為に5人は産めと祖父から散々言われたらしい。私は長男だからこの屋敷で領地の主な場所を管理しているが他の弟や妹は皆、この領地のあちこちに散らばってそれぞれに分担された範囲を統治しているのだよ」
「それで、俺が優勝するってどういうことだよ」
「それはまあ、自分で考えるのだよ。もしそれが面倒なら優勝しないことなのだよ」
ユーマは、ローデンスの言うことがよく分からず、考え込んだ。
そして、とある答えに辿りついた。
ーもしかして、俺が知らないだけでフォールちゃんは面倒な性格なのか!?
だが、男の覚悟はそれ如きでは揺らがない。
ーそれでも、俺は彼女を愛し抜いてみせる
ユーマはローデンスにもフローレアにも何も言わず、フォールティスをお姫様抱っこしてその部屋から出ていった。