第七話
僕は思う…この歩んで来た人生をどうやって他人に伝えたら良いのだろうか!?
例えば、生まれて始めてレモンを食べる人にどうやってレモンの味を伝えれば良いのだろうか!?「酸っぱい」の一言では言い表せない…
それと同じように僕の人生も他人には伝えきれない!
僕の内面に見え隠れする狂気は僕自身にも理解が出来ないし、感情として表にはだせない…
僕は生まれてから今まで不機嫌だ!心から笑った事は一度もない…
誰もが幻想を抱く「愛」と言う感情は本物なのだろうか!?
僕には人を愛して行く自信は無いが、この僕の存在は紛れも無い母親と父親の愛の形なのだ…
兄の家庭にも子供が誕生する様な事があれば、僕は更に迷走を続ける事になるだろう…
来年、僕は就職をするだろう…その環境の変化の中で幾つもの幸せな家庭を目の当たりにする事になる…他人の幸福論に僕の頭は着いて行けるのだろうか!?
最近、僕は思う…ニュースで見る凶悪事件…無差別に他人を傷付ける様な自己中心的な事件を犯す愚かな人間…
そんな人間の思考回路に僕は近付いているのだろう…
母親を尊敬し…兄を尊敬し…記憶には無い父親を尊敬し…「同居人」を受け入れて生きて行く事が幸せへの近道なのだろうか!?
どう考えても僕には存在価値がない…この世の中で無数に増殖を繰り返す群衆の中の一人の人間だ…僕自身が解っている答えは死に急ぐ只の悲しい男だと言う事だ。